自称転生魔王の寝言が、紙飛行機で飛んできた
僕が見た、長い長い夢。テストの裏にそいつを書いた紙飛行機を飛ばしたら、誰に届くかな。
昔々あるところに、魔王がいました。
強くて賢くて、仲間もたくさん。いつか本当に王様になると、みんな思っていました。
でも彼は気づきません。仲間の心が、ちょっとずつ離れていることを。
ある時、外国人がやってきました。魔王が大好きな、新しい物や面白いお話を持って。
「よくばりも、
食べ過ぎもいけません。
怒るのも、
羨ましがるのも、
自慢も減らしましょう。
好きな女の子は一人だけ。
ちゃんと働きましょう。
みんなそうすれば、世界は良くなります」
あれっ?
――みんなのその気持ちを叶えたら、もっと良い世界じゃないか?――
そう思った魔王、仲間達とお話しします。
まずは一番賢い将軍。
「なんで賢い君が、すぐ人をうらやましがるんだ?」
「その気持ちがあるから、もっと強くなれるんです」
「みんなをよく見るから、君は賢いんだね。さすがだよ」
女の子を追っかける、賢いお猿。
「君は奥さんがいるだろう?」
「子供ができにくい病気で、辛い顔を見てられず、つい家を留守に……」
「君には沢山の友達がいるよね? 医者だっている。奥さんを助けるんだ」
はらぺこたぬき。
「優しい君も、ご飯になると我を忘れるね」
「ご飯は大事です。健康と笑顔のために」
「なら誰もその健康と笑顔を無くさないよう、君の力を貸してくれ」
いかついおじさん。
「誰よりも強いと思い続ける。そのために鍛えてきた」
「なら証明してよ。強い人とだけ戦えばいい」
お茶好き商人さん。
「茶碗がどんどん高くなるよ?」
「お金は心を豊かにできまへん。文化こそ本当の価値」
「なら、心の豊かさを共有するといいよ」
怠け者さん。
「働きたくないです」
「ならあの頑張りすぎる、お坊さんの国の前で寝ていなさい。暇なら彼らに手紙でも書いてみて」
最後は美しい、魔王の妹。
「お兄様! また人が泣いていますわ!」
「君が気づいた人の痛みを全部、僕に持ってきてよ。美しい君の歌声で、彼らを慰めてほしい」
「……わ、わかりましたわ!」
お話していた魔王は、いつの間にか本当の王様でした。王様は、星になっても見守りました。海を超えて冒険する、仲間や子供達を。豊かな世界で輝く笑顔、まっすぐな眼差しを。
人の欲しいもの、食べたいものを作ったり。
人の情熱を理解したり、好かれる努力したり。
人を褒めたり、羨まれるまで自分を磨いたり。
みんなの暮らしのために、知恵をしぼったり。
そう。「七つのいけない」は、誰かのそれをかなえると、「七つのやさしい」に変わりました。
お読みいただきありがとうございます。
登場人物
織田信長
宣教師さん
明智光秀
羽柴秀吉
徳川家康
柴田勝家
千利休
佐久間信盛
お市
この作品は、以下の長編作品の登場キャラが見た夢を、そのキャラが童話的にリメイクし、さらに具体的なキャライメージを付け加えてみた、と言う形になっている物です。実際の流れは、第五話、第十六話と繋がっています。
AI孔明 〜人前に出られない転生AIは、みんなの軍師になる〜
https://ncode.syosetu.com/n0665jk/