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#7 リズム

時が経つにつれ、夜の闇は深まっていく。公園の周囲は静まり返り、風が冷たく吹き抜ける中、俺はひたすらにフォアハンドを打ち続けた。意識が朦朧としてきても、体は自然に動き続けた。


「タコ、もっと深く意識を集中しろ。お前の心が、ラケットと一体になるまでだ」

ババロフの声が俺の耳に響く。頭の中が空っぽになるのを感じながら、無心でボールを待った。


「来い!」


再び、ババロフの放つボールが飛んでくる。

ボールが弾んだ。

俺は触手をしならせる。

パコンッ!

一瞬の静寂の後、心地よい音がコートに響いた。ボールはまたもやネットを越え、相手コートに吸い込まれていく。


その瞬間、何かが変わった気がした。俺の中でリズムが生まれ、フォアハンドが俺の一部になっている感覚。


「おお、いいぞ、タコ!今のはお前自身の力だ」

ババロフが声を上げる。俺はその言葉に励まされ、再び打ち返しの準備をする。


「来い、もっと来い!」


次々と放たれるボール。俺はそれに対して、次第に反応が鋭くなっていく。力みを抜き、体のリズムに合わせて、ラケットを振り抜く。


「まだまだ!何度でも打て!」

ババロフの言葉が、俺を刺激する。俺は疲れを感じず、ただひたすらに打ち続ける。初めての快感が、心を高揚させる。


孤独の中の仲間

その時、俺は気づいた。ここにいるのは俺一人だけではない。孤独の中で、俺は新たな仲間と出会っていたのだ。ラケットは俺の仲間、ボールもまた俺の仲間。彼らと共に、戦っている。


次元を超えた一撃

何度も、何度もフォアハンドを打つ。体が疲労に襲われ、呼吸が乱れる中でも、リズムは途切れない。新たな境地に入る感覚。


次の瞬間、ボールが目の前に来る。俺は無心のまま、触手をしならせ、最も力強い一撃を放った。

ズドンッ!!

音が周囲に響き渡り、ボールは見えないほどの速さで飛び出していく。


「……今のは、違った」

思わずつぶやく。自分でも驚くほどの力が込められた一撃。これが、俺の本当の力か?


新たな夜明け

ババロフの目に光が宿る。

「その感覚だ、タコ。お前はまだまだ進化する。俺が教えた通り、リズムを掴め」

その瞬間、俺は確信した。これが俺の新たな旅の始まりだと。テニスは、俺の存在を証明する舞台であり、孤独を超えて仲間と戦う場所でもある。


俺は再びボールを待つ。これから先、何度でも打ち続ける。どんな困難が待ち受けていても、俺は立ち向かう。


続く練習の中で

その夜、俺の心の中には新たな炎が灯った。フォアハンドの一打が、俺の人生を変える瞬間の前触れのように感じられた。

ババロフと共に、俺は新たな技術を磨く。

次の一撃、次の試合――すべてが待ち遠しい。


「これが俺の選んだ道だ。テニスが俺の全てになる!」


深夜の冷気が体を包む中、俺は無心でボールを打ち続けた。リズムは次第に確立され、俺の体とラケットがひとつになっていく。


新たな目標に向かって

やがて夜が明け始める。薄明かりの中で、俺は今まで以上に力強く、フォアハンドを振るう。新たな目標が生まれた。それは、ウィンブルドンの舞台で、勝利を手にすることだ。


この瞬間から、俺はただのタコではなく、テニスプレーヤーとしての人生を歩み始めた。

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