机に吸い込まれた先は・・・異世界でした。
初投稿です。
楽しんでもらえたら光栄です。
後世に名を残す英雄や独裁者は、決まって一般の価値観を嫌う。
価値観の否定とはすなわち進化であると、どこかの著名な詩人は言っているが
俺はそう思わない。価値観の否定とは、進化に目をつぶることだと俺は思っている。
価値観。それは人それぞれに備わっている物の見方などであり、
性格と同じように人それぞれである。
その価値観を認め合うことこそが、進化への道、進むべき道なのだと俺は考えている。
しかし今の俺の状況は、その価値観云々を議論する以前の問題であった。
目の前で人が殺されかけていたのだ。
齢14,5の少女とその母らしき者が目の前で。
その行動を行おうとしている主は、ボロボロの布切れの服を着たいかにも盗賊という
身なりの男たち5人。
皆、屈強な体つきをしていて、命のやり取りに慣れた様子の男たちである。
逃れるすべなど無いと悟ったか、母親が盗賊の前で土下座をして命乞いしている。
なんという光景であろう。とても日本とは思えないこの光景に、俺、藤宮 遼
は唖然としていた。
〈おいおい、まじかよ・・・。目の前で水戸黄門さながらのことが起きてるよ。〉
テレビの中ではこの後、光圀一行が通りかかって助けに入るのだろうが、そんなキャストは
どこにもいない。
そんなことを考えている間にも、母親が、慰み者にされようとしていた。
その恐ろしい光景を止めさせようと少女は必死に盗賊の足に掴みかかるが、ひと蹴りされて、
吹っ飛ぶ。
これは悪夢のような光景であった。
俺の体は、ひとりでに動いていた。
「おい、ちょっとそれは酷くねぇか。止めろよ。そして悔い改めろ。」
俺は男達の前に飛び出た。
一体どうしたのだろう。悔い改めろだなんてどうして俺の口から出たのか分からない。
俺はいたって普通の学生だったはずだ。ついさっきまでは・・・・・・。
~~~~~~~少し前~~~~~~~~
キーンコーンカーンコーン
6時間目の終わりを伝える福音が鳴り響く。
今日も何事もなく学校を終えた。
何一つ変わらない日常。
皆一斉に帰りの用意をしだす。
「今日も終わったぁ。」
いつもながら、金曜の帰りのホームルームはテンションが上がる。
これは一般帰宅部学生なら大多数が望むささやかな幸せ、休日が待っているからである。
「今日は寝れねぇぜ。」
嬉しさがこみ上げる。早く帰って、新作ゲームを徹夜でプレイする。
それが今日の遼のこれからの過ごし方であった。
であった、のだ。さぁ帰ろうと思い勢いよく椅子から立ち上がる。その時、スウゥゥゥと何処からか掃除機の吸入音のような音が聞こえてくる。
何だろう?学校の掃除に掃除機は使わないはずである。そんなことを呑気に考えていた次の瞬間、突然俺は、あろうことか机に吸い込まれた。
強い得体のしれない空気のようなものが俺の中に入っていく。それが俺が感じた最後の感覚であった。そこで意識は暗転した。
「・・ん・・・・ぅん・・・・・・・ここは?」
頭がズキズキ痛む。ここは何処なのだろう。確か俺は机に吸い込まれて・・・。
「ヒャーハー」
!!!
な、何だ?今の声は。まるで世紀末の雑魚キャラのようじゃないか。
俺は声のする方を振り向く。そこには・・・数人の男に襲われている親子がいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして今に至る。飛び出してはみたものの、このあとどういう行動をしていいのか分からない。
立ち尽くすしかなかった。
男達は、俺が一人なのを見てにやりと笑い、懐からナイフのような刃物を取り出した。
どうしよう。刃物を持った大の大人3人を相手に勝てる見込みは無いに等しいぜ。
この展開はヤバいな。
とりあえずあの親子だけでも逃がそうか。
と、その時、
「fufjc@@:]0%&'$")(`」
知らない言語で話かけてきた。なんて言ってんだろ?
続いて残りの盗賊も
「&')&)('|~|='」
「('&%'()~{`*`+{+?+`」
・・・意味分かりません。
そしてイキナリ切りかかってきた!!!俺は何とか・・・いや軽々横飛びで避ける。
なんか体軽いぞ。こんなんだったっけ?
避けられた盗賊は、顔を歪めて地団太踏んで残りの盗賊と一気に三方向からナイフらしき刃物を突き立てて
向かってくる。
いや、どう避けよう!?
てか〇ェットストリームアタックかよおまえら!!
あぁ死ぬなぁ・・・俺・・。起死回生の策が見つからない。ナイフが俺直撃まであと数秒ぐらい。
あの親子が目をつぶる。
助けられなかったなぁ。俺ふがいね―なぁ―。
てか人生で一度だけでも彼女ってやつ・・・・・欲しかったなぁ。
もっと遊んどけばよかったなぁ。
あとコンマ数秒ぐらいか。
俺も目をつぶる。痛いのやだな・・・・。
《上に飛べ!》
はっ!!!
無意識に上に飛ぶ。全力で。
さっきの声は?あ、てか俺死んでねぇ。上に飛んだからってそんな垂直に何メートルも飛べるわけないだろうに。
つぶっていた目を開ける。
へっ?木より高い??
なんでおれこんなとこに居んの?
《お主は馬鹿か?とんだ自殺願望者じゃな。》
脳内に声が流れてくる。何だこりゃ。変な爺さんの声が聞こえる。
《今から言うことをよく聞け。お主は強くなっておる。人外に身体能力は上がっておるし、魔力も底なし状態になっておる。じゃからあのようなボロキレの様な人間どもには
負けはせん。なぜそのような体になったのかは後で話す。今は下にいるボロキレを倒してあの親子を助けてやるがよい。》
・・・・なんだこの声・・・・・・。
「おいあんた誰だよ。」
《神じゃよ。さぁ話はあとじゃ。もうすぐ地面に着くぞ。あ、やりすぎるなよ。じゃぁな。》
・・イカレタ爺さん。てかもう下地面じゃん!!神さまだったらまずこの状況を助けろよ!
イヤァァァァ・・・・・・・・・・・・・
ひゅ~~!!!どど~~ん!!!
ニュートンの林檎よろしく盛大に落ちた俺。
受け身も何もあったもんじゃない。
おお、奇跡的に無事っぽいぞ。
自分の身体的耐久力に驚きつつも、現状把握。
机に引き込まれた先は見知らぬ土地(異世界?)で
神の代行者的立場的なチート能力を有していたりするのか、俺?
まさかなぁ・・・・・・・・
近くにあった野球ボール大の石を軽く握ってみる。
バリン!!
・・・・俺の握力世界記録?
なんですかこの力。俺ってすげぇ。
おおっと、そんなことしてる場合じゃない。あの親子を助けなきゃ。
視線を上げ、盗賊たちの方向をみる。
あ、失禁してる。おいおい来たねぇぞ。汚物は消毒だな。
方針決定。断罪の方向でいきますぜ。
いつになく強気になる俺。そして盗賊たちは、
「fdsjfhskf38^~~~~~~!!!!!!!」
って言って逃げて行きました。ええーー。
てか絶対、お助け~~とか化け物~~とか言って逃げてったよなあいつら。
一面の雑魚キャラだもんな、あいつらたぶん。
おおっとまた思考するのに奔ってたぜ。
どうも昔からの癖だから抜けないんだよなぁ。
どん!
いきなり後ろから腰辺りに衝撃が走る。
あの親子の子のほうが俺に抱きついて来たのだ。
スッゲーお目目輝かせてるよ。キラキラ星的光線が俺の顔を射抜いている。
少し遅れて母親も駆け寄ってくる。
「fhuawefe:-3ir[r]~=.」
って言って勢いよく頭を下げている母親。大方、ありがとうございますとでも言っているのだろう。それにしても言葉が通じないとニュアンスだけだから通じにくいな。
≪おお、忘れておった。言語解の魔法をかけておらんかったな。ホレどうじゃ。
多分もう通じるぞい。≫
また現れた自称神様の痛い子。
≪誰が痛い子か!!親切にも言語解の魔法をかけてやったのに!!≫
うお、脳内会話してるよおい。てか明らかにそっちの手違いっぽいじゃん!!
≪ホレ、まぁよい(汗)親子が話しかけておるぞ。思考を切り替えい。≫
ん、ほんとだ。
「ホント~~~にありがとうございました。お陰で助かりました。」
おお、日本語に聞こえる。いや、日本語ではないのか。んまぁいっかんなこと。
「大丈夫だった?怪我とかしてない?」
「はい!!大丈夫です!!!!」
子供は元気いいなぁ。
少し間を空けて今度は母親がお礼を言ってきた。
「危ないところを助けていただきありがとうございます。私はアーズ、この子はアイラといいます。ハラルの村から来ました。よろしかったらあなた様のお名前をお教え頂けないでしょうか?」
「あ、こりゃぁご丁寧に。俺の名前は遼っていいます。」
見知らぬ単語が出てきたが、今は飛ばそう。
「遼様ですか。先程は本当にどうもありがとうございました。遼様が居なかったら今頃、
私たち親子はあの男どもに慰み者にされていたでしょう。本当にありがとうございます。」
母親は今にも土下座をしそうな勢いでお礼を言ってくる。
「あぁあぁ、気にしないでください。そして頭を上げてください。」
お礼を連呼しながら頭をあげる母親。と、今度は申し訳なさそうな表情になった。
ん?今度はなんだ?
「私どもは今から出稼ぎで王都まで行かねばなりません。というのも今年は例年になく日照りで、村の作物が全て枯れてしまったためです。遼様にお礼を差し上げたいのですが、明日の食い扶持もロクに保証されない私たちではお金どころか、パン1枚すら持っていません。なのでお礼を差し上げることが出来ないのです。どうぞお許しください。」
そうまで言って、リアル土下座をする母親。子もつられて土下座をする。
おいおい、なんか絵だけみると俺悪者じゃん。
「気にしないでください!お礼欲しさに助けたわけじゃないんで。大丈夫ですよ。ただ1つだけ頼みがあるんですけど、いいですかね?」
「はい。何なりと申しつけてください。」
親子は喜々とした顔で尋ねてくる。
「一緒に王都まで同行してもいいですか?このあたりの地理は疎いんで
出来ればお願いしたいんですけど・・・。」
「はい。私どもこそ、あなたのように強いお方が一緒に同行くだされば
それは願ったり叶ったりなんですが、本当にそんな頼みでよろしいんですか?」
親子はキョトーンとしている。
でも、俺こそ王都に行けるのは願ったり叶ったりだから結構重要な頼みだ。
「はい。実を言うと今も迷っている最中でしてね。よろしくお願いします。」
「わかりました。王都は初めてなんですか?」
「あ、はい。これまで村から出たことがなかったので。」
嘘は言ってないぞ!?嘘は!!!
まだこの世界来て10分くらいしか経ってないんだ。
何としてでも怪しまれることだけは避けたい。
・・・・・この隕石跡見たらだれでも怪しむか。
とにかくこの状況を先に進めなくては。
「あぁそうなんですか。」
「あのね、スッゴイおっきいお城が有ってね、それを囲むように竜騎士隊が飛んでて
とっても凄いとこなんだよ!!」
「へぇ、楽しみだなぁ。」
「じゃぁ、行きましょうか。」
王都への旅が始まった。異世界に来て10数分で。
~~道中~~
あ、ちょうどいい機会だ。この世界の状況も聞いておこう。
「あの、この国って今どんな状況なんですかね?」
あ!!しまった。直球過ぎた。ほら不審な顔してるよ。
「あ、いや、俺の出身の村ってド田舎で、情報っていう情報が入ってこないんですよ(汗)」
「ああ、そうなんですか。この国、ミュルカーシュでは今、戦乱の真っただ中にあります。
今から向かう先、王都ラデロを本拠地とする王派と、ここより西、ミュルゾ湖の南に位置する皇都ファージストを本拠地とする法皇派。王はとてもお優しく、民のことを1番に考えてくださるお方です。それをいきなり法皇様が、異教徒を匿っていると言って兵を挙げてファージストから攻めてきたのです。なんせいきなりの進攻だったために、王がその報告を受ける頃には、もう国のほとんどが法皇様の手に落ちていました。それが今からひと月ほど前になります。それからは王派は必死の抵抗を見せましたが、連戦連敗。もう残るは王都ひとつとなりました。そして今に至ります。」
「そんなところに出稼ぎに行くんですか!?戦いが始まったら大変ですよ。」
「遼様だってその王都に向かわれているではありませんか。それに王都が攻撃されることはありません。」
「ど、どういうことですか?」
「王都には12万の兵が滞在しています。対して法皇軍は8万。数で圧倒的に王派の方が勝っているのです。この戦略差は開戦時はもっとありました。王派の方が圧倒的優位だったってことですね。」
「ってことは今まで負けてたのは、戦略的に王派が劣っていたってことですか?
数の差以上に。」
「そういうことになりますね。それに法皇軍には尽く相手の動きを把握できる星の目と、軍略の天才、カカーザル将軍が着いています。なので勝つべくして勝った、といった方がいいかも知れませんね。」
「うわぁ、そりゃあ連戦連敗だわな。王派もドンマイだなぁ。
ん、てことは王都でも安心できないってことじゃ?」
「王都が絶対に安全なのはもう一つ理由があります。それは王都の立地条件にあります。
王都は王の山という山の上に作られていて、王城から下に段々となって建物が作られています。そしてその一番外側には、高さ20トールの壁が山全体を
覆っています。これを越えるのはもう不可能に等しいですし、この壁を壊すにはもう、
龍か上級魔法使い1000人は必要でしょう。」
「そりゃあ鉄壁だなぁ。」
…トールって何センチ?
≪ふうむ、主の世界で1.5メートルといったところかのう。≫
また唐突に電波系神様が登場。
≪誰が電波系か!ふむ、それにしても、人間界もなかなか荒れてきておるなぁ。≫
切り替え早っ。
まぁそんな感じでアーズさんにいろいろとこの世界のことを聞いた。
要約すると、
宗教はセラス教。総本山が、皇都ファージスト。
大陸全土の7割方がこの宗教に属しているらしい。
法皇、イスルリルート1世、男。
3月ぐらい前に代替わりした。とても好戦的で、異教徒迫害主義者。
いろいろ黒い噂が絶えない。
法皇軍大将、カカーザル将軍、男。
軍略の天才で、いまだ負け知らずの勇将。
いつも仮面を被って戦っている。
王、ミュルカーシュ31世、男。
ミュルカーシュの王。賢王とも呼ばれる。民衆のことを一番に考え、政策を考える
優しき王らしい。
子は息子が3人と娘が2人。男男女女男の順に生まれたらしい。
子供たちもとても聡明で、心やさしいらしい。
そして一番驚いたのは、この世界にはリアル龍や妖精が居るということだ。
さっきの城壁の話のときにも出てきていたが、まさか本当に存在するなんて・・。
あ、魔法も存在するらしい。これも同じくらい驚いた。だって魔法だぜ。
異世界の醍醐味っしょ。俺も使えるのかな・・?
まぁ、そんなこんなあって、夜になった。
俺たちは火を焚き、そこに円状になるように横になった。
今夜は野宿だ。今の季節が9月であったことが幸いしてか、寒さはない。
あ、暦に関してたが俺の現代と同じく1~12までの12月で構成されていて、
各々の月は全て30日で1月という風になっている。俺としては助かった。
この年で暦を覚えなおすとか恥ずかしいったらありゃしないからな。
それにしても俺って順応性高いのかな?
もう日が沈んで、体内時計が12時を指す頃。漠然とそんなことを考えていた。
あぁ、月は一つだ。よかったぁ。二つとかあったら明るくて眠れないもんね。
あぁ俺、帰れんのかなぁ。母ちゃんの飯食いてぇなぁ。
多分順応したんじゃなくて流されていたことに今更気づいたよ。
だって涙が溢れてくるんだもん、俺も母ちゃん好きだったんだなぁ。
父ちゃんにもあいてぇなぁ。みんな心配してるのかなぁ。
考えるのは、感傷。
帰りてぇよぉ、俺。
心底そう思ったその時。
≪帰りたいのか、主は。≫
・・・出たなド変態神様。
≪ド変態とはなんじゃっ!!ホントに主は神に対する礼儀がなっていないのう。
まぁよい。すまぬなぁ、主よ。主は我々神々の代行者として、英雄になるべきものとして
あっちの世界からこっちの世界に召還したのじゃ。≫
はい?それってどういうことだ。
≪我ら神はなぁ、今から約1万年前に戦争をしたのじゃよ。我らと創造主のな。それは世界を割る争いじゃった。元々、剣を一振りするだけで海を割るほどの力を持っていた我らじゃ。その争いで、世界は破滅の一歩手前までいった。創造主の力は強大での、我らは劣勢であった。そこで我々は、その創造主を倒すことを諦め、封印することにしたのじゃ。封印は成功した。しかし、創造主の力は我らが思っている以上に強大であった。
300年前の伝承は聞いたか?≫
いや、聞いてないけど。
≪ふぅむ。300年前な、このミュルカーシュを作った男、ミュルカーシュ1世は
和名を源義経。主の世界の伝説的武士じゃ。≫
うぇ!!義経ぇぇぇ!!?
≪そうじゃ。この義経は、我々があっちの世界から主と同じように召還したのじゃ。
あ奴は戦の天才であった。その頃のこの大陸は、蛮族という、隣の大陸の侵略者によって支配されていた。それを義経は、民衆に声をかけ、決起を促し、その軍勢を率いて5倍以上ある蛮族に戦いを挑み、見事追い返したのじゃ。そして、ミュルカーシュを建国した。あ奴は良く天下を治めていたのう。≫
ん、時間がおかしくないか!!義経は俺らの時代で800年以上前だぞ。
だけどこの世界だと300年って!?
≪こちらの世界とあちらの世界の時間軸は異なっていてな。こちらに来る過程で
数100年飛び越えたのじゃ。≫
・・・・・・・・・・・それじゃ、俺は完全に元の世界には帰れないんだな。
≪あぁ、本当にすまぬ。≫
・・・はぁ、まぁじゃぁ何で俺だったのか教えてくれるか。
≪あぁ。義経の本当の使命は大陸統一ではない。むしろこれはおまけと言ってもいいじゃろう。本当は、創造主の封印が解けかかっていたのじゃ。我らがぬかった。創造主の力は強大無二。絶対といっても過言ではなかったのじゃ。その封印がいつまでも続くはずがなかった。我らはそれに気づいてすぐあっちの世界から選別した義経を召還した。義経は創造主と一騎打ちをし、隙を見せた創造主を我らが再封印したのじゃ。≫
もしかして、また封印が解けかかっているとか?
≪そう、そのまさかじゃ。あの時の我らは急ごしらえの封印しかできんかった。
世界に影響を与えては、この世界が崩壊する危険性があったのでな。≫
そ、そんな・・
≪なので、もう一度封印ないし打倒しなくてはならなくなったのじゃ。≫
なんで俺だったんだよ!
≪主は人間を越えるスペックがあったからじゃよ。≫
・・・・・どういうことだ?
≪あっちの世界からこっちの世界に召還する時、我々は神の代行者たるべき人間に
付加をあたえる。これは、創造主と渡り合うためじゃ。これには人間一人一人に限度、リミットが有るのじゃ。普通の人間が100を限界としよう。義経は100000000じゃった。義経は元来人以上の能力を備えていた。それに付け加えて我々の付加で創造主と互角同然に戦えるようになったのじゃ。≫
・・・桁がずいぶんと違うな。義経は化け物かよ!
≪主はそれ以上のスペックを持っておる。我も最初は目がおかしくなったかと思ったぞ。≫
どのくらいなんだ?正直自分では100以下な気がするんだが。
≪主のスペックは10000000000000000000。つまり1000京じゃ。≫
・・・・は!?どんなチートだよ!!軽く義経越してんじゃん。
≪ああそうじゃ。だからの、我ら神全ての付加をかけてもまだまだ余っての。
主には、いずれ精霊族や龍族の付加も掛けてもらいに精霊の里や龍の里に出かけて行ってもらおう。まぁそれでも余るじゃろうのぅ。≫
俺、じゃあ義経よりも強かったりするのか?
≪無論じゃ。義経の100000000000倍は強い計算になるの。≫
じゃぁ、創造主余裕じゃん!!
≪そうでもないぞい。300年前は覚醒する前だったからの。今回は多分最初からふるばぁすとじゃろうからして。精霊族、龍族の付加を足して、五分ってとこかの。≫
どんだけ凄いんだよ創造主。そして俺も。
人間越えましたね、俺ほんと。
≪泣きやんだの。大丈夫か。≫
あぁ、突拍子もない話すぎて、呆れてきたぜ。俺自身に。
≪・・・・・怒りはしないのか?≫
あぁ、これは自己責任だ。そう思う。自分に力があったが宿命ってやつさ。
それにお前にだって事情があったんだろう。仕方がないさ。
≪・・ありがとうのう。遼。≫
あぁ。でもしばらくはその想像主ってのの封印は解けないんだろう?
≪うん、そうじゃな。あと9月ぐらい先かの。≫
そっか、わかった。あ、肝心なこと言ってないじゃんお前。
≪肝心なことじゃと、なんじゃ?≫
なぜ1万年前、創造主とお前らが対立したかだよ。一番肝心じゃん。
≪おお、そうであったな。それはの、創造主が、自分の作ったものが気に入らなくての。新しい世界を作ると言い出したのじゃ。それだけならまだよかったのじゃがの。我ら神以下、人間、龍族、妖精族、などなど全てのものを消すと言い出したのじゃ。
我らはそれを傲慢じゃと思った。命はたとえ創造主といえども、気安く壊してはならぬもの。我らは世界を守ろうと戦ったのじゃ。≫
そうか。・・・まぁほどほどにやってみるさ。疲れない程度にね。
≪お願いする。≫
はいはい、お願いされました。じゃぁ俺寝るからお休み。
≪・・・お休み、遼。≫
~~~~~朝~~~~~
世界にまた始まりの太陽が昇る。世界に光が返ってくる。
その光は生きとし生けるものすべてに降り注ぎ、例外なく俺の元にも平等に注がれた。
「ふあぁぁあぁ・・・ねむぃ。」
昨日はいろいろなことが有った。突然異世界に来させられて、盗賊から親子を守り、
果てはチート英雄だと神から告白された。
もう何が起こっても驚かない自信がある。いや、驚かないだろう。
俺は、眩い光を放つ太陽から体をそむけるような形で起きあがった。
ヤッパここは地球じゃない。改めて思い知る。
なんせ眼前には、トカゲとカエルを足して2で割ったような生き物が
大群をなして大移動をしている真っ最中だったからだ。
こんな生物、某〇岡ひろし探検隊でもそうそうでないUMAだよ。
俺、異世界来たんだなぁ。
またもや感慨する。
だが神から告げられた壮大な現実と寝起きで空虚な自我は、俺に2度寝という選択肢を
選ばせる。寝てからいろいろ考えようと。所謂現実逃避だ。2度寝だけどね。
寝床に戻って気付いたが、あの親子の姿が見られない。
荷物が定位置に置かれてているため、顔でも洗いに行ったのかなぁと思い、
俺はさっきはで寝ていたところに腰を落とす。
ガサガサ
不意に草をかき分ける音が背後からし出した。
もしかしてまた盗賊とか・・。いや今度は大型のUMAが俺のことを食べに来ていたり!!
冷や汗がじゃんじゃん出てくる。基本的に凡人の学生でしかなかった俺が、1日、2日で
最強になったところで、精神面まで最強にはなれない。やはり怖いものは怖い。
恐る恐る振り向いてみると、そこには今まで想像していた地獄ではなく、まさしく失楽園しそうなほど熟れた林檎の実のごとき少女が立っていた。全裸で。
「・・・・・・・・・・・・・・・!!」
相手は俺に気づいて驚愕な表情を浮かべでいる。
俺はなんだか見惚れていた。これまで1度たりとも女の全裸など拝んだことのない
自分であったから、他の子と比べるということはできなかったが、俺がこれは出会った中で間違いなくこの子を超す女はいなかったと断言できるほど、その女性は専念された美しさを持っていた。
なので、不純な煩悩も出るタイミングを失ったかのように、出てこない。
その女性はやっと声を発せる程落ち着いたのか、第一声を発した。
「きゃあぁぁあああぁぁっぁぁぁぁぁあぁ!!!!!!」
「うわっ!ご、ごめん!!」
急いで目線を外し、謝罪をする。
何このいきなりおいしい展開!!スンゴクごちそうさまな気分だよ!!!!
興奮MAXフルスロットルで思考を変な方向に持ってかれる。
てか最高っす。生きてて良かったっすよ俺。
でへへ・・・・って、俺!!紳士になれ!!!
強制的に変態思考から抜け出しす。
さて、視線をそらしずつ、その女性に尋ねる。
「あなた誰すか?」
女性は木の陰に隠れて、こちらを覗っている。
「変態に名乗る名は無いわ!」
いと毛嫌いされたり。
「いや、君が全裸で出歩いているのに問題があるんじゃ・・。」
「うっさいわド変態!!」
「まぁ、とりあえず服着たら?」
「あ・・・・バカぁ!!!」
理不尽この上ない状況。俺は悪くないよな、うん。
その女性は服を着て、警戒しながら俺に近づいてきた。
あ、顔赤い。可愛ええなあ。
「もう一度聞くけど君の名は?お、俺は藤宮遼って言うんだけど。」
「・・・・セレスティア・クリストフォールよ、変態。」
「いやだから君が全裸で・・「うっさいわよ!!」・・・・・しょぼ~ん(´・ω・`)」
なんでこんな理不尽なんだよ、ちくしょう!!!
ネタ分かる人いるかな?
「私だってまさか男がいるとは思ってなかったのよ。」
「そうか。まぁ、気にするな。俺は8割ぐらいしか見てない。」
親指をたてる俺。セレスティアにGood job。
「ほとんど全部じゃない!!!」
「ははは、元気だなぁ。セレスは。」
「・・・初対面の男に裸見られて、おまけに愛称まで言われてる私って・・グスン。」
あ、なんか泣いちゃったよ
どうしよう。泣かれるのは俺の良心があ、イタイイタイ病だぁ!!
あ、そうだ。俺は急いでポケットを探る。あったあったっと。
「ほい、これ舐めな。」
俺はセレスに飴を渡す。
泣いていた顔を怪訝な顔にして飴を見つめる。
あ、怪しんでるのか。
ポケットからもう一つの飴を取り出して口に放り込む。
「ぽら、大丈夫だから。甘いよ。」
「・・・・・頂戴。」
その小さな口に飴を放り込んで、味わっている。お、笑顔になってきた。良かったぁ。
「美味しい!!!これはなんて食べ物!?」
「飴だよ。」
「飴っていうのね。こんな美味しいもの食べたのは初めて。・・・さっきはごめんなさい。私、冷静さを欠いてたわ。私が悪かった。」
「気にすんなって。」
てか俺も役得だしな。
決して口にはできないので心の中で呟く。するとセレスはいろいろと質問をしてきた。
俺の付けている腕のブレスレットのことや目的地、そして後ろの剣のことなど。
ん、剣?
俺は後ろを振り向いてみる。そこには異様な神々しさを放つ剣が一本置いてあった。
なんだこれ。知らないぞ。
心の中という無線機で会話開始。
おい、この剣はなんだ!
≪なんじゃ、朝っぱらから。ん、おお気がついたか。それはの、エアソードじゃ。≫
やっぱりお前の仕業だったか。んでこのエアソードはなんなんだ?すごい神々しい雰囲気がするが。
≪それはの、神の希望が詰まっておる。スペックの話は覚えているの。≫
おお、まぁな。
≪この剣はの、神の希望を全てつぎ込んで作った剣なんじゃ。お主にはスペックいっぱいに神の力を注いだが、この剣は神の希望から作られた剣ということじゃ。≫
・・・また突拍子もなく凄い物作りやがって。
≪その剣はお主しか使えんぞい。お主以外が持っても普通の剣と変わらんからの。
しかしお主が持つとそれは創造主の一撃と同等の力を持つようになるじゃろう。軽く振ればお主の国でいう富士山級の山が、全力で降れば大陸が消滅するぐらい強力だからの。くれぐれも気をつけて使ってくれよ。≫
そんなんどういう状況で使えって言うんだ。
≪想像主との戦いのときじゃの。≫
・・・もう少し手頃な剣もくれないか。この剣は想像主戦以外使い道ないからさ。
≪仕方ないのぉ。ほれ、これらから選ぶのじゃ。≫
そう神様が言うと、脳の中に剣のイメージが入ってくる。次々と。
ヤバそうな剣ばかりがイメージに入ってくる。次々と。
≪これらはの、お主の世界の神話で登場する剣じゃ。草薙の剣、レーヴァテイン、天沼矛、干将・莫邪、天之尾羽張、打神鞭などどうじゃ?≫
よし、全部くれ。
≪おいおい、冗談じゃろ(汗)≫
くれ。
≪む、無理じゃ。お主これは神器じゃぞ≫
く・れ。
≪も、もってけ泥棒!!≫
毎度(笑)
俺って商売上手。
ついでにさ、防具なんかもくれないか?
≪はい!?これは・・≫
く・れ。
≪悪魔が(泣)もういい。そこまで言うならこれをもってけ。≫
そう言うと、イメージが頭の中に入ってくる。
俺の装備は人外になった。
武器:草薙の剣。レーヴァテイン。天沼矛。干将・莫邪。天之尾羽張。打神鞭。デュランダル。グラム。エクスカリバー。アンスウェラー。カラドボルグ。ロンギヌス。ヴァジュラ。ミョッルニル。三叉槍。ブリューナク。ハルパー。ゲイボルグ。グングニル。
盾:アイギス。オハン。
防具:オリファルコン製の防具。
靴:ヘルメスの靴。ロキの靴。
アクセサリー:八咫鏡。八尺瓊勾玉。ソロモンの指環。ブリーシンガメン。
説明は省くが、俺でもいくつかは知っているほど有名な神器だ。
人外言って言うかもう俺、神より強いんじゃね。
≪当り前じゃ。お主にかなう者など一人もおらんじゃろうの。≫
・・・なんか複雑な気持ち。
ま、いいか。強いんだし。・・・そう言えば神器さ、何であれの世界のばっかなんだ?
≪我ら神は、どちらの世界でも同じような存在なのじゃ。わしはこっちの世界ではロード。主の世界ではゼウスと呼ばれておったの。これらの神器はわしの趣味で集めたものじゃ。≫
おまえゼウスだったのかよ!!!
てか趣味って・・・・。
≪そんなに驚くことか?≫
悶絶するぐらいビックリだ。
≪とにかくこれらのアイテムは主が望めばその手に現れる。常に持ち歩かなくても大丈夫じゃ。しかしエアソードだけは常備しておけ。それはお主の片腕じゃ。その剣はいろいろのことを知っておる。その剣は我らの希望じゃからの。亜空間にしまっておくわけにもいかんのじゃよ。≫
あぁ分かった。それじゃあな。
≪うむ。≫
思考を戻す。
ちなみにこんなに思考内で喋っているけど、時間にすれば数秒ぐらいなのだ。頭で直接
意思疎通ができるので、伝わるのが早いのだ。楽だな、うん。
セレスは、お~いと声をかけてくる。
「あ、すまん。ボーとしてた。」
「だから、この剣はなんなの?なんだか雰囲気が剣とは思えないんだけど。」
言っていいのかな?ま、言うなとは言われてないし、この子なら大丈夫かな?
「ん~~、神の剣。」
「は?」
案の定危ない人を見るような目線をくれるセレス。
ホントなのに。
「神の剣?真剣に答える気ある?バカにしてるの?証拠を見せなさいよ!!」
えぇ~~。使うなって言われてたんだけどなぁ。
「空にでもいいか。大地にやると、ヘタすりゃこの大陸が壊れるから。多分。」
「・・・嘘つきは嫌われるよ。」
ムカ!簡単に切れる俺。嘘じゃないもん(泣)
「ホントだったらどうする?」
「その時はなんでも言うこと聞いてあげる。」
「その言葉忘れなさるなよ。」
俺はエアソードを鞘から抜き、構える。
なんか体中に流れてくる。
俺は軽く空に向かって剣を振ってみた。
ブオン!!!
身体能力が上がっていたので、剣の軌道は、常人では見えないほど速い。
振りぬいた瞬間、剣から波動のような剣圧が出る。まるで彗星のようだ。
それが雲をぶち抜いて、空から雲を消滅させる。
ホントに人間辞めちまったなぁ俺・・・。