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魔法と少年

魔法使いが存在する。


それは、彼『須賀崎 青』にとっては一般常識であった。

あくまで青にとっては だけれども。

その理由はおいおい語られるとして、

そんな普通の人には存在しない常識を、自分の頭の中の辞書に堂々と記載させている彼にとって、

『魔法撲滅部』なんていうお粗末な名称の部活動が入学した高校に存在していたとしても、驚くことも呆れることもなく、ただ面白そうだと思う程度なのである。

そんな『須賀崎 青』の価値観を晒すと、彼はどれほどファンシーで壊れている脳みそを持っているのかと思うかも知れない。

けれども仕方ない。

何故なら 『魔法使いは存在するのだから』




桜の花が夕陽に照らされ、赤く燃えるような晴れた日の夕方4時半。

『須賀崎 青』はいつも通りの少し気怠けな足取りで理科準備室、もとい『魔法撲滅部』の部室へと、旧校舎らしいレトロな雰囲気の廊下を気にしつつ向かっていた。

一つ述べておくが、彼は魔法使いを信じてしまう程の純粋無垢で素直な少年ではない。

むしろ現実的な、さとり世代と呼ばれるような少年だ。

でも、そんな彼の特徴を一つ上げるとすれば

彼は、自分に飽き始めている。

勉強も運動もそれなりにでき、察しがよく、口も固い為対人関係も良好。

彼はそんな刺激に欠ける状況に飽き飽きしている。

だから『魔法撲滅部』なのだ。

正直、部室の扉を開くといかにも魔法使いです。みたいな人がたくさんいても、あまり驚かない、というより軽く落ち込む気がする。まぁ、一番驚くのは先生が彼に告げた 『魔法撲滅部の部員はいつも部室にいる』という情報が嘘であった場合だろうか。

そんなことを思いながら彼は理科準備室に到着し、そしてなんの躊躇もなく、間髪入れずにその扉を開いた。

ーそこにはいかにも魔法使いです。というような服装をし、右手に箒を持ちドヤ顔をする長い黒髪の美少女が立っていた。

「あぁ…」

彼はその少女にただそれだけ言い、またすぐに扉を閉めた。

「…え?」

青のため息に、中からその少女の動揺の声が漏れ、その後数秒もかからないうちに理科準備室の扉が少女の手により勢いよく開き、少女は少し気怠けな表情をしている彼に迫るように告げた。

「全っ然怪しい者ではありませんから!!」

…怪しい者の定番の言葉が始めてのセリフなんて可哀想に。

彼は心の中でそっと呟き、心の外では少女をまじまじと見つめていた。

「…えっと、君新入生だよね?…君、魔法を信じている?」

少女は一切反応を見せない青に恐る恐る、それでいて少しカッコつけながら問いかけた。

「信じるも何も、魔法は存在します。」

「…は?」

この時、青は思った。

自分のような人に会ってしまって、この人はなんて可哀想なんだろう。

「まっまぁ、入って…」

青の意外な返答に動揺を隠せない様子の少女は苦笑いをしながら彼を部室に招き入れた。

実のところ、青自身も少しばかり動揺している。まさか、自分の想像した通りのシュチュエーションになるとは…と、

「君、名前は?あたしは『甘木 志英瑠』高2でこの部の部長。って言っても今部員あたししかいないんだけどね、あはは…」

彼女はわざとらしい笑い声をあげ青の方を向く。

しかしその表情は急に一変。真剣な顔になり左腕をまっすぐのばし青を指差した。

そして志英瑠は今さっきまでの明るい声色から少し低めの声へ変え威圧感を出しながら告げる。

「…あんた、何者?」

「須賀崎 青 です。」

「いやそういうことじゃなくて」

青のそっけない態度に志英瑠が出した威圧感は抹消され、彼女はため息をつきつつ近くのパイプ椅子にどっかりと座り込んだ。

「質問を変えるわ…あんた魔法使いなの?」

「いいえ、」

「じゃあなんで、魔法の存在を知ってるの?実は純粋無垢なファンシー少年なの?」

志英瑠の先ほどの躊躇した話しかけ方とは全く異なる迫るような勢いの問いに、流石の青も少し後ずさりする。

「俺にどうしてそんなこと聞くんですか?魔法は普通に存在するし、現にあなたは魔法使いだし…」

青のさっきまでのそっけなさが失われ始めた最初の言葉に、志英瑠は衝撃を受けたのか、パイプ椅子から立ち上がり青に謎の構えを向けた。

「あんた、なんであたしが魔法使いってわかったのよ!」

「…いや そんな格好してたらわかりますよ」

志英瑠の的はずれな問いに自分のペースを取り戻した青はため息をつき言った。

「魔法撲滅部という名前に、魔法使いの部員、つまりあなたはー」

「待って、これだけは言わせて、」

青の声を制止し深呼吸をした志英瑠は、左腕をまっすぐにのばして青を指差し、こう言い放った。

「あたしは、魔法使いをやめたい!!」

初投稿です。わかりにくいところもあるかもしれませんが、是非よろしくお願いします。

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