第壱話 流されて異世界・・・用水路だけど
1.
「なにこれ~?」
抜けるような青空、燦々と降りしきる太陽、広がる畑、遠くには中世~近代的なヨーロッパ的城壁が見える。俺はというと鋤を手にして畑?に立っている。ぶっちゃけよくわからないが、周辺には俺と同じような格好で畑を耕している連中がいる。
「はは~ん、これは続に言う異世界転生した主人公が記憶を取り戻したという状況ですね!!」
ひとりで納得していると、
「レン、どした~」
横の男が声をかけてきた。
「うべぇあ! ……なんでもないあるよ!」
思わず妙な言葉になってしまったが、どうやら言葉が通じているようだ。
「いつもどおり、変な奴だな」
と相手は納得して作業に戻る。
おっと、俺もこうしてはいられない不測の事態に巻き込まれた時は、冷静になること目立たないことが大事だ。考え事はこの畑?地面?を穿り返しながらでもできるだろう。ていうか、いつもどおり変っていったいどういう意味だよ。
そんなことを考えていると、これまで過ごしてきたであろう出来事が走馬灯のように頭の中に流れ込んできた。ふむふむ、初めての記憶は二歳くらいと思われる、孤児院で革製の靴をしゃぶっているときだ。それからの記憶は・・・孤児院で勉強している、孤児院で飯の支度をしている、孤児院のガキどもで遊んでいる、孤児院の掃除をしている、孤児院のむかつくおっさん(神父?)にゴキブリの素揚げをごちそうしているなどなど。嫌な子供ですね。
どうやら生まれも育ちも最底辺のようだな。記憶にある俺はまじめに作業をしながら奇行に走り、ちょっかいを出されれば陰湿な仕返し(悪戯?)を行うやつらしい。
特に親しい友人なし、頼れる大人なし、金なし、技術なし、ないない尽くしで悲しいなぁ。まあいい、これから挽回していけばいいよね、挽回できるよね?
ギラギラ照りつける太陽のした、そんなことを考えていた。
ここで俺の個人情報を公開しよう。転生前の名前は御堂 廉太郎、職業は兼業農家。独身、趣味は動画鑑賞(アニメだけじゃないんだからね!)、年齢はおっさんとだけ言っておこう。
死因は台風の日に、ちょっと田んぼみてくる、である。まあ、農業は家族でやっていたし、仕事の方もアルバイトみたいなものだったから、突然いなくなっても経済的損失はほとんどないかな~。
今生での名前はレン、職業は孤児、年齢は十歳らしい。意外なことにある程度の読み書きはできるらしい。
記憶にあるから分かってはいたが、この世界の子供ってやべぇ(孤児だからか?)、と思うほど重労働な作業を終えて孤児院に帰ってきた。風呂に入りたいがないのは分かっているので、水瓶から柄杓でタライに水を汲み、濡らした手拭いで体を拭いた。
夕飯は異世界テンプレなコミスブロートを思わせる黒パン一切れに、小鉢一杯分ほどの塩野菜スープ。そしてなんと肉が大量に並んでいる!!かなり杜撰に焼いてあるが香り漂っている。
訂正しようか、青臭えぇぇぇぇっぇぇおっええっぇえぇええぇ!!??なに、これなに?真夏にトマト栽培しているビニールハウスに入った時の様な匂いがするよ!飯を食いたくなる匂いじゃないよ!いや、飯の臭いですらねぇぞこれ!!あ、記憶が言っているよ!これが主食なのだって!!
どうやらこれは異世界定番の『ゴブリン』の肉らしい。なんでも都市の周辺には多種多量な魔物がいるらしく、そのお肉が生活を支えているってさ。
恐る恐るゴブリン肉の焼肉を口に運んでみる。うわぁ、ねっちょりとした歯触りの後に訪れる雑草を口にぶち込んだような香り、あぁ、少し甘い、しかも蜂蜜のエグい部分だけを取り出したような甘さだ。
結論、食えたものじゃない。しかし、腹ペコなのだ。現代日本にいたころは感じたことが無いほど腹がペコちゃんなのだ。がっついたね、周りの子もそうしている通り、味など感じる暇がないほどに口に詰め込み、咀嚼し、垂下してやったね。
腹が膨れたところに口臭を洗い流す件、デザートとして黒パンとスープを流し込んで夕飯は終了となった。心が折れそうだ。
夜就寝の時間となり、男子だけ八人も詰め込まれた六畳ほどの板張りの部屋で、自分の記憶にあることを思い出し、理解しようと努める。
そうすると思いのほか色々な情報を得ることができた。それらの情報をまとめると以下のようになる。
・現在地はオスアナア大陸北部の『ミズーリ』という都市らしい
・ミズーリの特色は豊かな水源を生かした農業である
・今いる施設は『ミズーリ北部3層公共孤児院』という名前である
・オスアナア大陸には他にも都市が存在していて、それぞれが自治を行っている
・世界には魔物が存在していて人類の生存圏はかなり狭い
・1日はおそらく24時間くらい、1週間は7日、12カ月、1年は364日だ
・15歳から成人となり、毎年税金を納めることになる
・魔力は誰しもが保有しているが魔法を使える人は限られる
・12歳になったら全員学校へ通うことになる!
・自分の能力を明文化する方法が存在する!?
おおう、異世界は自分の能力が相対的にわかるのですね。どうやら、神殿と呼ばれる施設で自分のステータスを文書化してくれるらしい。
孤児院では新年に神官が訪れて孤児たちの能力を見てくれているようだ。残念なことに自分のステータスははっきりと覚えていなかった。おぼろげに周りの孤児たちと変わらなかったってことくらいだ。
あと学校のことも気になるが、それ以上の知識を持っていないな。その他にも生活に必要なことなど様々な情報を得ることができたので今日のところは良しとするか。
皮の様なものを被り眠りに就くことにする。
おやすみなさい。
初めての投稿です。
稚拙な物語ですが、よろしくお願いします。
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