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14 : 襲い来る刺客達

 翌日 - 緋宮 杏子(あかみやきょうこ)の自宅



 杏子とリュウナが、テーブルを挟んで何やら話し合っている。

 心なしか、その表情は神妙なものであった。


「とりあえず、見つけられるだけの石碑は全て破壊したけれど、

 リュウナがゲーム内に戻る感じはまだ見られないね……」


「相変わらず引っ張られる感覚は変わらなかったけど、

 やっぱり決定的な何かが必要なのかな?」


 フレンド達と協力して行っていた石碑探しは終了したようで、

 各地からも同じものが残っているという連絡はない。

 恐らくこれで全て破壊したと思われるのだが、彼女が現実世界に

 出たままになっている現状は変わらずであった。



「だとすると……倒さないと、終わらないんだろうね」



 顎に手を当てて唸りつつ、杏子が言った。

 全ての発端ともいえるラスボス、星王(せいおう)アストラ。

 ゲーム内各地に点在していた石碑は原因の1つに過ぎず、

 それらの大本となっている彼を倒さない限り駄目なのだろう。


 GMから付与された恩恵によって、再度挑んでもキャラクターが消えるという

 ことにはならないとは思うのだが、別の手を隠してないとも言い切れない。


「私達が色々とやってることは向こうも多分知ってるだろうし、

 そろそろあっちからまた仕掛けてきそうな気がする」


「だとすれば、こっちから乗り込んだほうが意表はつけるかも?」


「虎穴に入らずんば……か」


 どちらにせよ最終的には倒さなければならない相手だ。

 あちらの準備が整う前に乗り込んでしまったほうがいい。

 これで話は決まったといわんばかりに立ち上がった杏子は、VRデバイスを手に取った。


「今度こそ、決着をつけにいこう! 貴方を元に戻すためにもね」


「私も外から見守ってるから……負けないでね、リュウナ」


「もちろん! もう一度、エンディングを見にいってくるよ」


 2人は顔を見合わせて頷き合うと、一時別れの言葉を交わす。

 ほどなくして1人の冒険者は、再びゲーム世界へ赴くのであった。




 ****




 プラネット・ワールド内 - メガロシティ中央



 リュウナがログインすると、既にアレンとリリスも来ていたようで

 遠くで手を振ってこちらに呼びかけている。


「よっ! その様子だと、いよいよ乗り込むって感じか」


「うん、それがいいと思う。何か仕掛けてくる前にね」


「てっきり、破壊に怒った本人が出てくると思ってたんだけどねー」


「ゲームとしちゃありがちな流れだが……アイツはそれから逸脱してるしな。

 正直、次の一手があるとしても何をしてくるか想像がつかん」


 メッセージボードでも度々騒がれていたゲーム内各地の異常だが、

 それも石碑の破壊と共にめっきり減っており、関連性を匂わせている。

 冒険者をラスボスまでたどり着かせないという彼の企みは、

 一先ず阻止出来ているといえるだろう。



 ―――――あとは、元凶を叩くのみだ。



 現在は閉鎖状態にあるラスボスへのクエストだが、

 先日の話の通り、GMに連絡すれば開放させることが出来る。

 今度は1人で行くのではなく、2人が一緒だ。

 前回のような失態は絶対にしない。

 3人とも心は決まったのか、リュウナはさっそくGMに連絡を取ろうとした。


 その時――――――――――。





 ドゴォォォーーーーンッ!!!!





 ―――――――突然、街に物凄い轟音が鳴り響いた。

 驚いて周囲を見回すと、あちこちで爆炎があがっているのが見える。

 街中にいるプレイヤー達も一斉にざわつき始め、

 一体何が起こったのかと思っていると、

 目に飛び込んできた光景に驚かざるを得なかった。



「モンスターが……どうして街中に!?」



 普通はゲームの仕様上、街とフィールドは完全に分かれており

 モンスターが入ってくることは出来ないようになっている。

 だが今まさに目の前には、入ってくるはずのないモンスター達が

 街中で暴れている光景が広がっていた。


「まさか、アイツが仕掛けてきたってのか!」


 来ると思っていた、星王(せいおう)アストラによる次の一手。

 何もないとはもちろん思っていなかったが、まさかこれほど早いとは。

 武器を取り出した3人は、即座に戦闘体制を取った。

 街にいるのは冒険者だけではない。

 戦う術を持たないゲームキャラクターも大勢いるのだ。

 彼ら、彼女らに被害が及ぶのだけは避けなければならない。


「ギルドオフィスも危ないよ! 受付嬢の人達が……!」


 リリスの慌てたような声を受けて、リュウナとアレンは即座に頷くと

 近くの建物目掛けて走り出そうとした。すると次の瞬間、




『プラネット・ワールド全域において、想定外のバグが発生致しました。

 プレイヤーデータへ影響が及ぶ可能性があるため、

 速やかなログアウトをお願い致します。繰り返します―――――』




 ゲーム内アナウンスが鳴り響き、プレイヤー全員へのログアウト勧告が伝えられる。

 本来ならば素直にログアウトするべきなのかもしれないが、




「ゲーマーがゲームから逃げて、どこで戦うんだっつーの!」


「私達の遊び場を邪魔するモンスターなんて、蹴散らしちゃうんだから!」


「どうせ例のクラッカーの仕業なんでしょう? ならとことん抵抗するまで!」




 ログアウトするどころか、冒険者達の士気は高まりを見せており、

 その心意気は目の前のモンスター集団を倒すことに向けられていた。

 正直、あまり推奨される行動ではないのかもしれないが、

 それでも今この場では彼ら彼女らが頼もしく思える。

 皆このゲームを。自分達がいる場所を守るために戦おうとしているのだ。


「全く……ゲーマーってヤツは……」


 その光景を見たアレンが、呆れたように笑う。

 きっと内心では嬉しく思っているに違いない。

 つい今しがた3人が突入しようとしていたギルドオフィスにも

 既に数人の冒険者が駆け付け、キャラクター達を守りに入っていた。

 ここは皆に任せておいても大丈夫だろう。

 そう思ったリュウナが改めてGMへ連絡を入れようとすると、




「―――――皆さん、ご無事ですか!?」




 慌てたような声と共に、3人のすぐ目の前にGMがログインしてきた。

 いつもは冷静な彼の声を聞いて、少しだけ驚いてしまう。

 すぐに全員無事なのを確認してホッとしたのか、すぐさま端末を取り出すと

 物凄い速さでそれらを操作。直後に電子音が辺りへ鳴り響く。



「クエストへの道を開放しました。もはや一刻の猶予もありません。

 私はデータの修復と、プレイヤーの皆さんへの指示をしますので―――――」


「ラスボス討伐は任せました、ってことね?」


「――――――よろしく、お願いします」



 操作が終わると、目の前にワープポイントが展開。

 恐らくこれが最終クエストへ繋がっているのだろう。

 深々と一礼をしたGMに対して3人は了承の返事をする。



「それじゃあ……行ってきます!」


「エンドクレジットに、俺らの名前つけ足しといてくれよ!」


「GMさん、ここは任せたよ!」



 それぞれの言葉を残して、一同はワープポイントへと消えていく。

 すぐさま白い光に包まれると、跡形もなく消え去った。

 3人を見送るGMの男性キャラクターはそっと目を瞑ると、




「……冒険者に、星の光の導きがありますように」




 静かにそう言った後、自らの仕事をするため街へと繰り出していく。

 それからしばらくの間、街には冒険者とモンスターの戦いの音が響き続け、

 これから始まる最後の戦いの様相を、匂わせるのであった。

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