#9 俺のサーブ
練習を重ねる中で、俺はついにサーブの練習に取り掛かることになった。フォアハンドやバックハンドの感覚は少しずつ掴めてきたが、サーブはまったくの別物だった。ババロフが言うには、サーブはゲームの流れを決定づける重要なショットだという。だが、今の俺にはその難しさを実感するだけだった。
初めてのサーブ
俺はボールを持ち、コートのベースラインに立つ。周囲は静寂に包まれ、緊張感が高まる。
「まずは、正しいフォームを意識しろ。ラケットをしっかり握り、ボールを持ち上げる」
ババロフの声が耳に響く。俺は心を落ち着け、ラケットを構える。ボールを空中に投げ上げる。
「いけ!」
投げ上げたボールは高く舞い上がるが、俺の手元に戻ってくる。
ラケットが振り下ろされるが、ボールはネットに引っかかり、そこから跳ね返った。
「くそっ、最初からうまくいかないのか?」
苛立ちが俺を襲う。
繰り返しの中の苦悩
何度もサーブを打ち続けるが、なかなか成功しない。ボールはネットを越えず、または大きく外れてしまう。
「これじゃあ、勝負にならない。何が悪いんだ?」
俺は自分の腕を恨みながら、再びボールを投げ上げる。
「サーブはリズムだ、タコ。心を落ち着け、動きを統一しろ」
ババロフがアドバイスをくれるが、イライラが募る。もう一度、ボールを持ち直し、心を整える。
サーブのコツをつかむ
投げ上げるボールは再び空へ。ラケットを振り下ろす瞬間、俺は身体全体を使う。だが、ボールはまたもやネットに引っかかる。
「なんでなんだ!?」
つい声が漏れる。自分に対する苛立ちが、無意識に声を大にさせた。
「お前は焦っている。冷静になれ。サーブは、力ではない、コントロールだ」
ババロフの冷静な声が、俺の心に響く。何度もサーブを試みる中で、次第に動きが整理されていく。ボールをしっかりと見つめ、体重移動を意識する。
成功の瞬間
そして、また一度サーブを試みる。
ボールを空中に投げ、振り下ろす。
パコッ!
音が鳴り、ボールは高く舞い上がる。ネットを越え、相手コートに入る。
「……入った!!」
思わず声が出る。成功の感覚が俺を包む。
「よくやった、タコ!だが、これはほんの始まりだ。繰り返し練習して、安定させなければならない」
ババロフの言葉に力を得て、俺は再びサーブの練習を続ける。成功の味を噛み締め、次のボールを持つ。
さらなる挑戦
だが、サーブはそう簡単には安定しない。何度も繰り返し挑むが、成功した後の次の一打は、またしてもネットを越えず、地面に落ちてしまう。
「くそっ、何が足りないんだ!」
焦りが再び俺を襲う。心が乱れ、集中力が切れかける。
「タコ、焦るな。ここで崩れるわけにはいかない。リズムを思い出せ!」
ババロフの声が俺を落ち着かせる。俺は深呼吸し、心を整える。
再び、ボールを空に投げ上げる。
ボールが舞い上がる。ラケットを振り下ろすと、今までの焦りが消え、リズムが掴める。
パコッ!
音が響き、ボールはまたしてもネットを越える。成功の連続が少しずつ俺の自信を取り戻させていく。
「これだ!!これが俺のリズムだ!!」
だが、完全に安定するまでにはまだ道のりが長い。サーブの壁は高い。
それでも、俺は前進する。
「次はもっといいサーブを打つ!」
決意を新たにし、俺は再びサーブの練習に挑む。
サーブの練習を続ける中で、俺は自分自身の成長を感じ始めていた。周囲の静寂の中で、俺の動きがサーブのリズムを生み出していく。
ババロフは時折、俺の動きを見守り、成功した瞬間には笑みを浮かべてくれる。
次第に、サーブの感覚が俺の一部になっていく。仲間たちと共に戦うための基盤が築かれていく。
そして、俺はさらなる成長を目指し、毎日サーブの練習を重ねる決意を固めるのだった。
「俺のサーブを見つけてやる!!」
その言葉が、心の中で燃え上がる。俺はこの新たな挑戦に立ち向かう準備を整えていた。
サーブの壁を越え、次の段階へ進むための道を歩み始める。
これからの練習が楽しみで仕方ない。
俺の旅はまだ始まったばかりだが、確実に一歩ずつ進んでいる。
ウィンブルドンの舞台に立つ日を夢見て、俺はこの道を進んでいく。