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10 : 星の魔女と試練の影【2】

 異空間 - 試練の()


 超越の水晶石(エクステンドストーン)の封印を解く為に、ライディアへと住む星の魔女の元を

 訪れたリュウナ、アレン、リリスの3人だったが、

 その為には、とある試練を乗り越える必要があった。


 試練へと向かったリュウナを待っていたのは、自分と同じ姿をした影。

 姿を見ただけでわかる。レベルカンスト状態だった彼女と同じだけの強さを

 黒い全身から感じさせていた。



「―――――――はぁっ!!!」



 鋭い掛け声と共に先手を放ったのはリュウナだ。

 10メートルは離れているだろう距離を一瞬で詰め、剣による一閃を繰り出す。

 だが相手は自分とほぼ同じ強さを持つ影。


 ――――――ガキィィィンッ!!!


 いつの間に取り出していたのか、影の方はそれをすぐさま剣で弾き返した。

 金属同士が激しくぶつかる音が円形の広間に響き渡る。

 ただのそれだけで両者の間に小さく風圧が巻き起こり、

 たった一撃の重さと素早さがどれほどのものか感じさせた。


「さすがは私と同じ姿ね。脅しの一撃は通用しない、か・・・・・・」


 リュウナは強い相手と戦う際は、必ず最初に小手調べの一発を繰り出す。

 それで強さを大体測っているのだが、どうやら影にはお見通しのようだ。


「それなら―――――――――っ!」


 影から少しだけ距離を取った彼女は姿勢を低くすると、斜め前方に飛翔。

 すくい上げる攻撃に転じるのかと思いきや、


「サークリング・バースト!!!」


 飛ぶと同時に身体を捻って勢いをつけたリュウナは、振り下ろした剣ごと回転し、

 そのまま遠心力に任せた連続斬りを繰り出したのだ。


 ――――――ズガガガガガガガッ!!!!


 まるで風車のような動きによる連続回転斬りを受け、

 金属音が立て続けに繋がって響き続ける。

 現実であのような動きをしようとすれば、2撃目の前に失速して攻撃にならないが

 ここがゲームの世界だからこそ可能なことだろう。

 さすがに受けきることが出来なかったのか、影が少しだけ体制を崩した。


「――――――そこだ!」


 その一瞬を見逃さなかったリュウナは回転斬りの体制からすぐに着地すると、

 渾身の蹴りを放ち、剣ごと影を後ろへと押し飛ばす。

 そこにすかさず突貫して、今度こそ剣を一閃させた。

 影の腕に見事ヒットし、その姿を少し崩れさせる。


 さすがに影だから血が流れたりはしないのだろうか。

 そんなことを思っていると、相手も反撃に転じる。


「くっ・・・・・・!」


 物凄い速度で左右から交互に繰り出された6連続斬りが、リュウナへと襲い掛かった。

 素早さのステータスが高い剣士クラス(スラッシャー)特有の技で、反撃の隙を与えない。

 即座に反応した彼女は6撃目までを凌ぎ切り、次の技を出される前に飛び退った。


「―――――ミラージュ・インパクト!」


 そして着地と同時に剣を構え直すと、高速の斬撃を連続で放つ。

 周囲の空気を巻き込みながらそれらは飛んでゆき、何発かは防がれたものの

 影に確実なダメージを与え、その体制を崩させた。


 その後も2度、3度に渡って攻防が続き、それに伴って影の姿も更に崩れる。

 同時に、普段自分が当たり前のように使っていた技やスキルが

 相対してみていかに強力なものであったかもひしひしと感じていた。


 何度か斬り合ってわかったが、この影は自分に近いステータスだけではなく、

 単純に無言で向かってくるため、どう動くのかが探り辛い。

 喋る敵キャラクターとの戦いならば、声による感情である程度の判断はつくが、

 今の状況の場合だと、急にあのような反撃が飛んでくるので気が抜けないのだ。


「早いところ勝負をつけないと危ないかも・・・・・・」


 あちこちに傷を負ったリュウナにも、疲れの色が見え始める。

 試練の間で戦い始めて既に数分は経過しており、

 これ以上長引かせるのは得策ではないだろう。


 次の一撃で、確実に決める。


 彼女は鍔迫り合いの後に影を弾き飛ばすと、()()()()()()()()()距離を取ろうとした。

 それを見た影はもちろん好機と見て、再び斬りかかってくることだろう。

 剣を振りかぶる音が直後に後ろで聞こえ、リュウナはそれに合わせるように即座に反転した。

 影が振り下ろした剣が、防御の体制すら取っていない彼女を斬りつける。



 ――――――そのはずなのだが、何の音も聞こえない。



 普通は鎧なり服なりが切り裂かれる音ぐらい聞こえてもいいはずなのだが、

 その一瞬だけは、剣を振り下ろした音以外は全くの無音。

 そして、その直後―――――――――。



 ――――――ズバァッ!!



 今度はハッキリと何かを切り裂いた音が、()()()()()()聞こえてきた。

 すると驚いたことに、たった今正面から斬られていたはずのリュウナの姿がなく、

 代わりに影の背後で、剣を一閃させた彼女が立っていたのだ。



「切り札っていうのは、こういう時に使うものなのよ」



 リュウナがそう言った後、最後の一撃を受けた影が跡形もなく消え去る。

 今見せたものこそが、彼女が剣士クラス(スラッシャー)として持っているスキルの一つ。

 本物と違わぬ残像を作り出して相手を撹乱し、確実にクリティカルヒットを与える必殺技。

 力の消費が大きいため、1回の戦闘で使えるのは1度きりだ。


 もしも残像に影が反応しなかったら危なかったが、どうやら賭けには勝ったようである。

 剣を仕舞った彼女が大きく息をつくと同時に、空間の霧が晴れ始めた。

 夜だった空にも光が戻り、昼間のような輝きがリュウナへと降り注ぐ。

 その眩しさにしばらく目を瞑っていたが、やがて目を開けた時、



「おかえりなさい、リュウナちゃん。試練は無事に合格よ~」


「お疲れさん。さすが俺らのエースだな!」


「お疲れさまー! やっぱりリュウナは強いねっ!」



 いつの間にかリディアの部屋へ戻ってきており、3人が出迎えてくれていた。

 彼女は大きく頷いて応え、改めて超越の水晶石(エクステンドストーン)を取り出してみせる。

 リディアはそれを受け取ると、部屋の隅に置いてある台座へと水晶を設置。

 幾つもの装飾が施された杖を取り出して台座へとかざすと、詠唱を始めた。



「・・・・・・大地の星よ。天の星よ。全てを見守りし(そら)(ことわり)よ。

 試練を超えし者の名において、超越の証をここに示さん」



 いつもの甘い雰囲気とは打って変わった様子に3人は思わず息を呑んだが、

 これこそが星の魔女としての本来の姿なのだろう。

 詠唱が終わると、先ほどまで白く輝いていた水晶が虹色へと変化する。

 リディアはそれを見て満足げな笑顔で頷くと、リュウナへと手渡した。


「―――――はい! これで全部お終いよぉ~」


「ありがとう御座います、リディアさん」


 受け取った瞬間、ついさっきまで持っていた時とは明らかに違う、

 力の鼓動のようなものが水晶から溢れていることに気付く。

 封印を解いたこれを見るのも触れるのも初めてだったため、

 その表情は、ハッキリとした驚きに満ちていた。


「よし、これでひとまず完了だな! 世話かけたな(あね)さん」


「また遊びにくるからねー!」


「は~い♪ いつでも待ってるわねぇ~」


 2人もそれぞれ礼を言うと、リュウナと共に魔女の家を後にする。

 水晶石を使用するのは、メガロシティに戻ってからでいいだろう。

 既にワープポイント登録はしてあるので、今度はすぐ帰ることが出来る。


「それじゃあ2人とも、街に帰ろう!」


 試練を超えて一回り逞しくなった銀髪の剣士の掛け声が、

 ひっそりとした隠れ里の一角に響き渡る。

 やがて光に包まれて見えなくなっていく冒険者3人の姿を、

 星の魔女は静かに見守るのであった。

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