0-1.語り部さんの回想録~今思えばアレは罠だった~
「くらえぇぇっ!!!!!」
セージは剣に魔法をまとわせ魔王に放った。
私はセージの剣の動きに合わせて思うままに魔法を撃つ。
ジンが気絶している今、回復役の姫様に戦う術はないし、セージを援護できるのは私だけなのだ。
既に消耗していた魔王はその一撃をもろに食らった。
パァァァンと硝子が割れるような鋭い音と激しい光、あとは魔王の叫び声が木霊する。
終わった。
セージの放った魔法の剣戟は魔王を貫き、魔王は叫び声をあげながら消滅した。
後に残ったのは全身の至るところに傷を負い、疲労困憊な勇者と、魔王から攻撃を食らって気絶しているジン、憔悴した私、今にも崩れ落ちそうな魔王城。
建物全体がうなり声をあげていているから早めに撤退したほうがよいだろう。
「セージ、姫様。ここは危険です。早く…」
「ねぇ、セージ。元の世界に帰りたくない?」
「え…?」
「姫様!」
この一大事になにを言い出すんだ、この姫様は。
しかし仮にも彼女がこの国ほ姫様だ。
大きな声を上げたくなるのをぐっと抑えた。
それに気を良くしたのか、姫様は話を続ける。
「元の世界…?」
「そう。あなたが生まれて育った世界。
あなたはもともと魔王討伐のために呼び寄せられたから魔王を倒した今、
この世界に留まる理由はないわ」
「…」
勇者、セージはもともとこの世界の人間ではない。魔王を倒すために異世界から呼び出されたのだ。
目的を達した今、彼がこの世界に留まる理由はないのかもしれない。
「この後、城に戻ったら魔王討伐の功績として歓待を受けるでしょう。
でもそれと同時に貴族たちの醜い争いに巻き込まれ今までのように自由に
過ごすことはできない」
「だったら元の世界に帰らないか?ってことか」
「そうよ」
「でも俺はカレンと離れたくない」
「だったら私も一緒に行くわ!」
何を言っているんだ、こいつらは。
少なくともこの時は思っていた。でも次の瞬間、
「ねぇ、ルチア。あなたならできるでしょ?」
思い出したかのように姫様は私のことをぱっちりとした大きな瞳でみつめた。
「え…えぇ、できるけど…」
「だったら私とセージを助けて!あなたしか頼れる人がいないの!
ジン目覚めたら絶対に行かせてくれない!!だから…!!」
「お願いだ!ルチア!」
今まで全く頼りにされていなかった私が二人に必死に「お願い」されている。
不思議な光景だった。
パーティの厄介扱いされていた私が。
そして気が付いたときには二人を異世界に飛ばしていた。
それが罠だと気づかないまま。




