プロローグ
「僕と付き合ってください!」
夕方の教室、僕は精一杯の勇気を振り絞って彼女に告白する。学年でも人気が高い彼女は冷静にこう言い放った。
「なんであんたなんかと付き合わなきゃいけないの?悪いけどわたし、あんたのことなんか知らないし。」
一刀両断だった。
「用はそれだけ?じゃあ、わたしは帰るね。」
この瞬間僕の恋は見事に砕け散ったのであった。
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「まあ、そう落ち込むなって。」
「そうは言ったって……」
僕はいまだ失恋のショックから立ち直れないでいた。
いま慰めてくれたのは同じクラスの佐倉 瑛。小学生からの親友だ。そして、僕の名前は高西 翔。どこにでもいる極普通の高校二年生だ。
「瑛の言う通りだ。この学校には他にもいい女がたくさんいるって。ほら、あいつなんてどうだ?」
「僕は西城さん以外には興味ないって何度も言っているだろ。」
「翔は一途だなぁ」
そう言って他の女子を見始めているのは、僕のもう一人の親友。巴 蒼太だ。こっちは中学生の時に同じクラスになってそれ以来なんだかんだで一緒にやってきている。
「そういえば、最近人間以外の犯罪のニュースをよく見るよな。」
瑛が不安そうに言う。
「確かに最近そういう事件増えてるよね。」
「そうなのか?俺、ニュースとか見ないから分からないや。」
『・・・・・・』
うん、蒼太はとりあえず無視しよう。僕と瑛の意見が一致したような気がした。
「うちの学校にも何人かいるって噂だけど、大丈夫かなぁ」
「まあ、うちの学校なら大丈夫でしょ。みんなおとなしめだし。」
瑛は不安そうに言うが、僕はこの学校ではそんな事件みたいなのは起きないと思っている。この学校、私立舞島高校はおとなしい校風で知られている。そんなわけで基本的に問題など起こらないはずなのだ。
「それにうちの学校にもいるかもしれないっていうのはただの噂にすぎないしね。」
「まあ、それもそうだね。」
「ねえねえ、うちの学校にいるかもしれないなんて噂あったの?」
蒼太が何か言っているような気がしたが、僕と瑛はスルーして話しを続けていた……。
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「はぁ……」
わたしは大きなため息をつく。
「今年に入ってもう何回目の告白だと思ってんだ……」
この学年でも人気が高い彼女、西城 真弓はそんな彼女らしい悩みを抱えていた。
「ええーいいじゃん。わたしなんて一回もされたことないよー。」
そして、彼女はいま友達の遊佐 千夏としゃべっていた。
「告白されるこっちの身にもなってみろよ。そもそもわたし、人間じゃないのに……(小声)」
「もう、それは気にしないって約束したじゃない。」
「だけどさー。」
「もう、そんな子はこうだー!」
「!?」
千夏が手をわさわささせながら飛び掛ってくる。
「やめろー!!」
わたしの抵抗も空しく千夏に捕まってしまった。
「ふふふ。そんなにいやがらないでも悪いようにはせんでー。」
「おまえ、それキャラ変わってるだろー!」
わたしの悲鳴が校舎に響いていた。