3-3 近寄る影
事情を話し終えたバジルは、三人に見送られてサラの家を後にした。
そのころには、空はすっかり真っ暗になっており、夜空では月が輝いている。
少し考えごとをしながら家の前の通りを歩いていると、闇の中から何者かに話しかけられた。
「こんばんは、バジルさん」
一瞬、何もないところから急に話しかけられたと錯覚したバジルは、少しギョッとしながら振り返ったが、相手の姿を確認して警戒を解く。
その男は全身が黒い法衣で包まれていたため、真っ暗な闇の中で顔だけが浮いているように見えないこともない。ただでさえ底が見なくて不気味な印象の男なのに、輪をかけて奇妙な雰囲気を身に纏っているように見えた。
「リヒトさん、こんばんは。どうしたんですか? こんなところで」
「魔物が出たそうですね」
バジルの挨拶に答えることもなく、リヒトはいつも通りの表情を浮かべて本題を切り出してきた。
「はい、そうです。でも、自分たちがやっつけたんで安心してください。それよりも、結界は大丈夫なんですか?」
「はい。問題なく稼働しているはずなんです。そういうわけですので、本来ならば魔物が外から入ってくることは有り得ないはずです。が、もしかしたら今後もまた現れる可能性がありますので、その時は対処をお願いします」
「はい。俺はそのためにいるんですから。剣を振らせていただきますよ」
バジルの言葉にリヒトが満足そうに頷くと、彼は再び暗闇の中に姿を消した。