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僕と彼女の変態日記  作者: 水月さなぎ
3/21

3月17日 公園デートと男子校の実態予想

 今日はそのはは学校があるので午後からの公園デートとなった。

 学生なのでできるだけお金のかからないデートプランでいきたいところだ。市民公園の外周をぶらぶらしたり、時々童心にかえって遊具で遊んでみたり。

 何かスポーツ道具でも持ってくれば良かっただろうかと思ったが、そのははスポーツ万能なので何をやってもボロ負けするかもしれない。そう考えるとやっぱりぶらつくので正解だろう。僕は決して運動神経がいいほうではないのだから。いや、だからといって運動神経が鈍いわけでもないつもりだけど。うん。多分、標準。

 僕のデートプランへの不満はないらしく、そのははご機嫌な様子で横を歩いている。普通なら優しい子だなと感動するところだが、きっと何か別の、ろくでもない変態妄想でもしているのだろう、という程度には彼女のことがわかってきた。

「ちなみに、今は何を考えてるんだ?」

 試しに聞いてみた。やめとけばいいのに。だけど聞かずにいるのも何だか怖い。僕の知らないところでとんでもない妄想が繰り広げられてたりするかもしれないし。

「男子校について、色々考察を」

「たとえばどんな?」

 先日のシ〇リンピックに続いて今度はどんな暴言を吐くつもりなのだろう。

「ネットで調べたり知り合いに聞いたりしただけで、私自身が経験したわけじゃないんだけど……」

「いや、一生経験しないから」

 女子である以上は。

「罰ゲームで授業中に裸になってる生徒がいるのに教師は平気で授業を続けるとか」

「まあ、男子校ならそれくらいありそうだな」

 女子がいないからこそできる羞恥心の放棄だ。

「世の中には女性の前だからこそ裸になりたいという面白い男性もいるみたいだけど」

「それはただの露出狂だ」

「正確には露出症って病名らしいよ」

「どうでもいい」

 本当にどうでもいい。変態のひとくくりで十分だ。

「女子大生が教育実習に来るとさかるとか」

「それは男である以上仕方がない」

 男子校という女子成分が枯渇している環境で美人女子大生が教育実習に来たりしたら、そりゃあさかるだろう。いや、だから女の子がさかるとか言うなよ。

「教師の方から平気で下ネタを振ってきたり、学級日誌も下ネタだらけとか」

「廃校になってしまえ、そんな学校!」

「壁にエロ漫画の落書きがあったり」

「それくらいなら西陵の男子トイレにもあったぞ」

「情報の授業でAV流すとか」

「終わってるな、その学校」

 だからなんで下ネタ連発なんだ? もうちょっと健全な予想は立てられないのか!? ……無理か。変態だし。そこが面白いと思った以上この程度でツッコむのも悪い気がする。って、あれ? 何か僕、変な気の遣い方してないか?

「気が付いたら尻を触られてるとか、寮生の場合はホモと同室になった場合は寝込みを襲われる可能性があるとか……」

「……確かに実際にありそうだけどそういうことは。だがしかし、まずはよだれを拭け」

「おっと。いけないいけない」

 妄想が濃厚すぎて現実世界での制御が外れたらしい。そのははだらしない顔でよだれを垂らしていた。可愛い顔が台無しだ。

「何? そのはってもしかして腐女子?」

 同性愛(しかも男同士)で盛り上がるあたり、そういう人種なのかもしれない。まあ百合よりはマシかもしれないけど。

「…………」

 あれ? なんだかそのはの周りの温度が2℃ほど下がったような気がする。何か失言してしまっただろうか。と思った瞬間、

「失礼な! あんな男同士の〇〇〇でしか盛り上がれないような狭量な女子とこの私を一緒にしないでよっ!」

 そのははバッと僕のほうを向いてものすごい形相でにらんできた。よだれを拭いた跡がわずかに残る口元を震わせながら、今まで聞いたこともないくらい低い声で怒鳴りつけてきた。

「……ごめんなさい」

 そのあまりの迫力に、謝る筋合いはないはずなのについつい謝罪の言葉を口にしてしまっていた。

「私は萌えられるネタなら何でも受け入れる懐の広さを持っているわ! BLでも美少女でも美少年でもロリでもショタでもロマンスグレーでもナイスミドルでも姐さんでも! どんなネタでもそこに確固たる『萌え』があるのならどんなものでもハアハアしてみせるわっ!」

「……………それは単に見境がないって言うんじゃ……」

「磔のマゾゴッドは汝の隣人を愛せって言ってるじゃない! その理論と大きな差はないはずよ!」

「三大宗教の聖人に対してなんちゅう呼び方をしてるんだっ! 信者に聞かれたら殺されるぞ! それからその教えはどちらかというと博愛主義の奨励であって見境なく萌えろという意味じゃないはずだっ!」

「もう! あや先輩は頭固いんだから! 宗教の教義なんてのは自分に都合のいい部分だけ賛同してればそれでいいのよっ!」

「さらなる暴言がっ!」

「とにかく私は腐女子じゃないから。あんなのと一緒にされたらたまったもんじゃないわ!」

「……わかった。肝に銘じとく」

 要するに腐女子なんかよりもよっぽど質が悪いということだ。

 色々と先行きが不安な彼女だった。

 そのはへの理解が一つ深まった日。

 深まったことがいいことなのかどうか、分からないけれど……



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