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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第三章 前略旅路の上より、風来編
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第四十六話 この街大好きっ!

46.



 あぁ、森林の香りが気持ちいい。磯臭さとは大違いだ。そんな森林地帯の巨木に巣を作った俺達。枝にツタを巡らせ、絨毯のようにしてあるだけだ。雨くらいは防ぐことができる。居住性はあってないようなものだな。


「とりあえず、衣食住をそろえたいよね。衣と食は今のところは大丈夫として、住居をどうしよっか?」

 クーも、秘密基地モドキでは納得できなかったらしい。おっさんお手製なのだけどな、休憩所としてはそこそこ役立ってくれた。


「私に考えがあります! 土魔術の力をごらんにいれます! 大船に乗ってください!」

 エリーさんは言葉が少し不便なのかな? カロちゃんとは別な感じで不安定な気分になってくる。

「それにしても、モズタローの鞄は便利だな。異次元鞄か、俺も試したことがあるが、実用に足るとは思えなかったぞ。エリーも作れはするが、利用できはしなかったからな」

 そりゃ、失禁と気絶を繰り返した成果だから便利じゃなかったら悲しくなっちゃうよ。皆も練習すれば使えると思うけどね、こんなに便利なのだから誰か使いこなしている人が他に居てもいいのにな。


「タローの本質は異質さだけど、それを普段の異常さで覆い隠してる所があるからね。クーは全然気にならないけど、他の人から見たら怖いかもしれないよ」

 クーがなんだか難しいことを言いだしたな。知らん知らん、おっさんはどこであろうとおっさん流で生きて行けるからこそ、おっさんなんだよ。



 それよりも、拠点作りに移ろうか。ゆっくりカニを食べまくりたいのだ。生も良かったけど、カニは火を通した方が甘くなっておいしいからね。

 海蜘蛛だけど生で食べて見た感じ、キングクラブのようなほっこりとした栗の様な甘みが特徴の良質な食材だった。大きいから味も大味かと思ったが、繊細な味わいでおっさん大満足だ。




 崖下までやってきた。周囲は森林だが、目の前には崖が広がっている。

「掘削! 穴を掘るなら土魔術~、ネグラを作るなら土魔術~、速度は無いけど精度は高い! 土魔術! 土魔術~!」

 エリーさんが調子はずれな歌を口ずさみながら、目の前に洞穴を製作して行く。どうやら洞窟暮らしになるみたいだな。

「とりあえず、二部屋作ったのでこんなものでしょう! モズタローさん、少し離れたところにある水場で瓦礫を出していただけますか?」

 うん? いいけど、何をするつもりだろうか。


 水場の側へ移動し、俺が瓦礫の山を築くと、彼女はそれを土魔術で動かし、加工し始めた。

「ほいほい、成形!」

 しばらくすると、簡単な小屋と台所が完成した。

「こっちはダミーだ。まあ、そうは言っても、こっちで煮炊きや洗濯はする。寝床は洞窟の方だ。そうすることで、魔物やハンター、盗賊なんかの目をごまかすのさ。洞窟の方はエリーの魔術で臭い消しを含めた隠蔽ができているから、そうそう見つからないさ」

 なるほど、寝床を襲われるのが一番危険だと言う判断なのか、こちらから寝床へ移動する際には着けられない様に気をつけなくちゃな。


 俺が、タカさん達がずいぶんと手馴れていることに不思議そうな顔をしていると、

「外周街に住みつく前にはよ。こうやって、エリーと二人で生活していたことがあるのさ」

「はぁ~懐かしいですねぇ! タカさんが外周街は危ない! 危険が危ない! と一回だまされたくらいで大騒ぎして、外で暮らすことになったですよ!」

「わぁ~、タカにもそんなころがあったんだ!今は随分落ち着いてるように見えるよ~歴戦っ! て感じがでてるけど、人に歴史ありっ! だね」

「うぐっ。いいじゃねぇかよ、こうしてそれが役立っているんだ。無駄じゃなかったさ」

 そうだな。助けられた俺達からしたら万々歳だ。しかし、ずいぶん無鉄砲な若者だったのだな。どこで何の経験が役立つかわからないものだ、おっさんも色々な挑戦をしてみるべきだな。よし、今度は金属を食べよう! カニの甲羅もだ!




 住処を作ってもらう間に、採取してきた草を使ってカニ鍋を作るとしよう。カニが大きすぎるから、身だけを使う事になるな。味付けは塩だけでいいだろう。

 肉うどんの時に使ったネギの様な植物がまだあるし、これも入れよう。ちなみに、このネギの様な植物は、子どもが苦手草、という名だ。ネギが苦手な子どもは確かにいそうだな。でも、ピーマンにつけた方がしっくりきそうだ。おっさんは子どもの頃はレーズンが嫌いでした。


「カニうまー!」

「バクッバクッ! むぐむぐ、ごくごく、むしゃむしゃ」

「タカさん、がっつくのはみともないですよ! ゆっくり食べてください」

 あ、エリーさんは普通の食事は食べないのだったな。特に用意しなかったけどよかったのだろうか。

「心配ご無用です! こうなれば一蓮托生です! 私が食べる物もお教えしましょう」

 いや、別に知りたくない。黒棺を持ってきて料理と言い放つ女の主食など知りたくもない。やめろ! その子袋からなにを取りだすつもりだ!

「そんな別にやばいものを食う分けじゃない。ただ、人と少し違うだけだ」

 あ、そうなの? じゃあいいか。何食べているの?

 

 エリーさんが食べていたものは、魔石、だった。魔物から取り出した魔石をボリボリとおいしそうに齧っている。

「私は魔石を食べることによって魔素を補給します。そうすることによって命を保っているのです!」

 そうなんだ。偏食家なんだね。そんなドヤ顔されても困っちゃうな。

「……そんだけか?」

 えっ? 何? 笑うところでもあった? クーはわかった? 俺には笑いどころがわからなかったよ。


「二人とも、タローはね。魔石だろうが、土だろうが、毒砂ネズミの毒袋だろうが、何でも食べちゃうの。魔石を食べるくらいで偉そうにしていたら、タローにはついていけないよ」

 そうそう。俺も魔石を食べた事あるよ。石だね。おいしくはないかな。土より味がしないし。

 何その顔? 何かおかしいの? 笑うとこあった? わからないな。


「上には上がいるものです・・・、負けました・・・。私の完敗です・・・」

 なんだろう、いつのまにかエリーさんに勝利してしまったようだ。

「毒砂ネズミの毒袋だと!? あの毒は触れただけでやばい毒だぞ!! エリーですら危険な毒なんだが、それを食うのか? え、まじか。その顔は本当だな・・・世の中広いな」

 そうだよ、だから魔石を食べるくらいで偉そうな顔しないでね! プンプンッ! 

 それにエリーさん、別に魔石だけ食べる必要もないでしょ? ゲテモノ食いの俺の勘がそう囁くよ! 普通の食事だって食べられるのだから、俺のカニ鍋もお上がりよ!


「え!? そ、それはそうですが。いいんでしょうか? 私などが人様と同じものをいただいてしまっても・・・」

「なに? エリー! お前、普通の飯も食えたのか!!」

「あ、えっと、その・・・はい、そうです」

 あれ、なんだろう。二人に爆弾発言を投下してしまったかな。まあ、それは二人に任せてカニ鍋を食べ続けよう。んー、鍋物って簡単だからおっさんにおいしく作れて最高だな。カレーもルゥが無ければ作れない俺にとって最後の砦、それこそ鍋! 大学時代は毎日鍋を食べていた時期もあったな。白菜が大きいのよね。ニンジンとかキャベツを食べきろうと思うと鍋になっちゃうのさ。


 この後、なぜかエリーさんが泣き出すなどの出来事があったが、滞りなく食事も終わり、現状の確認と今後についての話をすることにした。昨晩はゆっくりできなかったからな、落ちついた今こそ話し合うべきだろう。



「結局は、都市内は外周街が力を持ちすぎるのを怖がってるのさ。それが現状を招いたと言ってもいい」

 タカさんはそんなことを話し始めた。現在、マッドスキッパーには三つの思惑が渦巻いているらしい。


 一つは、都市内の王族以外の支配者層の思惑だ。彼らは外周街が力を持ち、力関係が逆転することを恐れているらしい。そのため、外周街の力を削ぐことに必死なのだそうだ。


 二つ目は、外周街の支配層だ。外周街で支配力を高めること、そのためには、財力、武力、その他多くの力を欲しがっているらしい。ここは四地区それぞれの支配組織の思惑も絡んでくるから目的を一つに絞ることは難しい。

 外周街を単純に拡大させていきたいもの、他の地区を出し抜きたいもの、都市内の連中に取って代わりたもの、と様々だ。


 三つ目が、外周街と都市内ともに権力の座から離れている者たちだ。今までは不満のはけ口を求めても、まとめ役が居らず、犯罪行為や盗賊へと成り下がる結果に終わっていた。しかし、北地区の抗争を見る限り、統括者が現れ組織だって動くようになったようだ。

 あくまで従来までの常識や慣習に沿って動く前者達とは、比較にならないほど過激な手段に訴えてくるそうだ。正直な話、こいつらが一番危険な存在だと思うが、今の俺達の立場であれば仲良くできそうだ。嫌だけど。



 俺達が、遠征狩猟で死地に置かれたのは、どのような思惑が絡んでいるのだろうか。都市部からの工作の可能性も浮上したな。一番力を持っていた南区の力を削ぐ事と、南区の上と下を仲たがいさせること、一番得をするのは都市内の勢力だろう。

 しかし、都市の防衛という観点から見ると、戦力を捨てる様なものだ。どの勢力であっても得をすることもあれば、損をする点も考えられるな。判断が難しいところだな。ゼンリを捕まえて吐かせてみたところで、表面の真実しか見えない可能性が高いか。どうしたものだか。


「王族は王族で大変なのです。彼らは『オネ』を動かす才能を持つか否かが全てです。その力を持つ者だけが王族であり、それ以外のものは放逐されます。都市に住む者達がどうなろうとも、彼らには興味がありません。古き時より、都市の機能を保つことだけが彼らの役目であり、存在意義としている方々ですから……」

 マッドスキッパーの王族とやらは随分と俗世を離れた連中なのだな、戒律を優先して生活する修行僧みたいだ。王様という奴はそんなものかも知れないな。都市において絶対の力を持つであろうもの達が政治に関わらないことで、王族同士の殺し合いを予防しているのかもしれないな。血筋が絶えるのが最悪と言えばそうだろう。


 しかし、マッドスキッパーの都市管理装置は『オネ』というのか、ミズーリの物は名前を聞いたことがなかったな。機密だったりするのかな。

 まあ、都市内部がもっと大きければ問題は起きなかったのだろうが、人口が増加して行く限り、遅かれ早かれ起こった問題だ。現在再現することができない技術に頼りきりというのはなんとも心もとない話だな。



「うー、どうすればいいのかぜんっぜん、わかんないよ!」

 確かに。俺達数人で何かをしたところで、対極に影響を与えることなど不可能ではなかろうか。別に影響を与えたいわけではないけど、嵌められたからお礼はしておきたいかな。それか尻捲くって逃げよう。


「う~ん、そうだ! 今は秋でお米の収穫直前です! 全ての水田を灰燼に帰すなんてどうですか! そうすれば勢力争いなんてやってられないです!!」

 タカさん・・・・。この娘さんはやばくない? 発想が恐ろしすぎるのだけれど。勢力争いはなくなっても、その後に餓鬼地獄が広がるよ! というか、お百姓さんが必死に作ったお米をなんだと思っているんだよ! 収穫前で盗まれるのならともかく、火を放たれるとか最悪じゃん!! 努力が全部水の泡だよ!! いや灰だよ!!!

「エリー、さすがにそれは引く」

「クーもちょっと軽蔑しちゃうかも」

 よかった二人はまともだね。盗賊も自分が奪って食べるだろう物を根こそぎ焼却するなんてことはしないよね。それは敵国の軍人がやる策だよ。もしくは焦土作戦だな。あの作戦は、頭がおかしいけどあきれるほど有効な戦術で笑っちゃうよ!



 とりあえず、事態が動くのを静観することにした。マッドスキッパーでなんらかの動きがあればわかるように偵察は頻繁にしておこう。それ以外は普通に野外生活を楽しむことにしよう。

 秘密基地作りみたいで楽しい! 土魔術とは格も便利なものだったのか!これはいいぞ~、世界中がおもちゃ箱みたいなものだな。でも、攻撃能力は皆無に近いみたい、落とし穴などの罠の用意くらいならできるそうだ。基本的に、遅い、そして消耗もそれなりに大きい魔術みたいだ。




 次回、おっさん、野外生活始めました。旅とは違った趣が合っていいね。


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