表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CuRe  作者: うり南
4/5

奇跡編

十月十八日


俺と夕が付き合い初めてちょうど一週間、未だに二人っきりでどっかに出かけたことすらない。

今俺は高橋家にて、夕と朝鈴と共に明日から二日間にかけて行われる中間テストの勉強中である。

俺は何度め夕なら問題ないから遊び行こうとさそったのだが、テスト対策を完璧にしないといけないらしい。

しかし、今の夕の実力なら普通に一番を取れるだろう。

これで全然駄目だとしたら、突然の交通事故で記憶喪失か同じぐらいの勉強時間を費やしてる 朝鈴ぐらいだろう。


「さっきから全部言葉に出てるんですけど」


朝鈴が俺に対して勉強でいらいらしながら言ってくる。


「フフフ、ここにいるやつらには勉強など必要ないの〜さ、」


「「『・・・』」」


皆固まって鏡介の方に目を向ける。

鏡介が座っているところはさっきまで誰もいなかったはずである。


「勉強する必要がないってどういう意味よ」


沈黙を破ったのは朝鈴だった。


「フフフ、自分で気付かないと〜は、俺様は情けないぞ。つまりコウと夕は勉強しなくても余裕で上位だろう。俺は二人からのお〜こぼれを貰うから勉強しない。勉強するならコウを遠くから見ていたほうがゆ〜かいだからな」


それは一般的にカンニングとストーカーって言うんだろうなと俺は思う。

「そし〜て、朝鈴に関しては勉強しても補習はまのがれな〜いのだから意味がない」


そういうと、鏡介の頭に缶が当たる。

恐らく鏡介なら避けられただろうが、それでも朝鈴の投げた俺が飲むはずだったコーヒー(朝鈴も夕もコーヒーは飲めないので)が鏡介に当たったのだ。

わざと当たったのだろうが理由が分からない。


「特に深い意味はないのだ〜よ我が親友よ」


そういって鏡介は扉に向かう


「あれ?帰るんだ。もう少しいればいいのに、お茶くらい出すよ。」


意外にも朝鈴が鏡介を止める。

こいつら二人付き合うのではないかとひそかに思ってしまう。


「フフフ、俺にはテストより大切なものがあるのだ〜よ。コウと一緒にいられるという点ではそれをセレ〜クトしたいがそれでもやらなきゃいけないのだよ。」


そして、鏡介は部屋から出て行く。

夕が俺の肩を叩きこっそり


『コウ君、あの二人ってどうなのかな?』


どうやら夕も俺と同じ事を思っていたらしい。

まあおそらくないだろうけど俺は


「実はもう付き合ってるかもよ」


と冗談気味に言ってみた。

夕は『まっさか〜』と朝鈴の顔を見る。

その後、なんとなく朝鈴に探りを入れてみた。


「鏡介っていいやつだよな」


「ん?そうね」


さらに


「鏡介の用事ってなんだろ?気になんない?」


「別に、あいついつも謎でしょ」


珍しく全部かわされた。

本当になにもないのだろうか、などと思っていたせいで、テスト勉強は進まなかった。

おそらく何もなくても夕で遊んでいただろうから気にしない。


「えっと、明日は国語と英語と世界史だったかな?」


『えっ!?英語はあったけど数学Bじゃなかったっけ?』


「まったく夕は、それ前回のテストだよ。コウのであってるよ」


夕は驚いて確認する。

まあ全教科勉強してあるし、問題ないだろう。

俺が夕と遊ぶための時間を費やしたんだいい成績取らないと、更には遊びまくらないと


「夕ちゃん、テスト最終日覚悟してろよ。」


『わわわわ、私何されちゃうのかな?』


そして夜

夜桜さんの作った夕飯をご馳走になった後、玄関まで二人に送ってもらう。


「じゃあ、明日がんばろうね夕ちゃん」


『うん』


「朝鈴も・・・うんまあそれなりに」


「うっさいわね、いちいち腹の立つこと言って」


俺は玄関から出る。

少し歩いたところで朝鈴に止められる。


「ちょっと待ちなさいよ」


「どうした?」


朝鈴は後ろに夕がいないことを確認して


「あんたのことだから・・・忘れてるだろうけど今からちょうど一週間後夕の誕生日だよ」


忘れていた。

見事に忘れていた。


「忘れてたのね、二人っきりにさせてあげるから、考えときなさいよ」


俺はあわてて「おう」と返事する。


「じゃあそれだけだからバイバイ」


「ああじゃあな、お前の誕生日でもあるからプレゼントぐらい買ってやるよ」


そういうと朝鈴は笑いながら「余計なお世話よ」といって走って戻っていった。

俺は誕生日に何を買ってやろうか考えながら家に帰る。


十月二十日


→夕

昨日のテストは出来た‘はず’

今日はテストがある‘はず’

テストの後コウ君と遊びにいく‘はず’


最近の私は確信を持って行動出来ていない気がする。

なんか自分じゃなくて他人を見ているような気分になる。

私はコウ君の彼女の・・・‘はず’

まただと思いながら部屋を出る。


「あっ夕、おはよう」


姉さんが片手を上げて近づいてくる。


『おはよう姉さん』


すると姉さんは、一回私を見て首を傾げる。

そして目の前に来て両手を私の顔の横にだす。

‘パチン’


『!?』


頬に痛みが走る。

私は一瞬何が起きたか解らなかったが、すぐにこの痛みは姉さんからやられたらしい、他人を見ている感じでも痛感は自分のものだったので少しほっとする。


「夕、何かあった?さっきから悲しそうな顔してるけど」


『姉さん、それいうんだったらビンタする前にいうべきだよ』


今の私は恐らく涙目になっているだろう。


「そんな顔してるとコウがあんたのこと心配するよ。まああんたがコウに心配かけさせたい気持ちもわからなくもないし、そういう恋愛もあるかも知れないけど、心配かけさせたくないなら笑いなさい」


姉さんにそういわれ、私は少し顔を赤くさせて、笑顔をつくる。

姉は「よし」と言って、台所に向かう。

私も後に続いて自分とコウ君の弁当を作る。

私の左手には今日テストの‘はず’の英語の教科書があった。


→幸一

「ふ〜、よく寝た」


テストが終わった。

五十分のテスト時間があったのに、十分ぐらいで終わり、鏡介と手話で少し話した後、ずっと寝ていた。

近くで最後までペン先を机に叩いていた朝鈴が奏でる音は見事に俺を深い眠りに落とした。


「フフフ、我が親友よ。よく眠れたかな?」


「ああ、ばっちり」


そういって俺はブイサインをだす。


「あんたら余裕ね、本当こういう時だけ羨ましい」


と朝鈴が俺達の会話に入ってくる。


「そういえば、団と香は?」


そういって二人の方を見ると仲良く答えあわせをしている。

もうなんかカップルという感じがして、違和感がない。

俺は二人に容赦なく近づき、団の肩を叩いて


「どうだった?幸せカップル」


「・・・まあそのために二人で勉強してたし」


「幸せカップルに突っ込まれなかった。団もやるようになったじゃないか」


俺がそういうと二人が俺の方を見て香が


「コウ、なんか鏡介に似てきたよ」


俺はものすごいショックを受けた。


『コウ君どうしたの?この世の終わりのような顔してるけど』


「いや、何でもないよ。それよりテストどうだった?」


おそらく大丈夫だったとは思うが俺は聞いてみる。

なんか朝から夕は悲しんでいる印象を受ける。

さらに笑顔でそれをごまかそうとしているので心配である。

しかし、本人が隠してまで笑っているのだから俺はあえて聞かなかった。


『多分、出来たかな』


「まあこの後遊びに行くんだし、楽しく行こう」


俺がそういうと夕はさっきまでとは違う俺が好きな夕の笑顔をみせて『楽しみにしてるよ』という。

そして、俺はこっそり鏡介を呼ぶ。


「フフフ、どうしたか〜な我が親友」


「お前なら俺が言いたいこと分かるだろ」


「フフフ、そんないきな〜り愛の告白なんて、こまるぜ・・・い、いや待つんだコウ分かってるわかってる〜さ、あれだろ夕と二人きりになりたいから協力し〜ろだろ」


俺はそんな鏡介がうろたえるほどの顔してたのだろうか?などと思いつつ「よろしく」と伝える。


俺は夕の手を握り走る。

朝鈴の「まちなさいよ〜」って言う声と鏡介の「フフフ、コウに会いたければ俺様を越えていけ」と言う声が聞こえた。


『コウ君、まだHR終わってないよ』


そういいながらもしっかり走って着いてくる夕の姿に笑みがこぼれる。

途中良姉さんに声をかけられたが、謝りながら通り抜けた。

文化祭以来何かしらの邪魔で夕と二人っきりになることがなかった。

下駄箱で靴を履き替える。


「夕ちゃん大丈夫?」


『へへへ、大丈夫だよ。それよりどこ行くの?』


残念ながらこの街には遊べる場所は少ない。

とりあえず制服で歩くと、文化祭の時の件で冷やかせたり目立ったりするので、服を変えようと思い、服屋に向かうことにした。

俺達は手をつないで商店街に向かう。

一瞬手をぎゅっと握られる。

隣を向くと夕が宝石店の指輪を見ていた。

こんな商店街にこんな店あったのかと思いながら夕に話しかける。


「ほしいの?」


夕の見ていた指輪はとてもシンプルなもので、シルバーのリングに、ピンク色の宝石が小さく、でも力強く光っていた。

俺の言葉に反応した夕は首を横に振り


『ううん、結婚ってあこがれるな〜っておもっただけだよ。コウ君』


そういって見られたせいなのか、俺は思わず照れてしまった。


『コウ君いこ、服屋はあっちだよ』


そういって俺は夕に引っ張られる。

俺は振り返って、もう一度指輪を見つめる。


その後服屋に付いた俺と夕、俺は即行十着ほど夕に渡して試着させる。

俺の渡した服の共通点は全てワンピースだった。

俺の中では、この街に帰ってきたときの夕の姿が最も印象に残ってしまい、もう夕に自分が何か着せるとしたらワンピースしかないと思っていた。

‘こんこん’

壁を叩く音が聞こえる。

夕が一着目を着終わったのだろう。

カーテンを開く。

俺は言葉を失ってしまう。

赤いワンピースだったのだが、なんというか、とにかく・・・似合いすぎる。


『コウ君?』


俺は夕の手話で我に変える。


「夕ちゃん最高だよ。もうそれ決定、それ以外ありえない、もう即買わないとその商品がかわいそうだよ。」


『あわわ〜コウ君が壊れちゃった。』


その後、結局俺が渡した服全て買ってしまった。

と言うよりも、俺が少し調子にのってほめ過ぎたのが原因なのだが


『コウ君買ってもらっちゃって良かったの?』


夕は心配そうに聞く。

俺は「問題ないよ」と答える。

実際、俺は金には問題ない。

俺が東京にいたとき、様々な塾や予備校やらに俺の名前を貸す代わりにお金を渡すという本来ばれたらいけないような方法だが、はっきり言ってそこらへんの課長クラスのサラリーマンと一年間にもらう額は変わらない。

ちなみに俺は黒ジーパンに黒シャツに黒ジャケットという黒尽くめでそろえた。

以外にも選んだのは夕で、夕のセンスに少し驚く。

夕は最初に着た赤いワンピースに青色のジージャンを羽織っていた。

さすがに十月後半なので日が沈むと寒いのでその対策である。

その後、荷物はコインロッカー(探すのに三十分ほど使ったが)に入れ、もうお互いがお互いを色々な思い出の場所に連れて行く。

例えば、すでに廃校が決定している俺達が通っていた小学校とか、秘密基地として使っていた橋の下とか、遊ぶというから映画とか行くつもりだったが、そんなものはこの街には存在せず、それでも行く場所行く場所で思い出話に花を咲かせる。


夜七時頃になると、もう真っ暗になっていて家に向かう。

夜桜さんとおじさんにからかわれるのも困るし、こんな田舎街でも何が起こるかわからないのだ。

家の前で少し話した後。


『コウ君今日はありがとう楽しかったよ。本当に夕飯食べていかないの?』


「明日からテスト休みでお世話になるからね、今日くらいは祖父母と食事しとくよ。」


夕は『そっか〜』というが微妙に納得してなそうな顔をしていた。

そして、夕は両目をつぶる。

俺は夕の肩に手を置きおでこにキスをする。


『う〜、コウ君いじわるだよ。』


「明日は昼からだよ。鏡介がまたなんか考えてるみたいだから」


俺は笑いながら帰る。

夕は俺が家に入るまでずっと手を振っている事を知っていたので振り返りながら夕が見えなくなるまで後ろ向きで歩く。


家に帰ると祖母から、良姉さんから電話があったことを聞き、電話をする。


「あっ、良姉さん?おれおれ」


「・・・・残念ながら私は愚かではないってか、物忘れするほど老けていませんのできります。」


「わわわ、幸一だよ幸一、それに良姉さん全然若いじゃんだってまだ二十・・・」


「わ〜わ〜わ、もう、私だって忘れてるんだから」


さすがに自分の年忘れちゃ駄目なんじゃと思いつつ。


「そういえば電話ってなに?」


「そうそう、明日朝開いてるかな?ちょっと電話じゃ話しにくいことだから職員室まで来てほしいんだけど」


「そんな、良姉さん、いくら若い子がいいからって生徒に告白なんて駄目だって、それに俺は夕ちゃんともう二度と離れる気皆無だから」


「そんなわけないじゃん、ちゃんと来なさいよ。」


俺は内容は気になったが、いつも通り、勉強とある事を行う。


十月二十一日


‘ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ’

念のために鳴らした目覚ましがなる。

俺は自分でも奇跡的だと思うが目覚ましより早く目を覚ましていた。

おそらく良姉さんの昨日の呼び出しが気になったのだろう。

俺は目覚ましを切って、着替える。

現在の時刻は八時、東京にいた時は午後まで寝ているときもあったのでこの時間には驚きだ。


「よし!」


俺は目覚めのために、一回自分の頬を両手ではさむように叩く。



学校に着いた。

いつもみんなで学校で行ってためか、一人で行う登校は長く感じた。

‘コンコン’


「は〜い」


職員室から良姉さんの声が聞こえる。


「二年A組松葉です。失礼します。」


入ると中には良姉さんと世界史のおじいちゃん先生こと田村たむら きよし七十一歳がいた。

他の先生は休日やら部活やらでいないみたいだ。

良姉さんは俺がこんなに早く来るとは思わなかったのか、目を一瞬大きく開いた後、いつもの顔よりちょっと冷静な顔になって


「コウ君、早かったね。じゃこっち座ってもらえる?」


そういって、先生の机の前に座らされる。

そして「飲む?」といわれてコーヒーを置かれる。

俺がコーヒーをすすると、良姉さんは俺の前に紙を並べる。

その紙には見覚えがあった。

昨日まで行っていた国語、数学、世界史、地理、英語、生物、科学のテスト計七枚の解答用紙だった。


「!?」


俺は思わずびっくりする。

これが自分のテストならたとえ零点でもここまで驚かないだろう。

俺の前に出されたのは、夕の回答用紙でその点数に唖然とする。

おそらく平均点程度だろうがそれがおかしいのだ前回学年二位である夕がこの点数はありえないのだ。


「もしかしたら朝鈴よりも低いかもな」


俺がそんなことを口に出すと、良し姉さんは少し笑みを浮かべながら、「それはないよ」と言う。

どんだけ悪いんだろうあいつはと思った。


「なるほど良姉さんが相談した言っていたことはこれか」


「そういうこと、話が早くて助かる。ちなみにあんたは全部満点、一問有名大学の過去問入れたんだけどな。」


俺は解答用紙を見る。

最初に見えたテストが世界史だったため目に入らなかったが、数学と科学は共に九十点をクリアしていていつも以上に見えなくもないのだが、暗記物の世界史、地理、英語に関してはありえなく低い。

細かく見てみると、俺がテストに出ると予測して、俺が見ただけでも五回は確認したところが間違っていた。


「夕が勉強していたことは私も知ってるし、ずっとコウ君が遊びたい遊びたい駄々こねてたのも覚えてるしね」


俺は一瞬赤くなる。


「おかしいな、このテストなら夕ちゃんなら満点取れてもおかしくないはずだ、本当に遊べなかったし、暗記物が出来てないのも気になる。」


良姉さんは「そうか、コウ君でも分かりませんか」と言ってがっかりして、自分用に用意したのか緑茶をすすり


「とりあえず校長には黙っとくけど、なんか分かったら私にいいなよ。コウ君昔から一人で背負うからね」


時間を見るともう十時になっていた。

学校に着いたのが九時頃だから一時間もここにいたことになる。

多分今の俺はあせっているのだと思う。

俺は失礼しますと言って職員室を出ようとする。

すると不意におじいちゃん先生が


「あ、あの〜な松葉君だっかの」


「はい」


「思ったことを口に出しといた方がええぞ、誰も人の考えてることはわからないんだからの」


俺は一礼してから職員室を出る。

思わず鏡介を思い出したがあいつは例外なんだろうなと思いつつ、顔を少しうつむけながら学校を出る。

そのまま歩いていると商店街の中を歩いていた。

ほとんどの店は十時に開店するので、にぎわっているといえばにぎわっている状態だった。

とりあえず元気を出そうと思い、朝食代わりに肉屋で一個八十円のコロッケを二個買って更に肉屋のおばちゃんに


「おや、元気ないね〜あんたあれだろう、高橋のとこの譲ちゃんと付き合いはじめた松葉のとこの坊ちゃんでしょ。見たわよ文化祭、はいこれ牛乳持ってきな。泣かすんじゃないよ」


「はい、ありがとうございます」


俺はそういって牛乳とコロッケを手に取る。

よほどしけた顔をしていたのだろう。

俺は出来るだけ笑顔で返す。


しばらく歩くと少し元気がでる。


「とりあえずこれからだよな〜」


と独り言をつぶやきついた先は宝石店。

昨日夕が見ていた指輪を見つける。

たとえ値段がどんなに高くても買うつもりだったが、思ったほどの高さではなく。

事前に鏡介から聞いた夕の指の大きさを言うと、ピッタリの物がすでにあったので、小さな小箱に入れてもらう。

まさかこんな高校生が指輪を買うとは思ってなかったのか、店員のすらっとした白髪のおばちゃんは終始目を丸くして驚いていた。


家に帰り指輪の入った箱を机の中に入れて、昼になったことを確認してまた外に出る。

この日から、俺は夕の行動を少し注意してみるようにすることになる。


十月二十四日


「夕ちゃん?」


俺は夕の肩を叩いて話しかける。


『へ!?・・・どうしたのコウ君』


これで今日五回目だ、先生にテストを見せられてから、俺は夕の行動をチェックするようになった。

分かったことは、夕ちゃんの反応が日に日に遅くなっていること、そして・・・


『今日は何するんだっけ?』


記憶力がなんとなく、いやもう確実に悪くなっている。

俺はこれを夕にはもちろん朝鈴や他の皆にも気づかないようにしていたつもりである。

もしかしたら鏡介には気づかれているだろう。

それは鏡介も夕を助けていたことから分かった。

そして、俺はあるひとつの可能性がずっと脳をかすめていた。

夕と朝鈴の誕生日、つまり明日が終わったら、真剣に一回夜桜さんとおじさんに病院に見せるように相談しようと思う。

そして、明日は皆で誕生日のパーティーをするということで、今日の間に夕に渡したいものがあるなら二人っきりのときに渡せと言われて、今は二人で商店街を歩いている途中である。

しかし、ここだと二人っきりになるどころか、色々な人に話しかけられて静かでもない。

っていうか場所の選択ミスだろ。

なんでここにいるのか?そうだ、この休みの間にやることがなくなるまで遊びまくったので散歩しようかということになっていたのだった。

俺もボケたかな?


結局渡せる雰囲気も勇気もないまま夜になってしまった。

今はいつもの通学路の川のそばにいる。

俺はいきなりだが


「夕ちゃん、明日何の日か知ってるよね?」


『えっと・・・誕生日?』


「そうなんだよね〜実は今日の二人っきりの間にプレゼント渡そうかなと思ってね」


そういいながら、俺は頭を片手でかきながら言う。

こういうことは今までの人生でこんなことをした経験一度もなかったので、どうしていいのか真剣困っている。


『へ!?・・・え〜!?何で何で、今日そんなサプライズな日だったの?どうりでコウ君・・あれ?』


「夕ちゃんどうしたの?」


夕が一瞬固まったかと思うと口ぱくで何かいう。


「・ぉふん・ぁうへ・て」


その後夕が目を覚めるのは次の日の朝だった。

俺の予感は的中した。


十月二十五日


俺は病院にいた。

俺だけでなく、夜桜さんにおじさん、朝鈴、鏡介、団、香、大河そしてベットの上で眠っている夕。

あの後俺は病院と鏡介に連絡した。

俺と鏡介は徹夜、他の皆は夜一回見に来た後、一旦帰るなり病院に寝るなりしていた。

この街には私営病院『松葉病院』一個しかない。

そう、かつて俺の両親が働いていた場所。

現在は当時研修医だった武藤靖彦が医師となり、看護師一人と二人で経営している。

俺はずっと靖彦と呼んでいて、すごいやさしいイメージだったのだが、そのイメージ以上に貫禄というかなんか親父を見ているような感じがした。

靖彦いわく、脈に問題はないが血圧が高く、おそらくそれが原因のめまいだろうとのことだ。

病室にはベットとたんすが二つずつ、そして何個もの椅子が置いてある。

最悪の事態を想定していた俺は、キャンバス用のノートと太字の油性ペンを置いて貰う用に頼んだ。

靖彦は最初疑問に思ったらしいが、了承してくれた。


「コウちゃんに鏡介ちゃん一時間でいいから寝てなさい」


夜桜さんがそういって、眠るように促す。

鏡介のほうを向くと、鏡介は頷き、そして


「ちょっと寝と〜くべきだ、安心しろ。誰が夕を見てて〜も一番最初に伝えるのは我が親友のコウだからな」


そういわれて、不安が残りながらも、隣の空いてる病室のベットを借りる。

絶対眠れないと思ったが早く寝れた。


「コウ、コ〜ウ!!起きて起きなさい、夕が目を覚ましたよ」


俺は時計を見ると、時間はさっきから二時間ぐらい経っていて、八時になっていた。

俺は起こしに来てくれた朝鈴の横を駆ける。


「ちょっ、まちなさいよ。入るのはちょっと待って」


朝鈴のそんな声が聞こえる前に、俺は扉をあけてしまった。

病室には夕の他に誰もいなかった。

おかしかったのだ、二時間前に夜桜さんに寝るように促されたのに、起こしに来たのは朝鈴だった。

夕は今までに見せたことのない、冷めた顔で俺の方を見る。

そして、俺に対して、スケッチブックをめくり一番最初のページを見せる。


「!?」


そこに書かれていたのは


‘あなた誰?’


俺はその場で固まってしまう。

一番初めに書かれていたということは夜桜さんに対してこれを書いたのだろう。


「コウ、コウ・・・しっかりしなさい」


俺は後ろにいた朝鈴に言われる。

夕は朝鈴の方を見て、スケッチブックをめくる


‘ねえさん 寝ていい?’


まだ朝鈴のことは覚えているらしい。

俺は後ろを向き、朝鈴とすれ違う。


「必ず戻ってくる。少し時間をくれ・・・夕ちゃんを頼む。」


俺は朝鈴の返事も聞かないまま走り出した。

途中待合室に泣いている夜桜さんとおじさんを見つけたが、今の俺は止まることが出来なかった。


着いた場所は、高橋家の庭の桜の木だった。

とにかく夢中で走っていた。

感情がめちゃくちゃになっていて、俺は思わず


‘ドン・ドン・ドン’


桜の幹に何回も頭突きをする。


‘ドン・ドン・ドン’


血がたれ始める。


「くそ、くそ、くそ」


俺は涙を流し始める。

血と涙の混ざったものらしき水溜りが出来始める。

悔しかった。

悲しかった。

自分はいったい何をしていたのか、自分は何も出来なかった。


何十回か頭突きをした後俺は一瞬めまいが起こり、暖かい液体に頭から突っ込む。

俺は気を失った。


目が覚めると、目の前には鏡介がいた。

どうやら鏡介に膝枕されてるみたいだ、夕にもされたことないのに・・・夕


「そういえば俺は、っ痛〜」


頭ががんがんする。


「フフフ、あんだけ頭打てば〜な、見るか?我が親友の軌跡」


外の桜の木を見ると、その下にもうすでに黒くなっていたかつては真っ赤な血だったものがあった。


「俺、なにも出来なかった」


「コウ」


「なにやってんだよ俺」


「コウ」


「ありえないだろ、わかってたはずだろうなのに俺」


「コウ!!!っ」


鏡介は肩を思いっきりつかみ俺の顔を自分の顔を見せるようにする。

鏡介は哀しいものを見る目でみつめる。


「っ!!」


俺は声をあげることすら出来なかった。

普通は鏡介の立場なら殴ったりするところだろうが、鏡介はそれをしなかった。


「フフフ、あ〜たりまえだ、なぜ我が愛の親友を殴らなければならないの〜だ、それにお前も俺様もこれからしなきゃならな〜いことがあるではないか」


「これから?」


俺がそういうと、鏡介は服の中から二つのものを取り出した。

一つははがきだろうか?もう一つは見覚えがある。

昔俺が夕にプレゼントした髪飾りだ。

とはいっても、それは親父に用意されたものだった。


「悪いな俺様はこれ以上言えないのだ〜よ。それが『F』の遺言だったから〜な」


『F』・・・俺の親父がかつて特定の人に呼ばれていた名前である。

そして、鏡介は俺に言葉を発した後、消えていた。


「ふ〜、ここにきて親父か」


俺は少し落ち着いたのかもしれない。

そして鏡介の置いていったものを見つめる。

最初に手を取ったのは、はがきである。

送った住所は東京にある俺の家、しかし俺はこの手紙を見たことがなかった。

差出人は・・・狼だった。

内容を見ると


『コウ、お前が夕に贈ったって言っていたやつに取られた髪飾り取り戻しといたぞ。本当はこういうのは自分で取りに行くもんだぞ、あと今回はお前に恩を売っておこうと思ってな、お前が忙しい理由も知っているが、俺も家庭の方でな、見たことあるだろ俺の妹、小春って言うんだけど、いや本当にかわいいやつなんだがなこっちに戻ってきたときでいい、友達になってやってくれ・・・以上またあおうぜ』


小春が前見つけた狼からの手紙の約束ってのはこのことだったのか、まあこの手紙を見る前に約束は果たしたことになるのかなと思う。

次に髪飾りを手に取る。

鏡介が渡してきたものだ、きっと意味があるはずだ。

俺はなんとなく色々な方向から見てみる。

少し汚れているが、夕に付けたら似合いそうだと思う。

実際昔つけてたときは似合っていたし、夕も気に入っていたので放さなかったらしい。

手になんか変な感覚が残る。

裏側をよく見ると定期的な間隔で穴が開いていた。

横三個縦二個が何個も並んでいる。

昔はこんなもの気がつかなかった、穴も小さいし見ようとも思わない。

これは点字か?

俺はそう思って、昔小学生ぐらいのときに何回か見た点字の表を思い出す。

がんばって解読してみる。


『ゆうにもしものことがあったら0101*******』


後半の数字は電話番号だろう。

国番号1、つまりアメリカと言うことだ。

誰の番号だろう?

その時、母親の言葉を思い出した。


「夕ちゃんの髪飾りにあの人の言葉が」


母親に聞けば分かるかもしれない。

俺は急いで携帯を手に取り電話をかける。

仕事中かもしれないけどそんなこと関係ない。

夕が大変なのだから。


「あっ母さん?幸一だけど」


「あっこういち?どうしたの何か急用・・まさか夕ちゃんになんかあったの?」


はやくて助かる。


「夕ちゃんが倒れちゃって、更に記憶が曖昧になってる。多分・・・いやなんでもない。それで夕ちゃんの髪飾りで父さんの言葉を解読したんだけど、どうやらアメリカの方の電話番号だと思うんだけど、母さんなにかわからないかな?」


母親は、無言で俺がしゃべり終わるのを待つ。


「あの人が耳鼻科の研究をしてたのは知ってるよね」


俺は「うん」と答える。


「あの人が『F』と呼ばれるきっかけになったときの、『ロベルト・F・ハース師匠』先生しかいないわね、あの人が頼る人なんてこの人しかいないし、私はいこの人意外に思いつかない」


『ロベルト・F・ハース』俺でも知っている外科の先生だ脳神経外科学に関して専門に研究をしている。

まさか自分の父親がその人の弟子だったとは思わなかった。

俺は母親に礼を言う。

母親は最後に


「私は逃げてしまった。こういち、あなたには逃げてほしくない。わたしには言う資格なんてないけど、最後まで見てやりなさい。」


そういって母親は電話を切る。

俺は一息吐く。

まだ頭は痛いが、自業自得ということで我慢する。

おそらく、この電話をかけるとその人につながるのだろう。

つまり、より細かい状況を言わなければならない。


「夕ちゃんの所に戻らないとな、朝鈴とも約束したし」


俺は病院に戻る。

病院の入り口の所に行くと、香と団と大河が立っていた。

最初に気づいたのは香だったのだろう。

香は団と大河に対して俺に指を向けて何かしゃべっている。


「・・・コウ、大丈夫?」


「俺は、まだ少しな、でもやることがあるから」


「やること?」


香が聞いてくる。


「それよりも夜桜さんとおじさんは?」


「鏡介が一回落ち着かせようとして、眠らせてたよ。方法はわかんないけど」


俺は「そうか」と言って中に入る。

なぜか、大河が付いてくる。


「靖彦、夕ちゃんの状態は?」


「血圧が高いこと意外は正常なはずだよ。これが原因の記憶喪失なら勝手に直るんだろうが、多分そうはいかないんだろうな、今は寝ている。記憶喪失特有の行動だよ。」


俺は靖彦からカルテを受け取る。


「靖彦、電話借りるよ。大河ちょっと周り静かにさせて・・・って誰もいないしね」


俺は夕の髪飾りにあった電話番号らしきものを押してみる。

相手はすぐに出た。


「こちらロベルト・F・ハースの研究所です。あなたは『F』ですか?」


女性の人の声で、英語だった。

なぜ『F』からと言うことは分からなかったが、英語ということは予測できていたので、俺は落ち着いて返す。


「俺は『F』の息子の松葉幸一です。ロベルト・F・ハース氏はいらっしゃいますか?」


隣で、英語を聞いていた大河は俺が英語をしゃべっていたことに、ものすごいものを見ているかのように見ている。

女性の人は俺の言葉を聞いて、驚いている。


「『F』の息子!?少々お待ちください」


するとすぐに、お爺さんのような渋い声の人が出る。

テレビで聞いたことのある声、一瞬でロベルト・F・ハースと言うことが分かった。


「やあ、幸一君だね私はロベルト・F・ハース、君とは一度『F』、君の父さんが亡くなったときに一回あったんだよ。ところでどうしたんだい?これは確か緊急の時の電話だったはずだが」


俺は片手で夕のカルテを見て落ち着いて話す。


「『F』の最後の患者、高橋夕の様態が悪くなりました。助けてください。」


「・・・具体的に話してくれないか」


夕の昔のカルテもあったので、そこから説明する。


「患者が幼稚園の時つまり今から約十年前、中耳炎が治らず難聴になりました。その後、小学二、三の時は一時回復、その後難聴は続き、耳の精密検査をする二週間前に主治医『F』がなくなりました。最近では難聴状態以外異常はなく過ごしていましたが、昨夜急に倒れて、記憶喪失。現在の主治医武藤靖彦は血圧が高く。これが原因での一時的記憶障害と判断しています。この記憶障害ですが、自分自身のことと日常生活、更に姉である高橋朝鈴のことのみ覚えているようです。どうでしょうかロベルト・F・ハース氏」


「私のことはハースと読んでくれたまえ、私も君のことは幸一と呼ぶことにしよう。」


そういった後ハースはしばらく考える。


「幸一、君はどう思うかね?君も靖彦と同じ意見かね?」


俺は自分の思ってる最悪のケースを話すことにした。


「俺は中耳がんによる、障害の一つと考えます。」


中耳がん、名前の通り癌の一種である。

日本では滅多に起こることのない病気、俺はこのカルテでかつて夕が中耳炎になったことや、最近の夕を見てて、これがもっとも最悪なパターンだと思った。


「私は脳に転移している可能性もあると思っている。


俺は言葉を失う。

大河が「大丈夫か?」と倒れかけた俺を支えながら言う。

俺は更に話しを聞く。


「幸一、一度アメリカに来てくれ、・・・の空港まで来てくれれば、迎えに行こう。はっきり言って一刻の猶予もない。そして、患者のCT検査やMRI検査は現在主治医の靖彦にどうにかしてもらって、とにかく慌てず急ぐんだ。あとこの電話番号は一度使うと使えなくなってしまうから、君の携帯の番号を」


俺は携帯の番号を教える。


「では、待っている。出来るだけ急いでくれ。」


電話が切れると同時に俺は今まで逃げていた夕の死と言うものを急に感じてしまった。

そして、大河に全体重を預けることになった。


「あわわわ」


倒れた。

俺は一瞬上を見て、何とか立ち上がる。

急がないと

俺は急いで、靖彦の元に向かう。

そして、CT検査・MRI検査の手続きをしてもらう様に言う。

こんな田舎街では、父さんのいたころならともかく、こんな検査できない。

もしかしたら、東京でも放射線治療とか出来るかもしれない。

でも俺は夕を確実に直る可能性の高い方を取ろうと思う。

話を聞いていた団は


「・・・パスポートはどうする?」


俺はあせる。

確かパスポート、確かハースに言われた空港はビザは入らなかった気がするが、海外に行くためにはどうしてもパスポートが必要なのだ。

最低でも八〜十日かかる。

でもどうすることも出来ない。

その時


「フフフ、は〜ハハハハ」


鏡介の声が外から聞こえる。

メガホンでも使ってるのかとても大きい。

玄関を見ると、一直線にとんでもないスピードで・・

‘ガ〜ン!!!’

玄関の扉にぶつかった。


「フフフ、こんな〜もの我が愛に比べれ〜ば」


結構痛そうだった。

そして、鏡介は皆の中心に立ち


「フフフ、どし〜たのだ?夕が倒れたからって落ちこ〜みすぎだぞ」


「それが、幸一海外に行くことになったんだけどパスポートがないのよ、急がないといけないのに」


香が落ち込んでる俺の変わりに説明する。


「フフフ、俺様がいまま〜で何をしてた〜と思っているのだ」


そういって、鏡介が取り出したのは赤色の手帳みたいなものに金色の文字が書かれたものが八枚、パスポートだ


「鏡介!!!」


俺は鏡介に飛びつく。

自然になぜか涙が出た。


「フフフ、照れるじゃない〜か我が親友よ」


こうして俺達はアメリカに飛び立つことになった。


「飛び出しは明日、夜桜さんとおじさんには一応パスポートの申請をしとくようにいっといてくれ」


俺は、夕のところから来た朝鈴に言う。

結局、俺と団と鏡介がアメリカに向かうことになった。

大河にはここに残ってもらうことにした。


「たのむぞ大河、もし夕が記憶を戻した時とか、逆に忘れそうになった時、支えてやれ」


俺が本気でそう頼むと、大河は「ままま、任せとけよ」という。

俺は急いでかえって準備する。

手続きは鏡介が済ませていて、朝一番で出発する。

俺は今までやっていた百枚ノート十冊をジュラルミンケースに入れる。

そして、一度夕の様子を見に行ってから絶対に直すと誓って隣の部屋に荷物を置き眠る。


十月二十六日


「やっぱ、飛行機の中のせんべいってのもいいよね〜。至福だね」


「・・・」


「お茶は自分でもって来ればよかったな、市販のお茶だとせんべいの味の三割は損してるね」


「・・・」


「あ〜もうちょっとせんべいもって来ればよかったかな、トランク一つじゃ足りないかもね、どう思う幸一」


「・・・」


「ねえ、幸一聞いてる?」


光が寝ている振りをしている俺に話しかけている。

現在飛行機は太平洋上空を飛行してる。

俺、鏡介、団は朝一番で出発して飛行場に向かって、予約したはずの席を搭乗口で確認するはずが、俺の隣に別の人が入っていた。

『市川 光』

と言う名前が

その後、俺と鏡介の席の間に光が入ってきたのは言うまでもない。

そして、彼女が鏡介と同等かそれ以上の不思議な力の持ち主なことは前回明らかになったので、おそらく俺達がこうしてアメリカに行く理由も夕の状態も知っているのだろう。


「夕ちゃんと幸一が付き合ってるのも知ってるよ〜」


どうしてこの人たちは人の心が読めるのか


「「愛の力」」


鏡介と光はハモリながら同じ事を言う。


「私結構寂しかったんだよ。幸一何も言ってくれないし、相談ぐらい乗ったのに、舞台の上で相手に告白させるなんて」


「そっちの相談かよ。おまえらには隠し事できない」


その後、修学旅行の後から今までの俺達に起こったことを話させられる。

せんべいを皆で食べながら。

団は目の前の映画に夢中になっていた。

有名な魔法使いの話で、一回原作を光に勧められたが、全七作といわれた瞬間時間が足りないといって諦めた。

団にそのことを言ったら、よほど気に入ったのか、光に貸してくれないかと聞いていた。


そんなこんなで、長い間飛行機に乗って、何事もなく無事に着陸した。

見事な晴天で昼だった。

かなりだるい、これが時差ぼけと言うやつだろうか?

海外に来たのは初めてなのでかなり驚きだ。

鏡介と光は来たことがあるらしい。

到着して空港から出ると同時に携帯に電話がかかる。

電話番号はもちろん非通知、そして電話にでると思いっきり英語だった。


「幸一、君らは今四人でいて、男三人、女一人ですか?」


昨日最初に出た女性の人だった。

俺が、「はい、そうです」と答えると、サングラスをかけて、黒のスーツ、金髪の長い髪をポニーテールにした人が携帯を持っている人が肩を叩いてきた。


「誰〜だ」


そういって俺とその女性を囲む形で光、鏡介、大河が構える。


「動くな」


そういって女性は銃を取り出し俺に突きつける。

鏡介は俺を助けるために飛び出す。

俺はただ固まっているだけだった。


‘パーン’


周りの人がこちらに注目する。

銃の先から出てきたのは四本の花、そして一本一本を一人ひとりに渡す。

どうやら向こうはこっちのことを調べ上げてるみたいだ。

そして女性はこの花が研究所のパスだという。

絶対になくしてはいけないみたいだ。

おそらくなくしたら鏡介や光でも入れないだろう。

黒い車に全員乗るが、それでもスペースに余裕が出来るほどの車だった。見た目は普通と大差がなかったので驚いた。

車の中では、女性がずっとしゃべりっぱなしだった。


「申し遅れました。私の名前はロベルト・リンナ、あなたがたがたずねる人の末っ子です。リンナって呼んでくれればいいわ」


その後俺達も一人ひとり自己紹介ををする。

団と鏡介の時は俺が同時通訳する形になった。

そしてその後はリンナの質問が次々に来る。

夕の事、今までの勉強したこと、最近のスケジュールまで聞く。

どうやら車の通ってる道を覚えさせたくないみたいだった。


二時間ほど車の中にいただろうか?さすがに尻が痛くなってくる。

団は映画に夢中になっていたためかぐっすり眠っていた。

車が止まる。

外を見ると、警備の人が本人確認をしている。

ここからレンガの大きい建物が見える。

そこからここまで、一本の道が通っていて周りに林みたいに木がたくさんあった。

俺は団を起こそうとする。

すると鏡介は


「フフフ、俺にま〜かせろ」


そうして鏡介は団の隣に移動して、慌てた風に


「団!大変だお前のパソコンに水が、香の壁紙が」


団は慌ててパソコンを開く。

そして、データフォルダを確認する。

どうやら本当に香を壁紙に、それを確認した俺と光は固まり、鏡介は大爆笑そして団は少し頭を整理して、理解したのか顔を真っ赤にさせる。


車を降りて、大きなレンガの建物に入る。

窓の数を見るとどうやら5階建てみたいだった。

中に入ると、白髪に赤いめがねで細身の老人が立っている。

白衣が大きすぎるのか、足元まで届いている。


「やあ、きみが幸一君だね」


そういって光に抱きつく。

‘ゴスッ’

ものすごく重そうな椅子を片手に持って殴ったのはリンナだった。


「おいおいリンナ冗談だよ冗談、それに抱きつくぐらい普通じゃないか」


「その左手をどかさないと『F』と同じところに行くころになりますよ。」


そういうと、光の体を触っていた手をどかし両手をあげる。

俺は光に


「何で何にも言わないんだ」


とたずねると、せんべいを取り出して


「あれ〜、私はまだ幸一のこと好きなんだよ。助けてもらうの待ってたんだよ。ふ〜ちょっと湿気てるけど至福だね。」


「しかし『F』の息子か、似てるのは目ぐらいか?あいつはもっとごつかったからな、しかし目は同じだ懐かしいよ」


ハース氏はそういって俺の肩を叩く。

その後、俺達は個室に連れていかれる。

すると背の高い金髪の男の人が立っていた。

おそらく四十代前半ぐらいだろうが、外人の年齢は分からない。


「彼は『H』と呼んでくれ、現在は私の元で右腕兼講師をしてもらっている。そして、早速だが夕さんの様態の説明をしてくれ、出来るだけ細かく。」


その後俺達は三時間かけて、夕の様態のほかに性格や今までの経緯を話した。

その後、俺はハース氏に呼ばれて、鏡介たちと離される。

そして、とても厳重な鍵がかかっている部屋に連れて行かれる。

ハース氏は少し深刻な顔をしている。


「夕さんははっきり言ってやばいだろう。そして、現在脳付近の部分の手術は放射線を使われている。しかし、少しでも残ってしまったらまた同じことの繰り返しだ。つまり人間の手で切開手術を行わなければならない。しかし、人がいない。アメリカを探しても脳の専門医は確かにいるが、半年は予定で埋まっている。これは、私の予想だが、今まで夕さんが難聴だけで過ごしていたのをみると・・・いやこれは検査を見てからにしよう。ここからが大事なのだが、脳の手術には最低五人は必要だ。私と『H』、リンナ、そして『R』は呼べば来てくれるだろう。残りの一人それを幸一君、君にやってもらう」


俺は一瞬固まる。

そして、何か言葉を言おうとした時、ノックがなる。

リンナだった。

そして、ハース氏に紙を渡す。

リンナが部屋を出た後、今度は全ての鍵を閉める。


「今から三ヶ月、君にこのプログラムをやってもらう。医師免許がないのでもちろん手術はこの研究所で内密に行う。もしばれたら、私は刑務所の中かもな」


俺は渡されたプログラムを見て驚く。

一枚目に書かれていたのは円グラフだった。

睡眠夜の二時〜五時、そして昼の十三時〜十四時とあった。

そのほかは、専門的なことばかりだが、とりあえず朝勉強、昼寝後実践と言うことだけは分かった。

しかし、もっと睡眠時間が短くてもいける気がする。


「もっと睡眠時間短くてもいけます。それに昼寝って何ですか」


「だめだ、君は三ヵ月間これをやり続けるんだぞ。続けなきゃいけないんだぞ。そして決して倒れてはいけないんだ。これに従いなさい。」


これが、現在、最高の外科医といわれる人か、俺はあまりの威圧感だまって頷く。

そして、俺は部屋に戻り紙を見直す。

鏡介たちは別の事をやるみたいだ。

俺はポケットの中に入れっぱなしの指輪を手に取る。

ピンクの宝石が光っていた。


十月三十日


→夕

三日前、ここではない場所で検査をしたらしい。

二日前、ずっと姉さんと本を読んでいたらしい。

一日前、色々な人が来たらしい。

全部今日姉さんから聞いたことだ。

さっき私はどうやら姉さんをかなしませたらしい。

ただお腹がすいたと言っただけなのに、最近私は色々な人を悲しませているようだ。

部屋の隅には知らない人が昼間の間座っている。

時々姉さんと話していたので、姉さんの知り合いかも知れない。

腕に重みが感じる。

腕に何かついている。

何かの花は分からない、だけど冷たいはずの金属が暖かく感じた。

一瞬男の子の姿が思い描かれた。

その瞬間に部屋の隅の知らない人が立ち上がったが、また座りなおした。


→幸一

靖彦からメールで検査結果がきたのは今朝のことだった。

電話でも話したが、まさかの結果に落ち込みとあせりが感じられた。

とりあえずメールで写真を見た限り、中耳癌で間違いはない。

そして、ハース氏の予想どうり、脳にまで届きそうだった。

時間がない。


「ワンハッピー、休憩終了だぞ」


俺は『H』に呼ばれて、十畳ぐらいの部屋で『H』と二人で勉強を始める。

ちなみにワンハッピーとは『H』に幸一の意味を教えてくれと言われたので教えたら、呼び名がこうなった。

『H』は見た目とは違い気さくであるが、勉強中は厳しい。

勉強は五十五分やって五分休むを繰り返す。

アメリカ人は時間にルーズだと思っていたが、かなり正確に勉強する。

渡されるのは主にプリント、なぜか日本語訳されているのと、英語のままのしりょうだった。同じ内容ではあるがこのおかげで分かりやすい。

これを昼まで繰り返す。

その後一時間昼寝、その後は、夜の営業終了まで、ハース氏、リンナ、『H』それぞれの先生の見学をする。

手術もやるので参考になることばかりだと思う。

その後ハース氏と『H』で手術の練習として今日は


「今日は人間の皮膚を模型としたものを切る練習とそれをくっつける練習だ。『H』よ手本を」


「はいは〜い」


そういって『H』はメスを取る。

その瞬間に目つきが変わる。

そして、あらかじめ切る場所が決まってるかのごとく綺麗になおかつ滑らかで早い。

そして、くっつける時は最近では糊?見たいなものでくっつけるらしいが、糸を華麗に使っていた。


そして、二十分ぐらいでそれが終わると、『H』はにやけて


「さ〜次はワンハッピー、君の番だ」


「はい」


俺はそういって皮膚の模型に触る。

自分の肌と変わらない。

おそらく、これに毛をつけたら分からなくなるだろう。

それくらい精巧に作られていた。

俺はメスを手に取る。

初日はとにかく持ち方をずっとやらされた、渡し方が少し違うだけで事故になりかねない。

おかげで持ち方は覚えた。

俺は『H』の見よう見まねで切り始める。

後ろで三人の鋭い視線を感じる。

少しの力で簡単に切れる。

つまり慎重にならないと本番で切りすぎたらおしまいだ。

しかし、慎重になりすぎると時間がなくなる。

なるほどこれはしんどい。

『H』と同じ事をしたはずなのに、体は汗まみれで時間もギリギリ倍かからなかったぐらいだった。

終わった後、三人の意見が飛び交う。

俺はお世話になってる百枚入りの大学ノートに全てメモする。

そして終わるころには次の日の二時、俺は寝床に着く。

不意にトイレに行きたくなったので部屋を出る。

普段は近寄らない図書の部屋から光がこぼれていた。

中をのぞくするとそこには


「・・・団、鏡介」


俺は驚きに言葉を出す。

そこには大量の紙、本そして寝ている鏡介と団だった。

一枚の紙を取るとそこには、ちょうど今日勉強した部分の資料だった。


「夜のせんべい、静かな闇だから言い響きだね」


「光」


俺の後ろには光がせんべいを咥えて立っていた。


「すごいよね、ただでさえ幸一の勉強量とスピードは半端ないのに、この果てしない資料の中から、本を選んで訳すんだからね、この人たちせんべいも食べないんだもん」


俺はこいつらに何か出来るのか?


「そりゃ夕ちゃん直すしかないでしょ。見たよ夕ちゃんの結果、ハースさんも間に合うって言ったんだよ。まっこれでも食べて頑張れ」


そういって俺は海苔せんべいを光から受け取り、何も言わずに足早に部屋を去る。

ここでなにか言ったら泣きそうな気がしたからだ。

もう泣かない、泣く時は夕がみんなと遊ぶ時だ。

俺は部屋に戻り、先ほどのメモは再び読み返してから眠る。

こんな日がしばらく続いた。


一月三十日


一週間前から夕は研究室に来ている。

タイミングは完璧といわざるをえないだろう。

夕が来てから二日後、夕は姉である朝鈴の事も忘れてしまった。

もし、来る前に朝鈴の事を忘れてしまったことを思うと怖い。

朝鈴本人は気にしない振りをしているが、実は本当に悲しんでると思う。

当然そこらへんは皆気づいているわけで、俺以外の皆がずっと一緒にいたらしい。

光がこっそり伝えてきたが大泣きしたらしい。

実際大変だったと思う。

記憶喪失で怖いのは、食事したことを忘れてまた食べたいっていったり、いつの間にか外に抜け出したり、急に声を発したり他にも語りきれないほどの苦労があると思う。

それを朝鈴は、夕が覚えているただ一人の存在として三ヶ月間ずっと世話してきたんだ。


「フフフ、ついにこの日が来たか」


「鏡介」


「ながか〜ったぞ、実にながか〜った。こんなにまじめに働いたことないから〜な、俺は今日爆睡して待って〜る。目が覚めるまでに治せよ。我が親友に不可能はない!!!」


そういって鏡介は抱きついた。

そして鏡介は耳元で「よく頑張った」と言う。


「・・・」


「団」


「・・・こんなとき難しい励ましの言葉でも掛けられたらどれだけうれしいか」


団の会話の最初の空白、俺はいつも的確な言葉を表すための時間だと思っている。

俺が団の立場でも言葉なんか見つからないだろう。

団はうつむいてただ一言、小さな声で


「・・・頑張れ」


「おう!」


俺は団の不安が少しでも振り払えるように少し大きめの声を出す。

団は俺の声に少し驚いたみたいだが、少し笑顔になっていた。


「まったく、大変だったんだからね、一人で千番以内に入るの、それに団にも会えないし」


と香だ、そう文化祭の時の校長との約束、香は一人でこれに挑んだのだ。


「これはそうだね、これからの態度で返してもらおうかな、団と幸一」


「「・・・はい」」


俺と団は同時に返事をする。


「まあ、僕がいたおかげで、全ては無事解決だよ」


「ああ、ありがとな大河」


俺は素直に思ったことを言ったのだが大河は目を見開いた。


「だめだよ。お前らは僕を馬鹿にしないと調子狂うだろ。それに俺馬鹿だからなにも出来ないし、だから笑わそうと思ってたのにそんな目で見つめないでくれ」


「まったく、俺や鏡介がお前の秘密を知らないわけないだろ、だけどそれでも言葉で伝えさせてくれよ」


かつて神童と呼ばれていた少年がいた。

『菊池 大河』

詳しくは知らない、でも人の心が読める力を持った少年、いつも馬鹿やってる俺達とふざけ合う仲間


「ありがとう大河」


「う、うるさいよ。感謝するの早いよ。全て解決した時銅像作ってもらうからな、とびきり小さいの」


なぜに銅像、俺は疑問に思う。

そして目の前には朝鈴。

朝鈴は俺を近づき、顔を俺の胸に押し付ける。


「遅い」


「本当遅いんだから、必ず戻ってくるっていて三ヶ月よ。しかもこっちから来ちゃったし、本当信じられない。本当、本当、夕治さないと一生口聞いてやらないからね」


「ああ、任せろ、お前はゆっくり休んでろ、今まで辛かっただろう」


「馬鹿じゃないの!!」


俺は朝鈴のいきなりの声に驚く。


「休めるわけないじゃない。ずっと起きてるんだから、あんた一人に辛い思いなんてさせない。絶対手術室前から放れないんだから」


「トイレはしっかりいけよ」


‘パシンッ’

見事にビンタされる。


「ワンハッピー、時間だ」


『H』に呼ばれて俺は皆に


「じゃ皆、半日後また会おう」


俺はそういって手を上げる。

皆思い思いの言葉を叫ぶ。

俺は集中か緊張か分からないけど、それらの言葉が聞えなかった。

手術の準備室に行く途中に光と会う。


「まさか、光が看護士の免許持ってたなんて・・・予測できたけど」


「ふふ、ありがと」


そう、光はハース氏にお願いして手術に参加することになった。


「だけど、心配なんだよ。ハースさんは成功率七割って言ってたけど、あれって五年再発しない確立だからね、『R』と『H』の実力は私も見たけど、私は完治する確率はいいとこ五割、手術するにはちょっと分が悪いの」


俺は光のせんべいを奪い取って、食べる。


「うん、至福だね〜。大丈夫心配すんなよ。光はそばで見てるだけでいいんだよ。」


「やっぱ、夕ちゃんが治ったら夕ちゃんと幸一を争って取ろうかな、いわゆる三角関係?」


そして一息おいた後


「「よし、行きますか」」


見事にハモる。

二人で笑う。


手術準備室に入るとそこには『H』とリンナ、そして夕が来た日に来た『R』がいた。

どうやら、元々豪邸のお世話係として働いていたが、ハース氏に引き取られたらしい。

肌の色は日本人と変わらないが、真っ赤な髪の毛がとても印象的でリンナと同じ年とは思えないほど幼い容姿をした女性である。

五歳の頃から、俺の親父も含めた人達の腕を見てきたらしく。

一週間しか見てないが、腕前は圧倒的なものを見せられた。

ちなみに、俺を見た時は思わず『F』と呼んでしまったが、それからは必要最低限のことしか話してない気がする。

俺が見る限り、ハース氏以外には慣れていないみたいであまり話している姿を見ない。


ハース氏が入ってくる。

皆の集中が更に高まる。

ハースはいきなり


「ふぁ〜」


欠伸をはじめる。

皆釣られて欠伸をする。


「皆リラックスリラックス、こういうときの緊張は良くない、それでは最終のミーティングだ」


その後様々な写真やパソコンの映像、そして細かな過程を話した後ついに始まる。

俺は消毒して、手術を始めるために着替える。


「ほら、ワンハッピー固まりすぎだ、実は本番弱いだろ」


そういって『H』は笑みを見せる。

そして、手術室の扉が開く。

リンナと光が麻酔ですでに眠っている状態で入ってくる。

夕の姿を見るのは一週間ぶりだ、しかも前回は遠目でしか見れなかった。

相変わらず綺麗だった。

呼吸器をつけて心拍数も確認、血圧は相変わらず高い。

そして、陰を出さないように、光が照る。

これはなかなかなれず、しばらくは眩しかった。

そして何より暑くなるのだ。

ハース氏は一呼吸おく。


「それでは今から高橋夕の中耳癌摘出手術を始めます。みなさんよろしくお願いします。」


「「「「「お願いします」」」」」


こうして、手術が始まった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ