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コンビニ
最寄駅に着いて、電車を降りた。
私の住んでいる所は駅から歩いて15分くらいだ。
栄えたところではない。昔は商店街があったみたいだけど、今はスーパーとコンビニくらいしかない。
お腹が空いた。彼に触られていた時から、お腹は空いていたのだけれど、緊張と感情の爆発のせいでご飯を食べるのをすっかり忘れていた。
コンビニで何か買おう。そう思って入ったコンビニには、見たくない顔があった。
急いでコンビニを出ようとするけれど、見つかってしまう。
「いらっしゃいま...あれ?首吊りじゃん」
小学校の同級生がバイトをしていた。
首吊り。
首にあざがある私につけられた、シンプルなあだ名だ。
この名前で呼ばれると、動きが止まって動悸が激しくなる。
ダメだ。動けない。嫌な思い出が私の足に楔を打つ。
「そこいると邪魔なんだけど。」
何気ない感じで私にそういうこの人は、きっと小学生の時のことなんて覚えていないんだ。
迂闊だった。やはり直接家に帰ってあるものを食べれば良かった。
「聞いてる?」
その言葉で、やっと私の足は動き出した。
小さく、すみません、と言い残して私はコンビニを出た。