3-10 急げ!!
勇斗は一旦サラの家寄って、自転車に乗って学校を目指した。
このあたりには魔物が出現しなかったのか、魔物の姿が見当たらなければ、大地が損傷している様子も見当たらない。
「みんな大丈夫だよな」
自転車に跨り、勇斗が今まで出した自転車最高速度を超えて学校へ向かった。
地面がデコボコだろうが、その程度、今の勇斗の障害にはならない。
通りを進んでいると、背の高い男とすれ違った。一瞬魔物かと見間違えるほどに逞しい背丈の男だったが、よく見ると普通の人間だった。
というか、その男の正体はバジルだった。
「バジル! とりあえず乗れ! 学校行くぞ!」
「勇斗どうしてここに――いや、そんなことはどうでもいいな」
とりあえず今やるべきことは、事情を把握することよりも、一刻も早く学校へと向かうことだ。バジルもそのことがわかっているようで、これ以上言葉を挟んでくることもなく、勇斗の後ろに乗った。
(二人乗りは危険だけど、緊急事態なんだから許してくれよな……)
見えない誰かに謝罪の言葉を述べた勇斗は、後ろにバジルを乗っけたまま学校を目指した。当然、そのせいで少しスピードが落ちてしまったが、それでも全力でペダルを回して目的地へと進んだ。
自転車を漕いでいる最中に、勇斗の背中にしがみつ居ているバジルが、ある程度の状況を説明してくれた。
「村の中が魔物で溢れてるんだ。はっきりいってかなりやばい状況かもしれない」
「村の中に逃げ遅れてる人とかは、いないのか?」
「俺が村ん中駆け回ってきたから、それは大丈夫なはずだ」
さっきから時々、視界の隅で魔物の姿がちらほらと見受けられるが、わざわざ構っている暇はないということで、スルーして進んでいる。
「そうか。だったら、さっさと学校に向かって、そこにいる人たちを守るぞ」
肩越しにバジルへと告げると、バジルはいつもよりもさらに真剣な表情を作って頷いた。
――太陽は、ちょうどてっぺんを通過しようとしていた。