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とある男の記録 記録2

作者: 紅夢

現在投稿用に書いている短編の下敷きにある世界設定を広げていくための短編です。


前回の短編の続きです。

 あれは雪が降り始めた頃だっただろうか。まだそこまで積もってはいなかったが、冷え込み始めていたことは覚えている。

 

 何より息が白くなっていたし、向かいの家の子供たちが窓に指で落書きなんかをして、窓の向こう側にいた私に笑いかけていた気がする。


 確か、その日は休日だった気がする。いや、休日だった。朝起きて、レンジで牛乳を温める合間に新聞を取りに行く。その時子供たちが目に入ったのだ。


 それからトースターでパンを焼きながらメールチェックをする。


 そうだ、思い出した。その時テレビを付けたんだ。ちょうどそこに朝のニュースがやっていて、奇妙なことに気づいたんだ。


 世界保健機構の緊急会見だったか、ともかく年を取った人間があのマークがたくさん並んでる壁を背景に何かを喋っていた。


 別に緊急会見なんてものに興味はなかったし、その手も物は年に数回はある。そのときもそこまで深刻には考えていなかったように思える。


 ただ、恐らく、そのニュースを見ていた大半――――半分くらいだろうか――――の人間は変な違和感を感じたと思う。


 そのニュースは合衆国から発信されていて、世界に向けて配信されていた。同時翻訳でだ。


 そのあと知ったことだが、主要五ヶ国語に加えて、その他四つくらいの言語に同時翻訳されていたらしい。


 世界保健機構がいくら世界的に影響力のある組織だとしても、それはいくら何でもやりすぎではないかって話だ。


 それに、余談だが、当時あの組織の信用はお世辞にも高いとは言えなかった。


 まあ、そんな話はさておくとして。


 ともかく、そんな違和感に気づいた私は珍しくパソコンをいじる手を止めてテレビに目を向けた。


 内容の詳細は思い出せないが、ただ一つ分かりやすいことはこうだ。


『世界中で生活している人間の“遺伝子的な強さ”を調べるために国連加盟国を中心に段階的に検査キットを配布する。』


 確か、そんな内容だった筈だ。


 考えるまでもなく、これは奇妙な話だった。


 あの組織は警鐘やアドバイスこそするものの、“こうしろ”という類の強制はしない傾向にある。いや、あったはずだ。もうかなり前の話だから曖昧だが。


 だからこそ、当時は義務としてその話を進めているということに変な感覚。こう、言いようのない気持ち悪さがあった。


 私はこの手の話に付きまとう、SF小説から丸々持ってきたような陰謀論を信じない質だと自負しているが、この時ばかりは公園にいる、あの名も知らない老人が言いふらしていた陰謀論を二割くらい信じていた。


 要はそのくらいには気持ちの悪い話だったのだ。あの機構のお偉いさんのよそよそしい態度も含めて。


 だが、それ以上でもそれ以下でもなかった。こういったことを含めて、我々には遠く手の届かないところの話だったのだと今ならはっきりわかる。


 例の検査キットはすぐに届いた。ニュースから一週間ぐらい後だっただろうか。その辺はよく覚えていない。


 この検査キットはこれこれこういう目的の為の、こういうものです。とか言う文言と綿棒を伸ばしたものみたいなのが入っていた。


 近所の人間も、職場の人間も、若い連中を中心にこの検査に否定的な奴は結構いたと思う。SNSだか何だかで、盛んに流れてくる妙に信憑性のある話を皆が一様に信じて言いふらすのだ。


 それはそれで奇妙な、というか不気味な流れではあったが。


 だが、それも最初だけの話だった。どんなに健全な若者でも国の掲げる“義務”という言葉の前には立ち向かう勇気がなかったらしい。


 なにより、SNSで流れる情報を否定する勢力も、正確性を謳うリサーチ屋も今回はどうにも手の付けようがなかったらしい。


 なにせ本当の情報が一切なかったのだから。


 取り合えず、私が初めて違和感を実感した話はこんな感じだろうか。私が“検査キット”をどうしたかって?


 もちろん、国に提出したさ。契約中の保険会社を通じてね。


 これ以前のことは曖昧ではっきりしていない。


 そう言えば、このほんの些細な騒動のすぐ後にあの大きな出来事があったな。


 次は、その話について話していこうか。




読了ありがとうございます。


気づく方は気づくかもしれませんが、この短編はとあるscpのtaleを大いに参考にしています。


ですが、根本的なところでは大きく違うのでパクリじゃねーか!とはならない筈です。多分。


気になった方はtaleの方も読んでみてください。

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