魔力と少年
次の日の放課後
命の危険を感じていた青はきちんと魔法撲滅部の部室に、志英瑠よりも早く足を運んでいた。彼女の居ない部室は、春風が心地よく入ってくる、平和な空間となっている。
「まるで…あの時みたいだ…」
青がそう呟いてすぐ、その平和な空間は、何故か白衣を着た志英瑠の入室により壊された。
「…なんですか、その服装」
青の呆れるように呟いた言葉を志英瑠はスルーし、白衣のポケットから手のひらほどのサイズの白い箱をとりだした。
そして昨日と同じように青を真っ直ぐに指差し、自信満々に告げた。
「あんたにはこれから魔力をどれだけ持っているか、この『魔力の量がわかっちゃうんですくん』で、検査するわよ!!」
そこまで言うと志英瑠はドヤ顔で青に近づいた。
「魔力の量がわかっちゃうんですくんって…なんか…あれですね、」
「うるさい!!早くこの箱に手を乗せて!」
志英瑠の迫るような口ぶりに、青は渋々手を乗せた。
「そしたら、目をつぶって手に力を集中させて」
唐突に冷静な言動になった志英瑠に少し動揺しつつ、青は言われた通りにした。
次の瞬間
白い箱は破け、中から小さな赤く輝く宝石のようなものがでてきた。それから少し遅れて、青の体は急に、何キロも走ったような疲労感に襲われ、青はその場に座り込んだ。
「…凄い…」
そんな青のことは一切気にせず志英瑠は箱からでてきた赤い宝石に見入っていた。
「あの…これ…は?」
青は乱れた呼吸を整えつつ志英瑠に問う。
「この白い箱は、人間が多かれ少なかれ誰でも持っている魔力を解放する仕掛けになっていて、魔力が送られると箱は破れ、中からその人の魔力の量が色によってわかる宝石が入っているの」
青はその説明を聞き、尚、志英瑠が見つめ続けている赤い宝石を志英瑠同様見つめた。
「赤は…《サタナ》 」
その志英瑠の言葉に青は目を見開いた。それと同時に、青の頭の中に懐かしい光景が現れる。
「青、ごめんね」
「…なんで…やめてよ…ねぇ!!」
「青は逃げて、あなたの力はまだばれていない、だから早く!!」
「無理だよ…×××…」
「早く行きなさい!!《サタナ狩り》に見つかる前…に…」
「サタナ狩り?なんのこと?ねぇ、×××…?ねぇってば…嘘だ…嘘だぁぁぁ!!!!」
青の脳内に幼い青の絶叫が響き渡る。
「どうしたの?青」
志英瑠の不思議がるような言葉を聞く前に青は、自分の体を疲労感に委ね、ゆっくり意識を手放していた。
「対象ガ《サタナ》二目覚メタ事ヲ確認。作戦ヲ実行、モウ一人モ捕獲スルカ 応答ヲ」
「二兎追うものは一兎をも得ず という言葉が日本にはあります。上物を狙う方が良いでしょう 作戦は失敗のないように」
「了解シマシタ」
志英瑠って某黒い羊のお話とめっちゃ被ってますねすみません。