旅、私大好きだよ!
甘い余韻に浸る午後3時。
時計が告げる音と刻は、人の談笑に混ざり合って溶けていく。
私の名前はミル。
15歳の優秀な冒険者なのだ!
ただ…今は訳あって温か〜い蜂蜜ミルクを口の中で弄びながら休憩中。
んふふ〜この何も考えない時間が幸せ。
脳内では、ミルク色のデフォルメされた可愛い蜜蜂さんが手を繋いでワルツを踊っている。
『九つの音を聴いたら、月を見よ。光灯せし虫の最期を讃えずして、何をする。私は、詩人。蛙ゲロゲロ、蛙だぞ?』
んふふ〜。やっぱり、お婆ちゃんの御伽噺は大好き!
詩人の蛙さんは特別な蛙で、虫は食べないし、あまたの固形物から水さえも飲まないの。
彼が食すのは、言の葉と、綺麗な詩。
新しい発見と、驚きこそが我の全て。
だから、旅人となってゲロゲロ生きるんだってね。
だから…
私も旅人になったんだ!
15歳の少女は、この甘い世界を求めて冒険者として命を掛けて活動しているが、実に
その冒険っぷりは見事であった!
至るものを観察し、至るものを自分で複数の解釈をする。
強さに執着こそはないが、視野の広さはプロクラスの冒険者のソレを脅かす程の神童とも噂されている。
ただ純粋に旅が好きで、好きで、大好きでしょうがなくてって感じを溢れんばかりに出していた。
そうそう、何でそんな彼女がここに居座っているかと言うと。
つい最近、ここ【ルーレッタのカフェ】で休憩していた際、大地震が起こってしまい、
ここ周辺の出入り口となる前後の洞窟が落ちてきた岩で封鎖されてしまったのだ。
さらに詳しく言うと、ここ【ルーレッタのカフェ】は、山の途中にある、言わば冒険者の中継地点であって、回復アイテムの調達、武具の整理、情報の交換場所としてとっても有益な場所であった。
つまり!帰れないのである!