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僕と彼女の変態日記  作者: 水月さなぎ
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3月19日 知識の将来性

 今日はそのはが学校なのでデートはなし。というか、そこまで毎日デートする必要もないだろう。あんまりべったりな付き合いも鬱陶しいし。ほどよい距離があった方がお互いの精神衛生上うまくいく気がする。そう思うのは僕が情の薄い人間だからだろうか。

 なんて、結構どうでもいいことを考えていた。ちなみに結構ヒマな一日だったが課題にはまだ一つも手を付けていない。現実逃避万歳。

 夜はそのはに電話をしてみた。

『進路?』

「ああ。そろそろ3年生の準備がてら進路指導とかあるんじゃないかなあって」

『ああ、そう言えばそんな紙切れを書かされた気がする』

「……進路調査の用紙を紙切れ扱いか」

『だってまだまだ遊びたい盛りなのに将来のことなんて考えたくないし』

「頭がいい癖に現実逃避全開だな。でもそのはの成績ならどこでも選びたい放題だろ? 中学生の進路調査なんて所詮志望校の候補選びだし、気楽にやればいいんじゃないか?」

『うん。そうなんだけど、結構悩んでるよ私』

「悩みねえ。僕で良かったら相談に乗るけど?」

『それじゃあお言葉に甘えて。実は私の志望校って葉志館(ようしかん)学園だったりするんだけど』

「はあっ? 葉志館ってあの馬鹿校か!? 答案用紙に名前さえ書いてあればそれで合格するっていうあの!?」

『そ、そこまでなんだ……』

「ちなみに僕と同世代の奴で五教科総合(・・)一桁の点数の奴が受かってるぞ……」

『………………』

「何でよりにもよってそのはがあんな学校に行きたがるんだよ? 確かにあの学校は専門学科が多いけど。一足先に技術を身に付けたいならともかく、別にそういうわけじゃないんだろ?」

『うん。普通科志望』

「間違いなく教師に止められるからな、それ。西陵だって一応進学率くらいは気にするだろうし」

『うん。止められた。っていうか怒られた』

「だろうな……」

『酷いよね。どこの学校に行こうが本人の勝手なのに。他人にとやかく言われる筋合いなんてないんだけどな』

「そりゃそうだ」

『十代の貴重な青春をなるべく遊んで過ごしたいっていうこの気持ちがどうして分からないのかなぁ』

「学生の本分は勉強だからだっ! とか言われるのがオチだぞ、それ」

『うん。言われた』

「言われたのかよ。つーか堂々とそんな事を教師の前で口にしたのかよ」

『学生の本分は勉強でも私の本分は変態なのに!』

「……さすがにそこまでは口にしてないだろうな?」

『このままだと親まで呼ばれて三者面談体制で説教&説得になりそうでさぁ。困ってるのよね~』

「周りはもっと困ってると思うぞ……僕も含めて」

(あさひ)女学院でレズビアンの観察をするのも悪くないかな~って思ったんだけど』

「思うなよ、そんなもん」

『よく考えたら通学だけで電車で一時間くらいかかるんだよね~。さすがに見つけられるかどうか分からないレズビアンの観察のためだけにそこまで時間を費やしたくないな~って』

「いることは確定なのか……」

『統計的割合で言うなら人口の5~7パーセントは同性愛者だって結果が出てるよ~。同性が集まる環境ならもっと増えるんじゃないかな~』

「これから男子校に通う人間に対して不吉なことを言うなよ!」

『ちなみにあや先輩の本命だった共学校ってどこなの?』

海成(かいせい)高校だよ。一応僕の学力で受かるかもしれなかったところ。模試の結果さえよかったら受験してた」

『じゃあそこにする~』

「は!? 何だそのあっさり選択!?」

『だってあや先輩の学力できわどいところなら私にとっては結構楽かな~って思って。これくらいレベル上げとけば教師もそんなに文句は言わないだろうし』

「うっわ、ムカつくなオイ!」

『だって、人生の中でもっとも遊べるはずの学生時代を勉強なんて無駄なことに費やさなければならないなんて馬鹿らしいじゃない。学生の本分は遊び! これが私の信条!』

「うーむ……。個人的には賛同したいところなんだが……」

『大体学生時代に学んだ事なんて、社会に出てからは何の役にも立たないんだから。やるだけ無駄でしょ? 最低限にしといた方が遥かに効率がいいと思うんだよね~』

「無駄なものなんて一つもない。今は役に立たないと思っていても、いつかはきっと役に立つ時が来る、なんて名言もあるけどな」

『綺麗にまとめてあるけど実際は役に立たないことが大半だと思うよ。普通に仕事してて歴史とか古文とか数学とかの知識が役に立つところなんて想像できる?』

「……できない」

『社会人に必要な知識なんて精々小学生レベルだと思うよ。読み書きが出来て基本の計算が出来ればノープロブレム。知識が必要な職業なら専門の勉強をすればいいだけだし』

「だよなあ」

『学歴社会もそろそろ終わりだしね。能力重視なら専門分野を勉強するのも悪くないと思うけど、高校で学べることなんてたかが知れてるし。必要だと思ったら独学の方がマシ』

「まあそこまで言ってやるなよ。一応高校の3年間だけで国家資格が取れることもあるんだし」

『私の知り合いに高校の調理科を卒業して国家資格を取った人がいるんだけど、この前サバの味噌煮込みを作るときに、醤油ってどれくらい入れればいいんだっけ? とか素で聞いてきたよ』

「………………その学校では一体何を教えていたんだ」

『さあね。キャベツの千切りだけは得意だって威張ってるけど』

「んなもんスライサーがあれば誰でも出来る」

『だよね~』


 と、こんな感じに進路相談なんだか無駄話なんだか分からない会話内容だった。

 勉強というものが如何に虚しいものなのかを悟らされたような、そうでないような……

 そんなことを最後に漏らすと、


『虚しいことには変わりないけど、子供の格付けとしては一番解りやすい基準だからね。性格や人間性や得意分野なんか細かいことを抜きにしてシンプルな点数のみで順位が付けられていく。子供にとっての勉強なんて所詮その程度の価値しかないと思うよ』

 なんて言葉を返された。

 そんな風に考えたことはなかったけど、確かに言われてみるとその通りだった。でもここまで来るともう子供の思考回路じゃないような気がする。僕と違って将来は大成しそうな気がするな。あの性癖さえなんとかすればの話だけど。


 ……ちなみに僕が来月から通う七ヶ瀬高校は生徒数は1200人ほどらしい。

 全校生徒中60~80人ほどがホモかもしれないとか考えるとさすがにぞっとするなぁ。

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