第2章:『洗礼』
焼け野原となった村を、部隊は進んでいた。
リラがピストルの安全装置を外す。指が神経質にグリップを撫でる。「任務は単純だ。『感染した者』を全て殺す」
グロムは無言で頷く。分厚い指は既に引き金に絡みついている。地下室に降りる前から、彼は人間たちの恐怖を感じていた――甘く渋い汗とアドレナリンの臭い。彼は知っていた。その恐怖が、たとえ束の間でも自分を満たすことを。
アルチョームは答えない。仮面の内側から何かが軋む。こめかみの新しい亀裂から、蒼白い皮膚の断片が覗いた。「姉さん……」なぜ今、彼女の顔を思い出す?
脱走兵たちは地下室に隠れていた。
「俺たちは見捨てられた!」一人がイコンを胸に押し当てて泣き叫ぶ。「感染してない!俺たちは……」
グロムが最初に撃った。
やりたくて――ではなく、やらねばならなかったから。
彼らの恐怖は、もう麻薬のように彼の血管を流れていた。
静寂。
深淵の声が途切れる。
そしてアルチョームは見た――
姉を。
あの地下室で。
頭を撃ち抜かれた姿で。
「お前……が殺した」アルチョームがグロムに襲いかかる。仮面の亀裂がさらに広がる。
「誰を?」機関銃手は首を傾げた。理解していない。だがその目には……ほとんど人間らしい、ほとんど後悔に近い感情が浮かんでいた。
アンナは悲鳴で目を覚ました。
「私たちは笑っている!」彼女の指がリラの肩に食い込み、あざを残す。でもリラは痛みすら感じない。「暗闇に立って……そして……」
「何?」
「あの言葉で……」
彼女は口を閉ざした。
あの言葉……彼女は知らないはずだ。
なのに、全てを理解していた。
彼は骨の山の上に立っていた。
顔もなく。体もなく。
ただ……人間の形をした炎のように揺れる影。
「時が来た」その声は、空間の全ての地点から、そしてどこからでもなく同時に響く。
リラがピストルを構える――突然、指が痺れた。武器が自分の肉体の延長になったように。彼らが内に宿す呪いの一部のように。
「お前は誰だ?」アルチョームが息を吐く。
「審判者」
「何を?」
「お前たちは忘れた」
部隊が口を開いた――深淵の言葉で。
彼らは自分たちの言葉すら理解できない。
『忘れられた者』が笑った――骨の折れる音のような笑い声。
「思い出せ」
そして消えた。
「お前たちは……」アルチョームが後ずさる。仮面は今や完全に亀裂に覆われている。「人間じゃない」
「お前はどうだ!?」リラが叫ぶ。声は唸りと呻きの間で裏返った。
「俺は離脱する」
仮面がついに砕ける――その下に一瞬、何か……異質なものが覗いた。アルチョームが最後に振り向く。亀裂の間から覗く目が光る。憎しみではなく。飢えだ。
アンナがリラの腕を掴む。
「彼が死んだら……」
「俺たちも道連れだ」グロムが機関銃に弾を込める。長い間聞かなかった確固たる声で。「ならば、ついていくしかない」