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僕と彼女の変態日記  作者: 水月さなぎ
14/21

3月28日 お礼と教訓

 いろいろあった昨日のことはさておき、本日はあらためてそのはへの礼をするべく市民公園での待ち合わせ場所へと向かった。

 昨日の時点で僕のできる範囲(経済的)での希望を考えていてくれと言ってある。

「あーや先輩」

「おー。欲しいものは決まったか?」

「いろいろ迷ったけど決まったよ~。そんなに高いものじゃないから安心して。出費的には数百円程度」

「それは助かるけど、いいのか?」

「もちろん。大したことをしたわけじゃないしね。問題のレベル的に」

「…………」

 どんな時でも傷口をえぐるのを忘れないあたり、実にそのはらしい。


「…………で?」

「ん?」

 僕たちはジャンク堂書店にいた。そのはのご所望は本1冊。本屋に来るのは当然の流れとして。それはいい。本1冊で礼になるのならお安い御用だ。

 お安い御用のはずだ。

 ……内容さえ考慮しなければ。

「…………」

「ほらほら。これ読みたかったんだってば。早くレジに持って行ってよ、あや先輩」

「…………」

 そのはが僕に手渡してきたのは、男同士が裸で抱き合っているコミック。しかもなんか〇〇〇まみれの構図だ。これはもしかしなくても激エロBL本だよなあ。

「…………」

 これを僕自身の手でレジに持っていき、僕の財布から金を出して購入しろと!?

 一体どんな拷問だ!?

 しかもレジに立っているのは結構美人なおねいさんじゃないか!!

 あの人の前にコレを持って行けと!?

 確かに出費的には大したダメージではないが、精神的ダメージがぱないぞっ!

「……あの~、僕が金出すからさ、レジに持っていくのは自分でやってほしいんだけど」

 僕はダメもとでそんな提案をそのはにしてみた。

「嫌♪」

「…………」

 答えはもちろん分かりきっていた。いや、でもさあ、そんなに楽しそうにニヤニヤしないでほしいなあ。絶対僕の反応を見て楽しみたいだけだろ? そうだろ?

 しかも今いるのはBLコミックコーナーで腐女子がまわりにうろうろしている状態だ。一刻も早くこの場所からだけでも移動したいのだが、そのはが僕の腕をがっちりと捕まえているのでそれも叶わない。

 ああ……まわりの女の子(腐女子)の視線が痛い……変態を見るような目で僕を見るなよ。お前らだってこんなのに興味を示すあたり大差ないだろ?

「ほらほら~。早くレジに行かないといつまでたってもさらし者だよ~」

「うぐぐぐぐぐ……!」

 くそう! この状況込みで楽しんでやがるぞ、こいつ!

「い、行ってくる! だからここからは解放してくれ!」

 どのみち逃げられないのならさっさと済ませるに限る。レジにいるのがきれいなお姉さんだからなんだというのだ! 普通のおっさんが立っていたとしてもやっぱりドン引きされることに変わりはないのだ! だったら覚悟を決めろ!

 今回のことを教訓にして、今後そのはから借りを作るような真似をしなければいいのだ!

 高い授業料だと思えばいいのだ!

 ……高すぎるけど。


 レジへGO。

「…………」

「…………」

 レジのお姉さんはカウンターに置かれた激エロBL本と僕とを交互に見比べ、そして淡々とバーコードを通してくれた。

 さすが店員。そ知らぬふりくらいはしてくれるらしい。

 ……しかしおつりを返す時には必要以上に手が離れていたのを、僕はしっかり気づいてしまった。

 きっとそ知らぬふりをしながらも、内心はドン引きに違いない。


「うううううう……」

 僕はそのはに購入した本を手渡してからうなっていた。

「ありがと、あや先輩」

「うううううう……あんなきれいなお姉さんにドン引きされた……絶対変態だと思われた……下手すればホモだと思われた……」

 そのははそんな僕のショックなどお構いなしにうれしそうに本を抱えている。

「えへへへ~」

「そんなにBL本が手に入ったのがうれしいのか……」

「それもあるけどあや先輩の痴態も存分に楽しめたからね~。手を貸した甲斐はあったかな~って」

「ぐっ……」

 なんで自分の彼女からこんな扱いを受けなければならないのだろう……不毛だなぁ。

 

 こうしてお礼の一日は終了した。僕は精神的に消耗しすぎていたので、まだ昼前にもかかわらず家に帰ることにした。

 別れ際、

「ねえ、せっかくあや先輩が買ったんだから一緒に見ない? これ」

 そのはは本を掲げてそんなことを勧めてくる。

「絶対見ない!」

 僕は問答無用で踵を返した。

 そんなものを見るくらいならロリエロコミックを見た方が遥かにマシだ!


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