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投資らいふ、時々副業夢想  作者: とうきのかえる
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6 ベッドを買う

 ゴールデンウィーク、沙優は歩いて30分の商業施設に来ていた。前年度の貯金が目標の100万円を超えていたため、目標金額を超えた一部を使ってベッドを買おうとやってきたのだ。使えるものを捨てるのにとても抵抗を感じるタイプなので、なるべく吟味してものを買おうと思っている。そうそう買い替えるものではない家具は特に慎重に行きたかった。

 とはいえ、沙優は完全なるペーパードライバーで、免許証は身分証明書としてしか使っていない人間である。郊外の商業施設を何軒も回るのは難しく、有名な家具チェーンのサイトをいくつかみてあたりをつけ、シンプル家具で人気の店にやってきた。ちなみに彼女はゴールデンウィークを全て独りで過ごすわけではない。と言うか、その危険性がある事がわかっていたので、職場の同僚に声をかけて近場に遊びに行き、楽しく過ごしてきていた。休日は1人のことも多いが、交友関係はまあないことはないのである。

 売り場を見ると、ネットで目をつけていたベッドが展示してあり、やはりそれが良さそうだった。シンプルなつくりだが、頭の方のヘッドボードというらしいが少し曲線になっていておしゃれな気がする。さっそく彼女は定員さんを見つけて購入手続きをした。

 ベッドは配達になり、思ったより時間がかかるようで、一ヶ月と少し待つ事になる。それまでにシーツを買う必要があるので、売り場を見たが、沙優が欲しい感じのものはなかった。ここはシンプルが売りの店なので、ベッドカバーなども当然シンプルだが、彼女はインパクトのある柄の、センスがいいカバーが欲しかったのである。こういうと趣味が悪い人なのかなと思われるかもしれないが、彼女が人生で一番、面と向かって言われたことのある褒め言葉はセンスいいですね、である。こういうのは美人だったり可愛かったりしない女の子や女性にいう言葉なのだと沙優は斜めにみていたのだが、最近自信を持ち始めている。というのも、ある有名女性作家がセンスがいいと言われたことがないと嘆いていたのである。センスがある程度良くないと褒められないのなら、やっぱり沙優のセンスはいいのだろうと自分を見直したのだ。沙優が捻くれていることが分かるエピソードである。

 お金を貯めたいので比較的無駄遣いをしないようにしている沙優だが、一人暮らしの理想の部屋を飾るために昔から少しずつ好みの雑貨を買い揃えていた。遠出をした時などに自分へのお土産がわりに買ったものも多い。実家にいる時から、使っていないスプーンとフォークを3本ずつ持っていたりしたのだ。将来の家族構成を3人と想定していたのかと物悲しく聞こえるかもしれないが、本人は友達招くなら3つくらいいるよね、という気持ちである。言い訳のように聞こえそうなので、あんまり人には言いたくないとは思っている。他にも、大学で2週間程度の短期留学をした時に、あまりに可愛い水玉模様のヤカンを見つけたのでスーツケースに押し込めて買って帰ってきたこともある。それならベッドカバーも買っていてもおかしくないはずだが、実家では母の意向に従うことになるので、売り尽くしのための大幅値引きで買ったベッドカバーを10年は使っていた。まあ、雑貨売り場にはあまりベッドカバーが売っていないので買うチャンスがなかったのだろう。

 これまでベッドカバーを探してこなかったことを後悔しながら、他の売り場も回ってみたが、これというものを見つけられなかったので帰ることにした。ネットで良いものを見つけるつもりである。ちなみに沙優はもう数ヶ月チェックしていないので知らないが、A社の株価は2100円台と大幅に下落している。20万円以上の損である。証券会社のアプリをみれば必ず、損失が出ている事を示す赤い文字が目に飛び込んでくるのでアプリをみたくないのだ。多少の損は気にしない沙優でも、大きい金額の損が出ていることを突き付けられればどんよりしてしまう。というか、大きい損が出た時こそ現実を直視して対応すべきな気がする。C社の株価は少し戻して2400円台だが、そちらも数万円の損が出ている。このまま現実逃避を続けたらどうなってしまうのだろうか。心配である。

この作品中の会社、人は全てフィクションです。

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