2-7.姫様のチートのせいでお兄様が大変なことになっている
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『ジン、勇者様がいらした世界ってどんな世界なのかしら?』
『きっと我々の知らない道具や文化が育っている世界なのでしょうね』
明るい金髪に、サファイアのような瞳、象牙のような肌を持つ美少女と、こげ茶色の髪と瞳を持つ。端正な顔立ちをした男性が城のどこかで話している様子だ。
間違いなく、美少女はカレン様で、男性はジンである。
ジンはカレン様の話相手にもなっていたのでこうした風景はどこにでも見られた。
『とても興味があるわ』
カレンは夢見る乙女のような、キラキラとした瞳でジンを見つめた。
きっと耐性のない男性がこんな風に見つめられたらイチコロだろう。
『知らないものに興味を持つことはとても良いことです。後で勇者殿にお話しを伺ってみるとよいでしょう』
『そうじゃなくて!実際に行って、見てみたいの!!』
『姫様それは…』
『わかっているわ。でも私、勇者様のいらした世界に行ってみたいの!
ジン!何とかならない?』
『こちらへ呼ぶことはできてもあちらへ向かう魔法はまだありませんからね…』
『きっと私なら大丈夫よ!でも私がいなくなっちゃうときっと大変なことになるから後はなんとかしておいて!』
『確かに、その願いジンがかなえてみせましょう』
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カレン様はドレスを翻しながら明るい口調で確かに言った。
『あとはなんとかしておいて!』
「これは…」
「たぶん勇者召喚を行った直後だろうな。
言わずもがなではあるが、この時カレンはジンにお願いをしている。これを踏まえて次」
映像が切り替わる。
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崩壊寸前の魔王城。
戦いの後が色濃く残されている。
これは魔王を討ち取った(と思っていた)直後だ。
そこでグレンは映像を一時的に止めた。
「さて、ジン殿。これはどこかな」
「魔王城かと」
「その通り。ルチア、間違いないか?」
「えぇ。たしかにそうよ」
「ではジンよ。きみにはここからの光景は記憶にあるかな」
答えは否。だってあのときジンは気絶していたから。
でもジンは彼らに見ていた、と以前言っているのだ。
真実の紋章がある以上、嘘は言えない。
「……」
「確かに真実の紋章は口を割らせる魔法じゃないから何も言わなければ制約には違反しない」
だけれども、無言は肯定をしめす。
映像が動き出した。
映像には不健康そうな黒髪の女と、幼さの残る顔だちをした異世界からの勇者。先ほどの美少女が映っていた。
説明するまでもなく、私と、セージ、カレン様だ。
「さて、ルチア。これはおまえか?」
「えぇ。この黒髪は確かに私です」
「ジンジツよ。こちらは誰だ?」
「異世界より召喚いたしました勇者・セージ殿です」
「もう一人はカレンだな。このとき、ジンは気絶して端のほうにいる。映像を移そうか」
映像が視線を動かすように魔王城の端へ移った。
今にして思うと、この時負傷した仲間に止めを刺さないあたり、グレンのやさしさだったんだと思う。
確かにジンは愛用の弓を脇に置いて壁沿いで気絶していた。ちなみに目立った外傷はない。
ちょっとした擦り傷がある程度ではあるがとても魔王と戦ったとは思えないくらいキレイだで、満身創痍のセージや私とは雲泥の差がある。
「これ出会ったころのルチアのほうがボロボロだったよね」
グレンが私にしか聞こえない程度の小さな声でつぶやいた。
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『セージ、姫様。ここは危険です。早く…』
『ねぇ、セージ。元の世界に帰りたくない?』
『え…?』
『姫様!』
『元の世界…?』
『そう。あなたが生まれて育った世界。
あなたはもともと魔王討伐のために呼び寄せられたから魔王を倒した今、
この世界に留まる理由はないわ』
『…』
『この後、城に戻ったら魔王討伐の功績として歓待を受けるでしょう。
でもそれと同時に貴族たちの醜い争いに巻き込まれ今までのように自由に
過ごすことはできない』
『だったら元の世界に帰らないか?ってことか』
『そうよ』
『でも俺はカレンと離れたくない』
『だったら私も一緒に行くわ!』
まるで悲劇のヒロインだ。
囚われのお姫様とそれを助け出す王子様のような。
『ねぇ、ルチア。あなたならできるでしょ?』
美少女は瞳に涙をいっぱい貯めて黒髪の女に訴えた。
『え…えぇ、できるけど…』
『だったら私とセージを助けて!あなたしか頼れる人がいないの!
ジン目覚めたら絶対に行かせてくれない!!だから…!!』
『お願いだ!ルチア!』
魔女は無言で魔法を使った。
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「ほらみろ!!やはり魔女が二人を異世界に送り亡きものとした!!冤罪でもなんでもない!!」
エリオは鬼の首でも勝ち取ったように声高に言ったが次の瞬間、
「ぐはぁっ!!!」
「エリオ様!!!???」
エリオ様が首を抑えてもがきだした。
真っ青な顔をして息を切らしている。
「安心しろ、死にはしない。嘘を言うと相応の罰が下るだけだ」
「嘘!?!?」
「あぁ。ルチアにカレンにあやつられていた。だから『魔女が二人を異世界に送り亡き者にした』というのは嘘」
嘘がつけない魔法。嘘をいうと相応の罰が下るとはこういうことなのか…。
「第一、異世界に送る魔法なんてそれこそ国有魔法使いが何十人も集まって、1ヵ月くらいかけ呪文と紋章を掲げて、王家の直系2名の協力があって、神の思し召しを受けてようやく一人連れてこれるんだぞ。そんな大がかりな魔法をホイホイ使えること自体が異常だ。まず疑うはそこだろ」
実際、勇者召喚を行うときも30名以上の魔法使いが投入されたし、召喚にかけられた時間は半年にも及ぶ。
時空間を超える魔法というのはそれだけ難しいのだ。
「そして、異世界に送ったら何故死ぬんだ?」
確かに言われてみればそう。
異世界を行き来するとき、通常であれば死ぬことは無い。時空間魔法は複雑な魔法であるけれど命をかけているものではない。
ただ、死ぬとすれば原因は1つだけ…。
グレンは含みを持った視線をエリオに投げた。
正常な呼吸に戻った若い王は気まずそうに視線を外す。
「これはお手上げですよ。陛下。私から申し上げましょう」
「いや。俺はエリオに聞いている」
「差し出がましい真似をいたしました」
「かまわん」
「…勇者殿は…セージはこちらの世界に送られてきたときすでに死んでいる」
何も起こらない、ということは真実なのた。
「その通り。だから二人の肉体がなく、ルチアが異世界に送ったときすでに戻るべき場所なんてなかったんだ」
そう。行先の世界に在るべき場所がない場合、存在は抹消されるのだ。
通常はそんなことは起こらないけれど、セージの場合は特殊だった。
こちらの世界に来るとき、肉体だけを元の世界においてきて、魔王討伐のための強化体に入れられていた。
そうしないと、魔法がない環境からやってくるセージの肉体は耐えられない。
当然、強化体はこちらの世界のためのものだから元の世界には持っていけない。
元いた世界に入るとき消滅しているはず。
そして異世界へ来るという特殊自体を不都合なく埋めるために事故死した、という事実が元の世界では作られているのだ。
「姫様が愛され姫である以上、神々は別世界に自分たちの姫が行くことを許さいでしょう」
シチセキさんが言葉をつづけた。
「神々は怒って罰を与えているはずです。姫様が産まれたとき、愛され姫の研究として、に魔法使いや神官らが残しています…」
「その通り。元の世界に送った時点で二人の存在は消えてなくなっているはずだが、二人は死んでいない」




