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先輩と少年


魔法とはフィーリングです!!

そう!フィーリング!!

だから、難しく考えることなんてないのです!!

感じるのです!!大地の力を!エネルギーを!!

信じるのです!!自分が思いを込めた物語を!!

全てはフィーリング!!自分の感覚!!

自分ができると思えばなんだってできる!!あなたなら必ずできる!!

ね!難しくないでしょう??


「いや、難しい。」


『猿でもわかる魔法の初歩』1ページ。はじめに、の部分を1時間かけて翻訳した青は、その内容のアホらしさに呆れていた。


「全てがフィーリングなら、こんな参考書いらないだろ…」


青は腰掛けているパイプ椅子を座り直すと、参考書の本文から、翻訳した文が書かれた自身のノートに目線を移す。

決して、発見がなかった訳ではない。


『信じるのです!!自分が思いを込めた物語を!!』


の部分。

パッと見、自分の人生を物語に例えるような、所謂中学2年生的文章かと思われるが、青には思い当たる節があった。


『カラマーゾフの煙草』


昨日、サタナ狩りと戦う際に志英瑠が使った魔法だ。

このカラマーゾフというのは、言わずもがな『カラマーゾフの兄弟』のカラマーゾフだろう。

この参考書の言う『思いを込めた物語』とは、彼女の場合『カラマーゾフの兄弟』ということ。

そしてきっとそれは、彼女の魔道書である。


「思いを込めた…」


青は、小さく呟いた。

彼女は一体、カラマーゾフの兄弟という物語に何の思いを込めたのだろうか…







そう考えていた時だった。


「おぉ〜!!君が新しいサタナか!!」


いつの間にか開いていた教室の扉から、1人の、大人しく優しそうな雰囲気の男子生徒が青に声をかけてくる。

青は全く察せなかった彼の存在に身構えることもできず、ただ急に現れた彼を見つめ、そして気がついた。


「…生徒…会長さん?」


「ご名答!よくわかったね…って入学式で知っているか」


彼はそういうと、青のもとに駆け寄ってきて握手を求めた。


「改めまして、僕の名前は終 ルチアーノ。皆んなからは大体ルカって呼ばれるかな?よろしくね。須賀崎くん」


彼の笑顔に圧倒され、青は渋々その手を取った。


さっきの発言からどうやら、この人は魔法やらサタナやらに通じている類の人間らしい。というのがわかる。

青がサタナであることを知っていることが、何よりの証拠だ。

しかし問題は、


それをどこで知ったか、だ。


「…きっと君は今、僕がサタナ狩りなんじゃないかと疑っている。」


唐突に青を指さし、青の思っていることをズバリと当てた彼に、青は動揺しつつも身構える。


「結論から言って僕はサタナ狩りじゃない。君のお師匠であらせられる甘木の仲間の魔法使いだよ。サタナではないけど。

君の事は甘木から報告を受けて知ったんだ。」


ルカはそう言うと、ブラウスで装飾部分が隠れていたネックレスを外し、青に見せる。


それは、綺麗な緑色の宝石のネックレスだった。


…しかし、これは普通のものではない。


青はその宝石から、微々たるものではあったが力を感じていた。


「これは…」


青が小さく問うと、ルカは微笑み答える。


「君が昨日、魔力を解放してぶっ倒れたという宝石と同じ種類の物だよ。僕のは緑色。サタナよりも魔力量はずっと下。普通って感じかな〜。」


そう言うとルカは再びネックレスを付け、青の隣のパイプ椅子に腰かけた。


「いきなりだが須賀崎くん。この国には、一体何人ものサタナが居ると思う?」


ルカの唐突な質問に、青は少し反応が遅れたが、間をおき、100人くらい?と自信なさげに適当な数字を挙げる。

それを聞いて、ルカはやはりというような表情を見せた。


「実はこの国のサタナは、甘木と須賀崎くん。君達2人しかいないんだ。」


「…え?」


思っていたよりもずっと少ない人間に、青は思わず大きな声を出す。

ルカはそんな青を見て、一呼吸おいてから話を続けた。


「世界中に現役サタナは君達を含めて15人居る。彼らは皆、魔王となるためにね、


潰し合っているんだ。」


ルカは、少し言葉を溜めながら、それでいて調子は変えずに淡々と言う。


「潰し…合う。」


青は小さく彼の言葉を繰り返した。


「…敵は、サタナ狩りだけじゃない。という事ですか。」


青はルカを見つめ問う。

青の心拍数は少し上がっていた。


「それどころか、普通の魔法使いを襲うこともよくあるサタナ狩りと比べれば、サタナの方が危険と言えるかもしれないよ。気をつけて。」


ルカはそう言って小さく微笑む。


このルカの言葉が、魔法使いの世界、自分が今から踏み込む領域の重さとして青の心にのしかかる。


ルカはそんな青の様子を見て、優しく笑った。


「とりあえず本題に入ろうかな。

僕は甘木から君に魔法の色々な事を教えてやってくれと言われているんだ。

と言っても、魔法の用語説明みたいなものだけどね。」


ルカはそう言いながら青の前に立った。

青も、それに同調するように背筋を伸ばす。


「さてさて、やはり君に一番教えなくちゃいけないのはサタナについてだろうけど…



その前にしなくちゃいけない事があるみたいだね。」


ルカはそう言うと、青の肩を掴んで、教室の扉へと強く突き飛ばし、彼を庇うように扉の反対側の窓を向いた。

直後、窓が勢いよく割れ、外から昨日見たものと似たロボット、つまり


サタナ狩り


が浸入してくる。


「せっ先輩…!」


動揺した青はルカに呼びかける。

すると、ルカは青の方を向いてにっこりと笑い、こう言った。


「大丈夫。






ーー5秒で済むから」


そう彼が言った次の瞬間。


サタナ狩りは、無数のツタで全身を覆われたかと思うと、全身をきつく締められ変形し、3秒もしないうちに、直径2cm程の丸い鉄球と化したのだ。



青は暫くの間動揺していた。


今の無数のツタは、きっとルカが出した物だ。


昨日、志英瑠は今と同じようなサタナ狩りに手こずっていたというのに…




…この人はきっと、とても強い。




青は、彼に少しばかりの恐怖心を持った。


「大丈夫かい?須賀崎くん。少し手荒な真似をしてしまって申し訳ない。」


その言葉を聞いて青が我に帰ると、ルカが目の前に立ち、青に手を差し伸べていた。

青はすぐに手を取り立ち上がって、ありがとうございますとお辞儀をする。

それにルカは、どうってことないよという様に笑うと、再び椅子に腰掛けた。


「…あの、」


青は、その場に立ったままで口を開いた。


「ん?なんだい?」


「あ…いえ、何でもないです。すみません」


青は、混乱していた。


もしかすると、強い弱いの関係は、魔力の量に関係ないのかもしれない。いや、そうなのだろう。

…だとすると。


(強くなるかは…志英瑠先輩が、魔法使いを辞められるかは…)


自分次第、なのだろう。

久しぶり過ぎて引くレベルです!!!

でもまだ終わらないんだなぁ…

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