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第四話

 面倒くさい話(本人にとっては)を終わらせた浩明は、職員室から出てくると、背伸びをしてから、首をごきりと鳴らして、緊張を解す。堅苦しい場所にいると自然と肩が凝る。誰しもそうである。

 さて、どうするかと右肩を回してると、背後から

「お疲れ様」と声を掛けられる。

 聞き馴れた声に振り返ると、職員室のドアの横にもたれ掛かった少女が笑みを浮かべ、携帯端末片手に軽く手を振っていた。

「おや、灯明寺」

 思わぬ所で先日、親しくなったばかりの隣人、灯明寺凪の姿に少し驚きつつ片手をあげて応じる。

「お説教は終わった?」

「まぁ、君みたいな生徒は初めてだと言われましたよ」

「あぁ、ですよね~」

 凪はにべもなく苦笑をもらす。

 入学式当日、折角だから一緒に行こうと迎えに行った凪も、英二と夕から話を聞いて同様に呆れ、件の羊羮のご相伴に預かった時には「入学式を休んで手に入れたかいがありましたねえ」と舌鼓を打っていた姿に苦笑をもらした。

「ところで、どうしてここに?」

「アンタを待ってたのよ」

 携帯端末を片付けながら浩明に近寄り胸を張って答える。

 すらりと伸びた足を覆うように黒のニーソックス。髪型は短い髪を両側で纏め、あどけなさの残る笑顔は思わず見とれてしまいそうになる。何より印象に目が行くのは、浩明から頭一つ低い小柄な身長ながらも均整の取れた体型、何より、胸を張った事により制服を押し上げるように強調された胸元は周囲の目を引く逸品。彼女曰く、「身長伸ばそうと牛乳を飲み続けてた副作用」だそうである。



 捻くれ者の浩明に臆する事無いが態度で接する凪は、最初の出会い方も斜め上だった。

 引っ越し先を探していた何度目かの訪問の時、一番のお薦めと案内された物件に不法侵入をして居眠りしていたのが灯明寺凪であった。

 彼女曰く、屋根で日向ぼっこをしていたら窓の鍵が外されたままだったのを発見し、一番日当たりの良かった部屋を拝借していたそうだ、その場に鉢合わせたのが浩明達で、起こされた時に慌てて逃げようとしたのを、浩明に取り押さえられた。

 その後、一悶着あったものの現在は星野家に良く入り浸るようになり、浩明も満更ではない対応をしている。

「待っていた?」

「校内オリエンテーション、一緒にまわろうと思って」

「それはまた、誘いは嬉しいのですが、私は普通科、君は魔術専攻科、余り効率が良くないのではないですか?」

 魔法関係の授業が大半を占める凪と、一般科目が大半を占める浩明では選択する授業も大きく違ってくる。別の学科どうしで授業見学するのは非効率的であった。

「一般科目の選択、迷ってるのが有るのよ。だから一緒に見学しましょ」

「そうですか」

 別に断る理由が無かった浩明は、凪の誘いを受けた。



 魔術専攻科の学生と普通科の学生との比率はかなり偏っている青海高校であるが、そのせいか幾つかの不文律が存在する。そのひとつが、「共有の場所を普通科の学生が殆ど使わない事」である。

 余計な騒動を起こさない為であり、普通科にとっては肩身の狭い環境となっている。

 勿論、魔術専攻科の学生、全員が全員という訳ではないが、そう言った学生も存在する訳で、いわゆる満席の食堂で、食事中の普通科の学生相手に「普通科の学生は、選ばれた魔術専攻科の学生に譲って当然だろう」と言ってくる学生が居ても可笑しくない。それも、そうする事が当然と優越感に浸り、見下すように下品な笑みで言ってくる

 しかし、そう言った理不尽を敵意とみなし、真っ向から噛み付く人間というのも存在する。

 そして、そういった人間のなかには、極稀に、そう言った人種を手玉に取って遊ぶ碌でもない人種が存在する。

 今回、理不尽を持ち掛けた相手か、運の悪い事にその遊びを心得た人種に声を掛けてしまっていた。

「おい、話を聞いているのか?」

「そちらこそ、私よりも余分に人生を生きておいて、食事中だと言うのが見て分からない程の知能指数しか持ち合わせてないのですか?」

 味噌汁を飲み終えた浩明は、そう答えた。 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 閉鎖された全寮制学校だったり、島だったり、学園都市だったりしないと、設定に無茶があるように思います。 魔法の有無で差別されるオープンな学校ってのがちょっと。 それは普通隠すものですし、…
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