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11 : 不可解な置き土産

 メガロシティ - ギルドオフィス



 超越の水晶石(エクステンドストーン)の封印を解くための試練をクリアしたリュウナは、

 アレンとリリスと共に、街へと戻ってきていた。

 無事に終わったことを知った受付嬢のレイナも、安堵の表情を浮かべている。


「リュウナさんの影、ですか……。いったいどれほど強いのか、

 想像しただけでも怖くなっちゃいますね」


「ある意味自分を超えた、みたいなモンだしなぁ」


超越の水晶石(エクステンドストーン)の名は伊達じゃないってことだね!」


 腕前が伴わない経験値稼ぎの末に試練に挑んだとなれば、

 おそらく大概の冒険者は返り討ちにあっているかもしれない。

 便利アイテムのようで決してそうじゃない水晶石は、

 プレイヤーが思っている以上にバランスを考えた代物のようだ。


「さてと、それじゃあ早速使ってみるよ」


 超越の水晶石(エクステンドストーン)を取り出したリュウナは、それを高く持ち上げて見せる。

 相変わらず虹色の綺麗な輝きを放っており、思わず見とれるほどだ。

 皆が見守っている中、彼女は周囲を見渡して大きく頷くと、アイテム使用を実行。




 ――――――キィンッ! シュパァァーーーッ!!!!




 甲高い音がした後、水が弾けたような長い音が辺りに響き渡った。

 同時に彼女の身体を虹色の光が包みこみ、強い輝きを放ち出す。

 リュウナはもちろんのこと、その光景を初めて見る多くの冒険者が

 足を止めてそれに見入っていた。


 やがて光が収まると、そこには以前と変わらない姿の彼女が。

 いや――――レベル100へと成長した、最強の剣士の姿があった。


 自身の内に溢れる力を確かめるように、

 リュウナはそっと胸に手をあてて大きく息をつくと、



「――――お待たせ、みんな!」



 その場にいた全員へ向けて、言葉をかけたのであった。




 ****




 メガロシティ - ワープポイント付近



 無事に以前のレベルまで戻ることは出来たのだが、これで終わりではない。

 星王(せいおう)アストラへのリベンジのこともあるし、何よりも情報がない。

 ラスボスが勝手に動いている異常事態ではあるのだが、

 街を見渡しても何かが起こっているという感じではなさそうだ。

 だが、何かが起こるのを待つわけにはいかない。


「この事態を引き起こしている別の原因でもあれば、

 それを探っていきたいところだが……」


「今のところ手掛かりといえば、アストラがクエスト内。

 もしくはフィールドに出張ってきて何かをしていたぐらいだけど……」


 実際にクエスト中に現れた彼を見たリュウナとリリスでさえも、

 そのたった一度きりだ。それ以前の彼の行動を知らない。

 どうしたものかと悩んでいると、



「そういえば、私達がアイツと出会った時って

 何かしようとしてたよね?その何かを探ったらどうかな?」



 思い出したかのように、リリスが言った。

 確かにそうだ。あの時の彼はただ現れただけではなく、

 明らかに何かをしようとしていた。


「しっかしなぁ……それを探るにしても、情報が無さすぎる。

 モンスターを召喚しようとしてたのか、陣でも刻む途中だったのか……」


 どちらの行動も、ここ最近起こっている事と辻褄(つじつま)こそ合うが、

 あまりにも手間がかかりすぎる。

 冒険者の数だけいちいち何かを行うなんてことはしないだろう。

 しかし、そんな2人の様子を見たリリスは



「2人とも、私が最強の魔法クラス(ソーサラー)だってこと忘れてるでしょ!」



 と言って、自慢げに胸を張ってみせた。

 彼女は見た目こそ無邪気な子供っぽさがあるが、

 プラネット・ワールド内でも指折りの実力者である。

 いつも一緒にいたが故に、危うく忘れそうになっていた。


「私が本気を出せば広ーい場所の痕跡も探せると思うよ?」


「広域探知の魔法……か。うん、いい手かもしれない」


「そいつを使えばもしかすると、アイツが残した痕跡を

 辿れるかもしれないってことだな」


「その通り! もっと私を頼っていいんだよ!」


 一介の雑魚モンスターならともかく、ラスボスともあろう人物が

 何か力を行使しているのであれば、その痕跡が必ず残っているはずだ。

 まだ見かけていないだけで、フィールドにも出張ってきていた可能性は十分ある。


「よし! そうと決まれば近場のフィールドから探していくぞ!」


「そうだね。頼んだよ、リリス!」


「まっかせなさい! さぁ、行こう行こう!」


 これでやるべき事は決まった。

 アストラが各地に出向いて何か策を講じていたのなら、それを潰すチャンスだ。

 もっとも、バッタリ出会うような事態は避けたいものだが。


 3人にしては珍しくリリスを先頭に、一同はメガロシティを後にした。




 ****




 グラード渓谷



 切り立った崖と、恐ろしく高い滝がいくつも存在するこの場所。

 地形の影響で冒険者にとってはかなり戦い辛い場所であり、

 もし崖下に落ちでもすれば、前の街に逆戻りというペナルティ付きだ。

 そういった理由から、歩いて通過しようとする冒険者は殆どいない。


「ここは相変わらず綺麗な景色だよね。ゲームの中だって忘れちゃいそう」


「そうだな。見とれて落ちるアホも何度か見てきたが……」


「私は浮遊魔法があるから、そんなことないけどねー」


 などと話しつつ、3人は渓谷沿いの道を歩いていた。

 中でもリリスは魔法で宙を舞いながら、先ほどから周囲を伺っている。

 何故そんなことをしているかというと、広域探知などの上級魔法は

 使う際に環境値(フィールドマナ)と呼ばれる特殊な数値を消費し、

 それが周囲に多いほど強力な効果を発揮するようになる。


 グラード渓谷に着いた時点で探知魔法を使わなかったのは、

 入口では環境値(フィールドマナ)がそれほど高くなかったからである。

 先ほどから数値の高い場所を探そうと感覚を研ぎ澄ませているが、



「――――前方にモンスターの群れ発見だよ!」



 見つけてしまうのは環境値(フィールドマナ)が高い場所だけとは限らない。

 渓谷地帯でよく見かける翼竜タイプのモンスターもこちらに気付き、

 鳴き声と共に一斉に突進してくるのが見えた。


「よっしゃ! 肩慣らしといくぜ、リュウナ!」


「任せて! 遅れは取らないようにね」


 すぐに反応したアレンとリュウナが走り出す。

 レベル1になっていたのは僅かな期間ではあるが、慣らしは必要だ。

 試練を経たのもあるし、幾度かの戦闘はしておくべきだろう。



「――――――ミラージュ・インパクト!」


「――――――ブレイブスラッシュ!」



 リュウナが連続で繰り出した斬撃が群れをかき乱し、

 そこへすかさず、アレンの大型剣による豪快な一撃が決まる。

 相変わらず、言葉交わさずとも見事な連携攻撃だ。

 これで全てのモンスターを倒し切ったわけではないのだが、



「―――――サンダー・ヴォルト!!!」



 攻撃を掻い潜って突進しようとしていた残りに、リリスの魔法が命中。

 どこからともなく出現した雷の雨に焼かれて消え去った。

 いつもならば炎系などの爆発魔法によって一撃で決めるのだが、

 渓谷付近でそれをしてしまうと崖崩れなどが起こることがある。

 そういった自然現象も考えて戦わなければならないのが醍醐味だろう。

 撃破を確認した2人が剣を仕舞い、一息ついていると、



「んーと……あの辺りが一番よさそうかな」



 辺りを見渡していたリリスが前方を指し示した。

 2人が目をやると、幾つも流れている滝の上に岬のような場所が見える。

 普通に行くとかなり危ないが、リリスならば問題ないのだろう。

 彼女の先導で2人がついていくと、そこは予想以上の高さだった。


「やべぇなこりゃ。こんなところに来る物好きはいるのかねー」


 ゲームだからいいようなものだが、VRともなると話は別だ。

 ここまで作り込む運営サイドと、臨場感を再現してしまうVR技術の発展ぷりに

 思わず脱帽しそうになってしまう。

 怖いもの知らずのアレンも、さすがに身震いを隠せないようだ。


「……落ちないでよ?」


「それはフリなのか? てか、落ちたらリアルで失神しそうだな」


 2人がそんな冗談を言い合う中、リリスがふわりとした動きで岬へと着地。

 身長ほどある杖を取り出すと、両手でしっかりと構えた。

 モンスターの襲撃がある可能性も考えて、リュウナとアレンは距離をとって警戒。

 しばらくの後、周囲の空気がリリスを中心に渦巻き始める。


 そして――――――――――。




「……星魔法・領域観覧(フィールドコレクター)




 大きな杖を片手で頭上にかざすと同時に、探知魔法が発動した。

 波紋が広がるような光が幾つも発生し、グラード渓谷全体へと広がってゆく。

 さすがの大規模さに2人は思わず感心し、魔法クラス(ソーサラー)としての彼女の実力を

 改めて実感したのであった。



「―――――見つけたよ。ここからそう遠くない場所に妙な力を感じる」



 先ほどまで閉じていた目を開き、リリスが静かに告げる。

 かざしていた杖も下すと、大きく息をついた。


「いきなりビンゴときたか。行ってみようぜ!」


「何か手掛かりになればいいんだけど・・・・・・」


 満足げに頷いたリリスを再び先頭に、一同は移動を開始する。

 崖の方とは真反対に反応があったらしく、森林がある方へと入って行く。

 そのまま数分ほどは進んだだろうか。不意にリリスが立ち止まった。


「この辺りのはずなんだけど・・・・・・」


 辺りをきょろきょろ見回すが、何かがある様子はない。

 もしかして、違う何かに反応していただけだったのだろうか?

 あわや収穫無しかと肩を落としかけていた、その時―――――。



「・・・・・・ねぇ。あれは一体、何?」



 リリスが立ち止まった場所から少し先を探していたリュウナが、

 気味の悪いものでも見たかのような声を出す。

 気がついた2人がすぐに駆けつけ、彼女と同じ方向を見た。

 そこにあったのは、



「なんだありゃ・・・・・・石碑か何かか?」



 アレンの言葉が一番、()()の正体としては近いものだろう。

 木々の間から見えているそれを確かめるべく、3人は近寄っていく。

 大きさは自分達と同じぐらいだろうか。

 円形に開けた場所にあったそれは、石碑と呼ぶに相応しい形をしていた。


「あった! これだよこれ! 妙な力の正体!」


 石碑のようなものを見るや否やリリスは指をさして叫ぶ。

 力がどうの以前に、これが怪しい物体であることを、彼女を含めた3人は疑わない。

 半年もの間プラネット・ワールドをプレイしてきたが、ただの一度として

 ()()()()()()()を見たことなどなかったからだ。

 やがて、周囲をぐるぐる回って観察していたリュウナはあることに気付く。


「この石碑の模様ってまさか・・・・・・」


 熟練冒険者である3人なら知らない筈はない。

 いや―――――――むしろ、つい最近見たばかりだっただろう。



 それは、星王アストラが身に纏っていた服。

 ()()()()()()()()とそっくりであった。



 先日の異常から始まってこの石碑ありの状況だ。

 どう見ても無関係には思えなかった。

 リュウナが考えを巡らせていると、アレンが剣を取り出す。


「どうする、リュウナ。破壊しておくか?」


「以前取り逃がした時に、これを設置しようとしてたと考えると・・・・・・。

 破壊しておいたほうがいい気がする」


「運営サイドの関係者が設置したようにも見えないもんねー」


 今はとにかく何か行動を起こすべきだろう。

 リュウナとリリスはそれぞれ頷くと、同じく武器を構えた。

 石碑を三角形の形に囲むように距離を取ると、一斉に技を放つ。



「――――――――はぁっ!!!」



 石碑1つに対してはかなりオーバーキルともいえる攻撃が炸裂し、

 文字通り粉々に砕け散った後には、何かが建っていた形跡すら残らなかった。

 改めてリリスは石碑があった場所へと近寄ると、地面に手を当てて何かを探る。


「うん、妙な力の反応は消えたみたい」


 とりあえず、ここでやるべきことは終わったようだ。

 だが、あの石碑があるのはここだけというわけではないだろう。

 他のフィールドでも同じようなものを見つけたら、破壊していく必要がある。

 それは当然として、リュウナには気になっていることがあった。



「・・・・・・外にいる方の私って、どうなってるんだろう?」



 あちらの彼女は、外からモニターで様子を見ているとは思うが、

 石碑を破壊したことによって変化が起きてるのではないだろうか?

 しかし、こっちから外の状況を確認することはできないため、


「見てきてあげたら? こっちは私達に任せていいからさ!」


「あぁ、それがいい。さすがにモニターしてるだけってのも暇だろう」


 2人とも気を使ってくれたのか、一時的なログアウトを奨める。

 自分の性格は自分が一番よく知っているため、

 恐らくは今頃、暇を持て余しているだろう。


「わかった、そうさせてもらうね。ありがとう、2人とも」


 2人に礼を言ったリュウナはすぐさまログアウトし、光と共に姿が消える。

 この短い期間に色々と頑張っていたのだから、休んでもらったほうがいい。

 彼女を見送った後、アレンは拳を打ち合わせると、


「―――――よしっ! もう少し探すとするか!」


 掛け声と共に気合を入れ直し、隣にいるリリスへと目を向ける。

 それに応えるように大きく頷いたのを確認すると、

 冒険者2人は新たなフィールドへと探索へ出かけていくのであった。

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