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3-1 陰から覗く影
リンカ・エンカルシオンが日野勇斗の胸ぐらを掴んで喚いていたとき、何者かが、そのやりとりを木の陰からのぞき込んでいた
「また魔物が現れてしまいましたか。やはり異常異常事態ですね。二回もとなると、さすがに偶然では済まされない。考えられる原因はいくつかありますが、目に見える大きな原因は――」
すうーっと息を吐き出し、何かを決意したように表情を引き締める。
「迷い人という存在。彼という存在が、この村に悪しき力を呼び寄せているのでしょう。たとえ、彼に自覚があろうとなかろうと、この事実が覆らない」
自分のなかで 納得できる答えを呟いて、立ち尽くしている勇斗へと目を向ける。
「確かにあなたは、村を救うために魔物をやっつけてくれました。そんなあなたを、ここでいきなりたたき伏せるほど、私の性根は腐っていません。ですが、もう時間があまりないかもしれません。いえ、迷い人が来た時から時間なんてないのかもしれないですね」
覚悟を決めるようにそう呟き、衣をはためかせてその場を後にした。