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Artemis  作者: 散音 碧 (黒鷺)
第一章 目覚めの序曲
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01


拝啓 天国のお父さん・お母さんへ



桜舞い散る季節がきたよ。私は元気にしています。


私は今、今日から通う学校の前にいます。良い友達が出来るといいな。




――…さて冗談はこの辺にしとこうか。まず死んでないしね私の両親。


まぁこの学校に今日から通うのは本当だけど。




私の名前は竜王月(リュウオウルナ)。この春中3になったばかり。なぜ中3になって転入するかって?それは天国の両親(死んでないけど)の所為である。




―――3日前



いつものように夕飯を食べ終えた後ソファで適当にくつろいでいた。弟の星斗(ホシト)はゲームをしている。



(ルナ)星斗(ホシト)



いつものように名前を呼ばれる。面倒くさかったので返事だけする。もちろん視線は向けない。星斗も同じようなもので生返事だけで視線はずっとゲームに向いている。



「あのね、幸斗(ユキト)さんがNY(ニューヨーク)に転勤することになったの。それで私も行くことにしたから」



へぇ、父さん(=幸斗さん)が転勤する……転勤!?しかもNY?



「「は?何それ/何だよ!!」」



あ、ハモった……じゃなくて!



「聞いてないんだけど!?」


「母さんも行くって…俺たちはどうすりゃいいんだよ!?」



二人揃って抗議する。普段クールな星斗が怒るなんてめずらし……。



「あ、星斗は私たちと一緒にNYへ来るのよ。月はこっちで一人暮らしね」



一人暮らし……とりあえず日本には残れるらしい。良かった。



「はぁ?俺も残りたいんだけど……なんで月だけ……。母さんもこっちに残って父さんだけ行くっていう選択肢は無いわけ?」


「それはない!!!幸斗さんと離れたら私、さびしくて死んじゃう!」



ウサギかよ、というツッコミを心の中でしていると隣から「ウサギ……」とつぶやくのが聞こえた。こういうとき星斗との血のつながりを感じる。



「というわけで荷造りよろしくね~」



と呑気に母さんは言う。


星斗はその言葉に怒りを覚えたのか「ウサギに蹴られて死んでしまえ」と言っていた。そこまで言わなくても……それにウサギに蹴られたくらいじゃ人は死なないし。



「あ!月はマンションに引っ越してもらってこの学校に転校してもらうから」


「は?」



机の上には見知らぬ学校のパンフレット。私立の学園らしい……。うわ、しかもエスカレーター式、生徒数半端ないな……。



「じゃ、がんばってね~」



父さんと母さんはリビングを出ていった。


前言撤回、ウサギに蹴られて地獄に堕ちろ。





――そして現在に至る、と。



本当にあのバカップルは最後まで文句をぐちぐち言っていた可愛げのない弟を引き連れて遠く離れたNYへ行ってしまった。


私としては、これで念願の独り暮らしを始められるとあって良かったと言えば良かったのだが…。



「何これ…。これが学校?」



とつぶやいてしまうほどこの学校はとにかくでかかった。幼稚舎から大学院まで全てがこの敷地に収まっているのだから、当たり前といっちゃあ当たり前なのだが。


これでは今まで自分が通っていた公立中学はどうなってしまうのだろう。ごま粒ほどに思えてしまう。


しかし、私は少し疑問を抱いている。


私のような公立に通っていた人間がなぜ試験も受けずに私立に入れる?


おかしくはないか?


まぁ、前の学校で成績は主席だったし、今まで内申点に響くようなことはしていないし……



恐るべし、私立 「天照学園(てんしょうがくえん)



あと私にとっては好都合だったのだが、どうして天国の両親(まだ引きずるか!by作者)は私だけを置いて行ったのか?


星斗は連れていかれた。小学生と中学生……年齢差は4歳しかない。


私はどでかい校舎をにらむ。



――何か理由があるとしたら…それはなに?



思い当たる節はない。


私は少しだけ息を吐く。



「まぁ今となってはどうでもいいけど。」



つぶやく。


ふぅ。もう家族のことを考えるのはやめよう。今、考えるべきなのは、これから始まる新しい学園生活についてだ。


担任はどんな奴だろうか?


授業はどの程度のレベルだろうか?


この学園は私を満足させられるだろうか?


ここにいる人間には価値はあるだろうか?



ここにあいつ(・・・)はいるかな?



「………。」



馬鹿だ、家族のことは考えないって今決めたじゃないか。考えるだけ無駄だ。



さぁ、学園生活を始めてやろう。



私はこの学校のパンフレットをスクールバッグから取り出す。


2度も読んだパンフレット。


もう一度読み返してみる。



『私立天照学園』



一学年400人もいるマンモス学校。外国にも兄弟校、姉妹校があるらしい。


一学年につき10個のクラスがあり、A、B、C…とアルファベットで組み分けされているらしい。Aクラスは成績優秀者、Iクラスはバカ共、とクラスごとに優劣が決まっているらしい。A~Iのクラスともう一つ、特進クラスというのがあるらしい。



ちなみに私はAクラスだ。


校舎も敷地も馬鹿でかい。寮もあるらしい、といっても私は住まないけど。


まずは、私が転入するクラスの場所がわからなかったら、お話にならない。


中等部の校舎へと歩き出す。うっかりしていたら迷子になりかねない。


地図を何度も確認しながら目的地へ。



『3-A』



のタグがぶらさがっている。


おそらく、というか絶対ここだろう。


ガラガラ……


何の感動もなく、扉を開く。


中の様子は半ば予想通りだった。


和気あいあいとした教室。生徒たちは超笑顔で、アイドルだのテストについてだの話している。楽しい雰囲気。……ついていけない。


私に気付いた人は誰もいないみたいだ。


静かに扉を閉めた。


とりあえず教員室に行かなくては。パンフレット片手に私はまた歩きだす。



――5分後、無事教員室に着いた。コンコン、とノックし「失礼します」と言いながら扉を開け、次の瞬間速攻で閉めた。



うん、私は何も見ていない。若い男(おそらく教師)がバスケットボールに乗りながらコーヒーを飲もうとしているところなんて見ていない。ドンッという音とともに「あっつ!」という間抜けな声も聞いてはいない。



気を取り直し、私は扉を開け、近くでコーヒーをかぶって倒れている男を軽やかにスルーし(ひどい?正常な判断よby月)、一番近くにいた女の教師に声をかけた。



「すみません、今日転入してきた竜王月です」


「あぁ、あなたが竜王さんね、Aクラスに転入してきた。私がAクラスの担任の島村(シマムラ)です。よろしくね。」



この人が担任……いかにも優しそうな先生という雰囲気をかもしだしている。



「HRの時間にあいさつしてもらうから、考えておいてね、自己紹介。」


「はい。」


「じゃぁ、HR(ホームルーム)には間に合うように教室に来てください。それまでは自由にしてていいから。」


「はい。では失礼します。」



扉へ向かう間に私はついついさっきの男を見てしまった。


……まだ寝ていたけれど。






















とりあえず、今投稿出来てキリのいいところまで投稿しました。


次話までには少し時間がかかってしまいそうです。


申し訳ありません。



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