3-4 次の日
翌日、勇斗はバジルとともに村のパトロールを始めた。
パトロールといっても一日中、村をうろうろしているわけではない。パトロール自体はの時間を使って、村を一通り回って終わりである。
その最中、偶然配達途中のリンカとすれ違った。彼女はこちらの姿を認識すると、無表情で勇斗を一瞥し、リアカーを引っ張って行ってしまった。
昨日と違って、いきなり罵倒されることはなかったが、彼女の視線から発せられる敵意は昨日と同じくらいはっきりと感じた。
バジルはそんんあ幼馴染の姿を寂しそうに眺めていた。
「昨日、あの後リンカと少し話をしたんだ。昨日胸倉掴んだことは、悪いと思っているみたいだ。もう少し時間をやってくれ。あいつにとって、町を滅ぼした迷い人への憎しみが強すぎて、迷い人という存在に対する気持ちの整理が出来ていないだけなんだ。そのうち、おまえのことを『迷い人の勇斗』じゃなくて、『友人の勇斗』という目で見られるようになるはずさ」
「ま、俺は気長に待ってるさ。だから、バジルもあんまり気を詰めるなよ」
「ああ、わりいな」
午後からは、空き地などの広い空間を見つけて、剣術の稽古に励んだ。
バジルにボコボコにされながらも、勇斗は自分が力を付けていっている手応えをしっかりと感じ取っていた。