死んでなんか転生した。《下》
ヘドロの嫌な異臭を放つ中俺はそこにいた。
ハロー皆さん…つい先ほどまで俺の前世を語ってた毒殺された男です。
なんか、死んだらなんか異臭を放っていてここが地獄かーと思ったら全然地獄じゃあ入りませんでした。
俺が目を覚ますとそこはスラム街で中世を感じさせる場所だった。
目が覚めた俺は身体に違和感を感じ、鏡になる様な物を探すが、無いので、近くにあった水溜りを見る事にした。
俺は水溜りで自身の顔が映る。
「ん?んー?!……わ、若返ってる!?」
俺は若返っていた…それも白髪の七歳の子供ほどまで若返ってしまったのだ。
俺はその後、第二の人生を送る為にスラム街の奥へと消えていた。
それから五年の月日が流れ、俺は十二歳になった。
俺は転生してから少しこの世界について調べながらスラム街の片隅に生きていた。
腐った木の板や使え無くなった工具を集め、それでボロボロの家を建て、そこを拠点にしながら生きていた。
辛いかと問われると辛い…実際に俺は十歳の時に自殺しようとしたが身体が言う事を聞いてくれずにいつの間にか拠点の中で寝ていた。
この身体はとてつも無く生への執着心が強い身体の様だった。
これは恐らくだが、俺の身体は違う誰かの物のだろう。
意味が分からない?…あーまぁそうだな。
簡潔に言うと俺は転生者では無く、憑依という物だろ。
この身体は俺が憑依する前のスラム街の子供の物でその少年がスラム街の環境に慣れずに命を落としてしまい、その後俺の魂が乗り移ったという事だ。
俺は自身が死にたいと思っていても身体は別物で死ぬ事が出来ないのは、未だ死ぬ前のこの身体の持ち主が死にたく無いという強い信念が残っており、俺はそれに抗えないのだろう。
俺はそれを頭で理解すると気分が悪くなり嘔吐した。
自身が知らずに勝手に乗り移ってしまい、無理矢理奪った様な身体を俺は気づかずに三年も自身の物だと言わんばかりに身体を使い生きていた事に申し訳無さと自身が殺したのでは無いのかと考えてしまい、気分が悪くなり嘔吐してしまった。
俺はその後、一日中眠る事も食べる事も出来なかったが、俺が憑依してしまった身体の持ち主の為にも生きようと思い、必死に腐りかけの芋を食べ、今日まで生きてきた。
これが生きていく中でわかった事の一つだった。
そして、現在俺はこの世界についても様々な事がわかった。
それはこの世界は『バルバトス戦記』という、ゲームの世界だという事に気が付いた。
まず、何故この世界がゲームだと、気付いたのかと言われると、俺が食料と使える道具などを探している途中にこの国の名前が前世でやっていたゲームの名前と似ていたからである。
最初はなんと無く似ているだけだと、頭で処理していたがこの国をある程度散策中にこの国の城を見てさらに似ている事に驚いた。
そして、極め付きがこの国の二年に一度のパレードで見かけた王族の顔と旗を見て確信した。
この世界はゲームの世界だと、俺は理解した。
そして、最悪の事態もわかってしまったのだ。
俺が転生改め憑依してしまったこの国は主人公達を苦しめる大帝国だという事と俺は原作開始日時しか、知らないという事だ。
俺はこれからどうするのか、そして、主人公達と会ってしまったらどうしようかと考えながら今日もボロ屋で眠るのだった。