第2話 忙しいクリスマス
今日も残業か。イルミネーションを見下ろしながら、私、草間洋子はパソコンとお見合いをしていた。
「お前なんか嫌いなんだよ」
誰も入って来なくてよかった。聞かれてると誤解されてしまう。人間関係は良い。しかし、人数が少なく、やはりオーバーはしてしまう。
人件費にさく費用がないため、雇えないのだ。一人一人の給料は高い。しかし、それを下げることはしない。家族を支えるために必要だと社長が知っているからだ。
今日はクリスマスという悪習のせいで、ほとんどの社員が有給を取っていた。私は家にいてもする事がないし、どうせ彼氏もいない。そんな中間管理職。もうアラサーが近づいてきていた。
年月との鬼ごっこは、鬼が私に触れ、私は鬼になった。そう。仕事の鬼である。静寂の世界に私のパソコンの音だけが鳴り響く。
気付くともう夜の10時過ぎ。流石に帰る事にした。夜の寒さとうるさいイルミネーションが私の心を冷やしていく。
「冷蔵庫かよ。私の心を冷凍すんな」
独り言が出てしまった。最近話したのは誰だろう。結局、社長の頑張ってね。が最後だ。
彼氏作りたい。欲しい。必要かわからないけど、温もりを。
私はコンビニに入り、温かい飲みものを探した。生姜湯があったので、それにした。
アパートに着いた。時計を見るともう11時だ。時間が無すぎて散らかった部屋を見て、だから独身なんだよと思う。今日はレトルトの麻婆豆腐を作る事にした。
スパイスの辛さと生姜湯が私の心を温める。
「お疲れ様。きっと誰かが君の努力を知ってくれる。私は知ってるから。私は生姜湯の妖精だよ」
そんなものいるのか?なかなか信じられる事ではなかったが、1人では寂しいので信じる事にした。
「少しは温まったかなぁ?私は人の心を温める仕事をしてるの。お仕事お疲れ様。ゆっくりおやすみなさい」
そんな声を最後に声が聞こえなくなった。食べてた麻婆豆腐が少ししょっぱくなっていた。