3月21日 ロリ萌えぱんつ
そのはが学校終わるのを待って、僕達は本屋巡りを開始した。
いや、したくないんだけどね。本当は。だってロリ萌え本探しだし。
僕達の住んでいる街には徒歩圏内で3軒の本屋がある。
一番最初に向かったのは中心市街地の大型店内にある『ジャンク堂書店』。本ではなく別の物が売ってそうな店名だと思う。
ジャンク堂書店に向かう途中、そのはは制服姿のまま、ぶちぶちと文句を垂れていた。
「まったく! なんで期末テストも終わって悠々自適な3学期後半にいきなり抜き打ちテストなんかされなくちゃならないのよっ! しかも5科目フルセットで!」
「ああ、そういえば僕の時もあったな、そういうの。3年生のクラス編成の参考にするんだろ?」
「クラスなんてどこでもいいよっ! なんで春休み前にこんなに気分悪くならなくっちゃいけないのよっ! せっかく今日はあや先輩をロリ道に目覚めさせるべくあれこれ考えてたのに!」
「…………」
もしかしたら僕は抜き打ちテストに感謝するべきなのかもしれない。少なくともテストのおかげでそのはの思考回路の大部分はロリ道覚醒から遠ざかったはずだ。
「でもそのはなら抜き打ちでもそんなに悪い点は取らないだろ? そこまで腹を立てる必要はないと思うんだけど」
「でもいきなりは困る。クラス編成の参考にするなら尚更、下手に進学クラスとかになっても面倒だし」
「進学クラスに行きたくても行けない人間に聞かれたら怒られそうなセリフだなあ。で、手ごたえは?」
「9.8割方は問題なく解けたけど。もうちょっと手を抜いてもよかったくらい」
「…………」
人種が違うなあ。テストで手ぇ抜くとかいったいどんな嫌味だよ。
「あーあ。進学クラスにはなりたくないなぁ」
「なんでだよ」
「だって補習とかあるんだよ。出来が悪くて補習するって言うんならわかるけどなんで出来がいいのに補習なんてしなくちゃならないのよ!」
「ああ。そう言えばあったな。特別補習。僕は受けなかったけど」
「うん。あや先輩にはきっと縁のない話だよね」
「その通りではあるんだが、わざわざ言うほどのことか?」
「わざわざ言うほどのことだよ」
「ほほう」
「おもにストレス発散のために」
「僕で発散するなっ!」
いつかその口にチャックをしてやりたい。
ジャンク堂書店到着。
興奮気味にロリ本を物色しているそのは。その横を歩く僕はできれば他人のふりをしたかった。しかしそのはが、
「ほらほら、これなんかおススメだよ。パンチラ描写が多いのがポイント高いし!」
などと腕をぐいぐいひっぱって進めてくるのでそれもできない。
「…………」
「あれ? ノリ悪いね、あや先輩。パンチラ好きじゃない?」
「大好きだ」
「だよねっ!」
「でも女子に、しかも彼女にパンチラ本を勧められるというのはなんか微妙」
「え~。それって性差別だよ~」
「そうか?」
「そうだよ~。性別を理由に制限をかけるのは何であれ性差別だと思う。女性がたばこを吸うのはあまり好きじゃないとか、女性が料理のひとつもできないのはみっともないとか。偏見に満ちた性差別だよう」
「う~む。確かに女の子だからっていう理由だけだとそんな反論をされても仕方がないか」
「そう! 女の子だってロリ萌えたい! 美少女萌えたい! BL萌えたい!」
「分かった。分かったからちょっとテンション下げてくれ。僕はまだそのはほど他人の視線に対して開き直れない!」
拳を固めて力説するそのはを、周りの人たちが見ている。可哀想なモノを見るような、関わり合いになりたくない人種を見るような、そんな目で。
僕にできることはそのはを宥めることくらいだ。いや、黙ってもらうよう交渉することくらいかな。僕が何かを言ったくらいで黙るようなそのはではないだろうけれど。
その日はパンツ全開の小学生低学年の女の子が魔法少女っぽく杖を構えている本を購入した(させられた)。少女というより幼女な外見だ。それが狙いっぽい絵だけど。
しかし、まあ、読んでみると結構面白いし、可愛いというか……。
やばい。幼女萌えに目覚めそうだ。
パンツはともかくとして。