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投資らいふ、時々副業夢想  作者: とうきのかえる
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5 宝くじを買う

 年が明けて3日、実家から帰った沙優は荷物を置くと、棚に駆け寄った。

「この辺に置いたと思ったんだけど。あ、あった」

取り出したのはバラの宝くじ10枚である。彼女はお金は欲しいがギャンブルはしない。というか、全くしたことがないので、どういうものかも分かっておらず、なんか怖いイメージを持っているのである。株も現物のみである。現物以外に何があるかというと、信用取引がある。現物取引は株価と同等のお金を用意して、そのまま買う実直なスタイルだ。一方の信用取引はお金や株を証券会社から借りて行うので、自分のもつお金以上の取引ができるが、上手くいかなかったら困ったことになってしまう。彼女はそれに手を出すつもりはなかった。

 宝くじも手を出したことはなかったが、定職について少し余裕もできたことだし、株もぱっとしないので、思い切って買ってみたのだ。宝くじならとりあえず買った分以上に損はしないし、のめり込みこともないだろうと考えたのだ。

「あたったら、3億は貯金と投資で、2億を寄付して、残りはどうしよっかなー。むほほー。中古マンション買っちゃう?」

沙優は一攫千金を夢見てはいるが、分不相応な贅沢がしたい訳ではない。何か不測の事態が起こって仕事を続けられなくなっても、生活できるという安心感が欲しいのだ。それに、心が痛むニュースも多いので、お金があったら何かしたいとも思っていた。年末には実際に数万円の寄付もしている。公務員試験に合格する前は気持ちの面でも荒んでおり、少し安定した今でも、困っている人のことは他人事とは思えないのだ。

 宝くじの当選金で何をするか妄想するくらいには楽しみにしたが、宝くじのことを忘れて年末実家に帰ってしまい、今ごろ当選しているか確認しようとしているのが沙優らしい。お金は欲しいが、半分趣味みたいなもので、本人に切実感はない。ただしそれも就職できたからである。以前はもっと荒れた心でお金を欲していた。

「ええと、1等の組がこれだから、クジの方は・・・。うーん、1等はなしか。前後賞もないし。残念」

結局、5等の300円しか当たっていなかった。

「めちゃくちゃ倍率低いし、こんなもんだよなー。高額当選する人は定期的に買ってる人が多いって言うし」

とは言え彼女は、定期的に買ってまで当選を狙うつもりはない。確率が低すぎるので、それならもっといい方法があるに違いないと思ってしまうからだ。

 株はA社が3600円台、C社が2300円台とかんばしくない状態で一年の取引を終えているのだが、沙優はほとんどアプリを見なくなってしまっているので、意識にも上っていない。本人はわかっていないが、株の方もうまくいっていないのだった。宝くじの当選確率が低すぎるとか言っている場合ではない。ちなみに、婚活の方もうまくいっていない。こっちの方は本人も自覚がある。あまりうまくいかないので結婚はもういいかもと思うようになってきた沙優である。色んなことがうまくいっていない可哀想な状態だが、本人はあまり気にしていないのが救いだった。

この作品中の会社、人は全てフィクションです。

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