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12 : 幕間 - 冒険者の休息

 少し前 - 緋宮 杏子(あかみやきょうこ)の私室



 相変わらずモニター越しにゲームの様子を見ていたリュウナだが、

 3人が手掛かりを発見したのを知り、少し嬉しそうな表情をしている。

 ちょうど画面の向こうでは、妙な力を発していた石碑を見つけ、

 今まさに破壊しようとしているところだ。


「あの時のクエスト内でも、あれを設置しようとしていたのかな……」


 もしそうだったとすれば、止めに入ることができたのは幸いだ。

 他に幾つあるかわからないものを増やされても困る。

 当面の目標としては、各地にもあると思われる石碑を、

 破壊して回るというものになるだろう。


 気の長い作業だと思うと同時に、星王(せいおう)アストラが大規模な行動に

 出る前になんとかできるだろうか? という不安も入り混じる。

 そうこうしているうちに、画面の向こうで石碑が粉々に砕け散った。


 するとその時―――――――。



「――――――っ!」



 石碑が破壊されたと同時に、彼女の身体を妙な感覚が突き抜け、

 思わず声をあげそうになってしまう。


(何……? 今の感覚は……)


 それはまるで、ここには無い何かに引っ張られるような感覚だった。

 椅子から立ち上がって周囲を見回してみるが、特に何があるわけでもない。

 幸いなことにすぐその感覚は収まったが、若干乱れた呼吸はまだ落ち着かない。


 リュウナは改めて画面に目を移すと、石碑があったであろう場所を見る。

 3人が睨んでいた通り、あの石碑が鍵を握っていることは明らかだろう。

 とりあえず、つい今しがた起こったことを伝えなくては。と考えていると、



 ピーーーーーーーーーッ!



 部屋の中にVRデバイスの音が響き渡り、リュウナがびくっと肩を震わせる。

 もうちょっと周囲が驚かない音にはならないものだろうか。

 などと思っていると、横になっていた杏子が起き上がってくる。

 どうやらあの後、すぐにログアウトしてきたようだ。


「ただいま、リュウナ」


「おかえり、杏子。色々とお疲れ様」


 お互いの名前を呼んだ2人は、笑顔で挨拶を交わす。

 様子をモニターしていたのは恐らく知っているだろうから、

 リュウナは先ほど自分に起こったことを含めて報告することにした。

 話を聞かされた杏子は、合点がいったという感じで大きく頷く。


「引っ張られるような感覚かぁ……。アレを破壊することで、

 リュウナの存在がゲーム側へ戻されようとしているのかも」


「物理的に、って感じじゃなかったからね。

 それこそ別の世界に行ってしまいそうな感覚に近かったよ」


「戻ったなら戻ったでいいんだけど、その場合どうなるんだろう?

 メインキャラクターのリストに戻ってくるのかな」


「バトル漫画みたいに私と杏子が融合して、

 強さが2倍とかになったらいいのになー」


「それはさすがに夢見すぎだと思うけど……」


 記憶などについてはどっちが優先されるのか? なども気にはなるが

 その時になればすべてがわかるだろうということで、

 あまり深くは突っ込まないことにした。

 まずは、せっかく見つけた手掛かりを全て潰していくのが先決だ。


 しかし今日はもうログアウトしてしまったし、既に夜も遅い。

 そもそも明日は外出の取材だったはずだ。仕事に響くとマズイだろう。


「よし、今日はそろそろ寝よう!」


 そう言って改めてベッドに布団を敷こうとするが、何かに気付いて手を止める。

 いつもは自分1人だが、今に限ってはそうではない。

 同居人―――――といっていいのかは謎だが、リュウナもいるのだ。

 そもそも、元はゲームキャラクターである彼女に現実での寝るという

 概念が必要なのはわからないが、


「……一緒に寝る?」


 と尋ねると、彼女はすぐに頷いてみせる。

 そのあまりに素直な反応を見て、杏子は少しだけ可笑しくなった。

 ゲームの住人とはいえ、根本的には人間と変わらないのかもしれない。



 もしかすると、(アストラ)もそうであったからこそ

 まるで人間であるかのような行動に出ようとしたのだろうか?



 そんなことを考えつつ布団に入ると、予備の寝間着に着替えたリュウナも

 のそのそと布団に潜り込んできた。

 いつもの剣士服姿とは打って変わり、こうして見ると1人の女性と遜色ない。

 銀色の髪は、差し込む月明かりに照らされてとても綺麗に見えた。


「我ながら、会心の出来のキャラクターだと思う」


「ふふっ、何それ」


「褒めてはいるつもりなんだけどなぁ……。

 って、これだと構図的に自画自賛か」


 2人は布団の中で向かい合いながら笑いあった。

 目の前にいるのは自分なのか。それとも他人なのか。

 こんな経験をするのは、後にも先にも自分だけかもしれない。


 いや――――もう少し未来になれば、実現するだろうか?


 眠りにつきながら再び考えを巡らせていると、



「……すー……すー……」



 いつの間にか、向かいにいる彼女は静かに寝息をたて始めていた。

 やはり元は自分だということか、相変わらず寝付きが早い。

 先ほどよりも身を寄せた杏子は、その顔にそっと手をあてる。


()()のことは、()が守らないとね……」


 リュウナというキャラクターは他人などではない。紛れもなく自分自身だ。

 こうして現実世界で一緒にいる時間はまだ僅かだが、それだけはわかる。

 ゲームから弾き出されてしまった以上、

 あちらの世界で動けるのはプレイヤーである自分だけなのだ。



「……おやすみなさい、冒険者リュウナ。良い夢を」



 人間である自分と同じく、夢が見れることを願って

 2人の冒険者は、静かな眠りへとついたのであった。

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