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迷い人  作者: ぴえ~る
第二章 不吉な予兆
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2-7 お昼休みが終わって

 結局、箱に詰められていた大量の肉たちは、三人の胃袋の中に収められたのだった。

 勇斗のお腹は途中で悲鳴を上げていたが、それでもリンカやセラピアが勇斗の食べっぷりに喜んでくれていたので、その期待に応えないといけないという使命感から、止め時がわからず、結局完食するに至ったのだった。

 素晴らしい食べっぷりを披露した勇斗を、セラピアは笑顔で見送ってくれた。

 荷物がなくなったリアカーを、帰り道はリンカが引っ張っている。

 勇斗はというと、昼食をリバースさせないように、ゆっくりと胃の中身を消化させながら、リンカの横に並んで歩いていた。

「うぷっ、ちょっと食いすぎたかも……」

 このとき、ロッドにごちそうになったシチューのことを思い出していた勇斗は、同時にあの日、森の中で見かけた彼女の無残な姿を思い出していた。

 そのときの彼女の姿を鮮明に思い出そうとすると、それこそ昼食をすべて吐き出してしまいそうだったので、できるだけ記憶を曖昧にして思い出す。

(そういえば、今朝、アイナさんにこの話をするのを忘れてたな……ロッドさん、どうなったのだろうか……)

 どうなったも何も、首を切断されていたのだから、勇斗が見た光景が幻だったとかじゃない限りは、ロッドはすでにこの世にはいない。

 リザードマンとの戦闘の話についてばかり質問されていたので、その前に起きた出来事に関して、アイナに報告するのをすっかり忘れていた。

 横を歩いているリンカに、ロッドについて何か知っていることはないかと聞いてみようと思ったが、すぐに思い留まる。

 先日、森の中に現れた、リザードマンという魔物が現れた。アイナの反応を見る限りは、魔物が現れたこと自体、かなり異常なことらしい。

 しかし、勇斗の噂がすでに流れていたり、情報の伝達が早いレールの村において、魔物騒動の話が流れていないということは、アイナ、あるいはリヒトが村の人を怖がらせないように、魔物が出たことを知らせないように配慮してるかもしれない。ならば、勇斗の口からそれに関連の話題を出すことは避けるべきだろう。

「いやあ、勇斗君の食べっぷりはよかったねえ。バジルなんて、図体だけは無駄にでかいくせに、なぜか小食なんだよね。ったく、どうやってあんなに大きくなったんだが……」

 軽くなったリアカーを引っ張りながら、隣のリンカがぼやいた。

 リンカも勇斗ほどではないとはいえ、あまり大きくない体に、かなりの量の肉を詰め込んでいた。

 勇斗が知っている同年代の女の子は、何かと小食アピールしたがるが、リンカは自分が食べた量を気にするそぶりを見せず、肉にかぶりついていた。

「私は腹八分でやめといたけどね。っていうか、勇斗くんが凄い勢いで、食べちゃうから、お肉がなくなっちゃったしさ」

「――えっ!」

 勇斗は驚愕に目を白黒とさせた。

 リンカが残りの二分を腹に入れていたと仮定すると、勇斗が食した量を超えていた可能性すらある。

 食うことも練習だけ言いつけられて、それなりに大食いだと自負していた勇斗も、彼女の言動には、顔を青くする他なかった。

(っていうか、それだったら、俺が無理して食う必要なんかなかったんじゃ……)

 空気を読もうと空回りしてしまった勇斗は、自分の道化師ぶりに呆れる他なかった。


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