表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2章:『洗礼』

焼け野原となった村を、部隊は進んでいた。


リラがピストルの安全装置を外す。指が神経質にグリップを撫でる。「任務は単純だ。『感染した者』を全て殺す」


グロムは無言で頷く。分厚い指は既に引き金に絡みついている。地下室に降りる前から、彼は人間たちの恐怖を感じていた――甘く渋い汗とアドレナリンの臭い。彼は知っていた。その恐怖が、たとえ束の間でも自分を満たすことを。


アルチョームは答えない。仮面の内側から何かが軋む。こめかみの新しい亀裂から、蒼白い皮膚の断片が覗いた。「姉さん……」なぜ今、彼女の顔を思い出す?


脱走兵たちは地下室に隠れていた。


「俺たちは見捨てられた!」一人がイコンを胸に押し当てて泣き叫ぶ。「感染してない!俺たちは……」


グロムが最初に撃った。

やりたくて――ではなく、やらねばならなかったから。

彼らの恐怖は、もう麻薬のように彼の血管を流れていた。


静寂。

深淵の声が途切れる。


そしてアルチョームは見た――

姉を。

あの地下室で。

頭を撃ち抜かれた姿で。


「お前……が殺した」アルチョームがグロムに襲いかかる。仮面の亀裂がさらに広がる。

「誰を?」機関銃手は首を傾げた。理解していない。だがその目には……ほとんど人間らしい、ほとんど後悔に近い感情が浮かんでいた。


アンナは悲鳴で目を覚ました。

「私たちは笑っている!」彼女の指がリラの肩に食い込み、あざを残す。でもリラは痛みすら感じない。「暗闇に立って……そして……」

「何?」

「あの言葉で……」

彼女は口を閉ざした。


あの言葉……彼女は知らないはずだ。

なのに、全てを理解していた。


彼は骨の山の上に立っていた。

顔もなく。体もなく。

ただ……人間の形をした炎のように揺れる影。


「時が来た」その声は、空間の全ての地点から、そしてどこからでもなく同時に響く。

リラがピストルを構える――突然、指が痺れた。武器が自分の肉体の延長になったように。彼らが内に宿す呪いの一部のように。


「お前は誰だ?」アルチョームが息を吐く。

「審判者」

「何を?」

「お前たちは忘れた」


部隊が口を開いた――深淵の言葉で。

彼らは自分たちの言葉すら理解できない。


『忘れられた者』が笑った――骨の折れる音のような笑い声。

「思い出せ」

そして消えた。


「お前たちは……」アルチョームが後ずさる。仮面は今や完全に亀裂に覆われている。「人間じゃない」

「お前はどうだ!?」リラが叫ぶ。声は唸りと呻きの間で裏返った。


「俺は離脱する」

仮面がついに砕ける――その下に一瞬、何か……異質なものが覗いた。アルチョームが最後に振り向く。亀裂の間から覗く目が光る。憎しみではなく。飢えだ。


アンナがリラの腕を掴む。

「彼が死んだら……」

「俺たちも道連れだ」グロムが機関銃に弾を込める。長い間聞かなかった確固たる声で。「ならば、ついていくしかない」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ