表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

05 : 自我を持った仮想世界

メガロシティ - ギルドオフィス


あろうことか、序盤のクエストでラスボスと遭遇してしまったリュウナは

いち早く報告するためにギルドへと戻ってきていた。

リリスは急用が入ってログアウトしてしまったため、今は彼女1人だ。


「・・・・・・と、いうことがあったのよ」


「事実なら、ヤバイどころの話じゃねぇな。また新たなバグか何かか?」


ちょうどアレンもログインしてきていたので、報告がてら話を聞いてもらっている。

普段あまり神妙な顔はしない彼だが、今度ばかりはそうもいかないようで

先ほどから何度も唸っていた。

その隣には、同じく難しそうな表情をしている受付嬢レイナの姿もある。


「お二人は何度も戦っている相手ですし、当事者のリュウナさんに関しては

まず見間違えるなんてことはないですよね」


「あの姿と、動かずともわかる威圧感・・・・・・間違いなく星王アストラね」


「だが、状況的にありえないことが多すぎる。レイナのように、街中ぐらいなら

ある程度自由に移動できるキャラクターならともかく、アイツはラスボスだろ?

決まったクエストの決まった場所にしかいないヤツが出てくるのは・・・・・・」


「彼自身に何らかの不具合が起こったか。それとも別の原因か・・・・・・」


ストーリーに関するクエストは一度クリアした後もまた挑戦することができ、

現にリュウナとアレンは何度もラスボスと戦っている。

そこに行かなければ戦うことは出来ないし、出会うこともない。




――――――――――なのに、彼は姿を現した。

それも、ストーリーとは一切関係のないクエストの中に。




気がかりなことはもう1つある。

あの場でアストラが発した、意味ありげな一言だ。


「創られた結末を認めない、ってどういうことなんだろう・・・・・・」


ゲームは誰かに創られたものであって、

そこで展開されるストーリーもまた、創られたものだ。

しかし、あの場に現れたラスボスはそれを認めないと言っていた。


「ラスボスなんだから、最後は絶対に倒されちまうしなぁ」


「ですが、それがゲームのキャラクターとして存在している彼の役目です。

私だって、ギルドの受付嬢という役目あってこそ、ここにいるのですから」


「すると・・・・・・ラスボスとして倒される役割を、彼自身が拒否したってこと?」


「実際に、星王アストラは行動を起こしています。どうすれば自分が倒されない結末に

することが出来るか探っている・・・・・・と考えるのが妥当かもしれません」


「ボスが耐性持ちになったとか騒がれてたのは、その一環ってワケか」


一見すると関連性がないように思っていたメッセージボードの書き込みも、

こうして改めて整理すると、1つの目的に繋がっていることがわかる。




―――――――冒険者をラスボスまでたどり着かせないこと。




リュウナやアレンを含む熟練冒険者は、たどり着くどころか何度か倒しているのだが、

そういった者達への対策も、今後してくる可能性はある。


「ゲームそのものがプレイヤーに牙を剥いてきた、ってことか・・・・・・」


昨今のこういったゲームに登場するキャラクターは、

高度なAI(人工知能)技術で動いている。

村人の1人からボスキャラに至るまで全てだ。

そして、それらの技術は決して完璧なものではない。

バグは起こるし不具合だってもちろん発生する。

しかし、今回リュウナとリリスが目の当たりにしたラスボスはどうだろう。




まるで人が実際に動かしているような、自我に似たものを感じた。




AIでは説明がつかないような何かを、確かに感じ取れたのだ。


「次にまた同じような出会い方をしたら、話を聞いてみたいけれどね」


「今頃また、最後のクエストで鎮座してるんじゃねぇか?

お前が見たアイツと同一人物なら、話ぐらい出来るかもしれないぞ」


「そうする手もアリ、か・・・・・・」


アレンは直接ストーリークエストへ出向いてみてはどうかと提案する。

決まった敵と出会うなら最適だし、あちらの出方を見るより手っ取り早い。

何よりも、クエスト中に現れた星王アストラと、ストーリークエストの最後で

冒険者を待ち構えている星王アストラが同一人物であるかを確認する必要もある。



「―――――――――最終章、星を粛清する者」



クエストボードに表示された、プラネット・ワールドにおける

ストーリークエスト最終章の名称。

表示をじっと見つめていたリュウナだが、座っていた席から勢いよく立ち上がると、


「せっかくだし、行ってみるよ!」


そう言うと同時にクエスト受注の操作を完了した。

甲高い音が短く鳴った後、シティ中央を示す矢印ガイドが表示される。


「1人で大丈夫なのか? なんなら俺も手伝うぞ」


「平気平気! 今更遅れは取らないよ」


「フラグっぽい発言になってるぞ」


「本当に危なくなったらパッと逃げるから、心配いらないって!」


同行を申し出たアレンだが、リュウナはそれをやんわりと断る。

実際に相対した自分だけで行ったほうが、

話が進めやすいと思ったからなのだろう。

そして何よりも、


「アレンだって、今日は忙しい日だったのに来てくれたんでしょう?

そこまで付き合わせちゃさすがに悪いもの」


「ははは! やっぱバレてたか。気ィ使ってくれてありがとな」


快活に笑ったアレンもまた立ち上がると、拳を突き出した。

リュウナはそれに応えるように、同じように突き合わせる。

その様子をレイナが笑顔で見守っていた。


「・・・・・・さて! 俺はそろそろ帰るとするか。じゃあまたな」


「じゃあね、アレン! また明日!」


「お疲れ様でした、アレンさん」


グッと親指を立てる仕草をすると、そのまま彼はログアウトしていく。

友人を見送ったリュウナは改めて矢印の指す方向。

街中央のワープポイントへ向き直ると、



「それじゃ、ラスボス討伐に行ってきます!」



剣士の服をバサッと翻し(ひるがえ)、出発を受付嬢へと告げた。

それに対して彼女も改めて姿勢を正すと、



「冒険者に、星の光の導きがありますように」



ストーリークエストへ向かう前には定番となっている台詞を口にする。

リュウナは頷きで応えると、ギルドを出てワープポイントへ。


ラスボス、星王アストラが待つ場所。

星誕の神殿最深部へと向かっていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ