#39 圧勝
5-3。あと1ゲーム取れば、俺は初めての公式戦で勝利することができる。
だけど、ここからが本当の戦いだ。トムも焦っているのが見て取れる――彼のラケットを握る手は少し震え、額からは汗が滲んでいた。
「ここで気を緩めるな……最後まで全力で行け!!」
俺は深く息を吸い込み、自分を落ち着かせた。何度も練習した。俺にはキックサーブと右曲がりライジングスライスがある。もう迷わない。
俺のサーブでゲームが始まる。まずはキックサーブ。ボールを高くトスし、全身をバネのように使ってラケットを振り抜く。
「うおっ!」
トムはなんとか返球しようとジャンプするが、ボールは彼のラケットを滑り落ち、無様にネットに引っかかった。
15-0。よし、まずは1ポイント。
次は、相手にペースを掴ませないためにスライスを使う。トムのバック側に、速い球足で低く沈むスライスを放つ。
「ぐっ……」
予測しきれなかったトムはぎこちない姿勢でボールを打ち返すが、球は弱々しく俺のコートに返ってきた。チャンスだ。
俺は素早く前に詰め、逆クロスに叩き込むように強打する。
「決まった……!」
トムは何もできず、そのまま立ち尽くす。30-0。流れは完全に俺のものだ。
次のポイント、俺は勢いに乗りすぎて狙いすぎた。キックサーブを放とうとして、トスがずれてしまう。焦りながら強引に振り抜いたが、ボールはわずかにラインを外れる。
「アウト!」
くそ、無理をするなと自分に言い聞かせる。相手もまだ諦めていない。30-15。
次のポイントで、俺は再びキックサーブに全てを賭けた。今度は完璧なトス。ラケットが当たった瞬間、心地よい手応えがあった。
ボールは高く弾み、トムのバックハンド側に跳ね上がる。追い込まれたトムが無理やり打ち返すも、その球は甘い。
「これで終わりだ。」
俺はすかさず前に出て、逆クロスに右曲がりライジングスライスを放つ。
トムは間に合わない――打球はラインギリギリをかすめ、トムの視線を置き去りにするように滑り込んだ。
初めての勝利
「ゲーム、セット、マッチ、6-3!」
審判の声が響き渡る。俺はラケットを握りしめたまま、静かにガッツポーズを作った。
勝った。初めての公式戦で、俺は勝利を手にしたんだ。
ババロフの視線
試合後、ババロフがコートサイドで待っていた。無表情だが、目の奥には確かな期待があった。
「よくやった、タコ。だが、これは始まりにすぎない。」
彼の言葉には厳しさと優しさが同居していた。
「お前は武器を見つけた。しかし、その武器をさらに研ぎ澄まさなければ、これからの戦いには勝てない。」
さらなる高みへ
俺は頷いた。自分がまだ成長の途中だと、そしてさらなる高みがあると感じていたからだ。
トムに勝てたことで得た自信は大きいが、次の戦いがすぐに待っている。目指すはウィンブルドン。そのためには、もっと強くならなければならない。
俺はコートを見つめ、静かに決意を新たにした。
「ここからだ、俺のテニスは――」




