03
かなり遅くなってしまいました。
その上、短いです。
すみません。
午前の授業が全て終わった。
数学、英語、古典、歴史……流石、と言うべきかレベルが高い。
世界史は以前やったところだったが。
それにクラスメイト達の集中力にも驚いた。
私が来た時にはあんなにも眼を輝かせていたのに、射抜くような眼を黒板や教材に向けていたのだから。
少しでも成績が落ちればクラスも落とされ、新たな生徒が昇る。
この学園は良くも悪くも“実力主義”なのだと再認識させられた。
そんな風にこのクラス、学園について冷静に分析していたら完全に逃げ遅れてしまった。
転入生限定の試練――質問タイムとやらに。
気が付いた時には時既に遅し。私の周りはクラスメイトに完全に包囲されてしまっていた。
「ねえねえ!月ちゃん!」
一番初めに声をかけてきたのはやはりと言うべきか田中実優だった。
これは隣席の優先権というものだろうか。
とうとう拷問が始まってしまった。
最悪だ。どうにかして抜けだそうと視線を巡らすが鼠一匹が通れるほどの隙間もあいていない。
「月ちゃんってさー。」
五月蝿い。少し黙っていてほしい。
こちとら抜け道がないか探すのに精一杯なんだ。
本当のところは無視したい、無視したいが……。
しかし、私は現在包囲されている。
無視する訳にもいかない。
「何?」
私は相変わらずの無表情で田中実優に意識を向けた。
「どこから転校してきたのー?」
「普通の公立中学。」
「そうなんだー」
田中実優はそれだけ言うと引き下がっていった。
随分とあっさりとしたもんだ。
恐らく田中実優は質問タイムの流れを作っただけなんだろう。
「じゃあ、次私ねー!竜王さんって彼氏とかいるー?」
「そりゃ居るでしょー。こんなに美人だし、きっとモテるんだろうなー。」
来た。人の恋愛事情に不必要に首を突っ込んでくる輩。
彼氏?勿論居ない。居る訳がない。
もしそのようなものが私に居ると考えただけで寒気がする。
「別に。」
一言そう呟いて答えとする。
面倒くさい。本当に面倒くさい。
どうして私がつらつらと質問に答えなくてはいけないのか。
「竜王さんってー。」
「月ちゃんー。」
「竜王ってさー。」
その後も先生が来るまでこの地獄の拷問は続いた。
◇
因みにこれは、放課後もだった。
六時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った途端――……だ。
早く帰りたいけれど……
なんだ、この人の輪は!
私を中心にして、10人以上の人が周りを取り囲んでいる。
壁が前にあるせいで、出られない。
「竜王さんって、兄弟居るの?」
でも、その質問だけが耳に飛び込んだ。
自分の脈が速くなっていくのが分かる。
「帰るわ。」
私は音を立てて立ち、宣言するように言った。
机の横から鞄をとる。
「どいてくれない?」
横に居る人をきつく睨んでやった。
そうして出来た道を進む。
五月蝿い。黙れ。消えろ。
話しかけてきた奴と自分の脳内を支配するある出来事に、心の中で叫んだ。