1-16 満身創痍
ドスンッ! っと、勇斗が地面に転がる。
これで何度目だろうか。
全身が土まみれになりながらも、勇斗は震える足を押さえつけて起き上がる。
すかさずリザードマンが勇斗との距離を詰めて、口から吐き出す炎と棍棒のコンビネーションを勇斗に浴びせる。
何度も同じような映像が繰り返し流れていた。それでも、勇斗は殴られても起き上がり、また殴られるては起き上がる。
意識が遠くなりながらも、決して倒れ込みはしなかった。自分が今何をしているのかもわからなく鳴りつつあるが、それでも使命感に駆られて立ち上がった。
「はあ、はあ、うっ――!!」
虚ろな目でリザードマンを睨んでいた勇斗は、口から血を吐き出した。
鼻の骨はとっくに折れており、鼻血がダラダラと流れている。
右腕はだらんと力なくぶら下がっているだけで、左手一本で金属バットを握りしめている。
額から血が流れた血が、右目へと浸食してきたせいで、右目に映るものはすべてが真っ赤に染まっている。
――頭がぼーっとする。
重い疲労感が全身を支配し、自分の体が別物になってしまったかのように自由に動かせなくなっている。
「キシャシャ! これで終わりだ!」
甲高い声で叫んだリザードマンは、勇斗の脳天目がけて、大きな棍棒を振り下ろした。
それでも勇斗は必死に歯を食いしばって、攻撃を防ぐためにバットを掲げようとする。
(あっ、間に合わない……)
他人事のように、漠然と死の予感を覚えた勇斗。
「―――――」
――この瞬間、勇斗の周りの風景がスローモーションになった。
勇斗の視界に映るリザードマンの動きもゆっくりになり、ハエさえも止まってしまいそうなスピードで振り下ろされる棍棒の動きなんかはかなりシュールに見えた。
(これは……)
かつて、勇斗はこの感覚と同じものを味わった覚えがある。
あれは確か、中学のころだったろうか。