10 株価、急伸す
5月、株価が急伸していた。と言っても、日本の株が全体としてそうなのではない。実際、日経平均は新型コロナウイルスのショックで一旦は急落した。そこから日経平均は以前の水準に戻りつつあるが、以前より高くなっているわけではない。どういう事かというとIT関連株が好調なのである。コロナでどこもかしこもオンライン化を迫られてIT関連株の人気が急激に高まったのだ。沙優はIT株を狙って買っていた訳ではないが、株価が10倍になる可能性があるような、上場してすぐの株を買っていたので、必然的にIT関連銘柄を持っていた。
彼女は公務員なのでコロナ対応でしばらく忙しかったのだが、久しぶりにゆっくりできる休日である。1週間ほど前からA社もC社も株価が伸びている事には気がついていた。そしてついに、A社の株価が沙優の購入価格をかなり上回った。損切りをせずに現実を直視していなかっただけなのだが、なんかいい波がきている。彼女は6010円で売り注文を出した。あれ?テンバガーを目指すのではなかったのだろうか?株価10倍を目指すなら今は売らずに持ち続けるべきな気もする。しかし、下がった株を損切りもせずに持ち続けることになり後悔していた沙優は、これ幸いと売ることにしたのだ。
その翌日、昼休みもなく働いて、残業が終わってすぐに携帯を開くと、約定を知らせるメールが来ていた。15万円以上の儲けである。沙優の心は浮き立った。しかも、A社の株価チャートを見てみると、売った価格よりかなり下がって今日の取引を終えている。これはもう一儲けのチャンスなのではないだろうか。沙優は家に戻ると、終値より少しだけ高い5380円で買い注文を出した。さらに稼ぐ気満々である。最初にA社の株を買ったのは、高齢化社会の課題をITで解決しようという理念に惹かれたからでもあったのだが、そんな事はもう吹き飛んでいる。まあ、ずっと株価が低迷していた時点で、応援とかそういう気持ちは少なくなっていたのだが。そんな事より今は儲かった現金である。沙優は証券会社のマイページで15万円の利益をながめて、心ゆくまで、にまにました。
ラッキーなことに翌日にはA社の株を再び買う事が出来た。沙優は、夢よ再びと買い値より6万円以上高い5990円でA社の売り注文をさっそく出した。6000円より少しだけ低いのは、節目の株価が意識される事が多いので、節目の少し手前で株価の上昇が止まることがあるかもしれない、その時でも売れるようにしたいとの素人考えである。10円くらいでは影響はないだろうから、割と無駄な思考なのだが、沙優は真剣だった。更なる儲けがかかっている。
しかし、A社の株は少し下がったまま、なかなか上がらない。失敗したかなと思ったが、どうしようもないので、待つしかない。そのうち、C社の株価も上がってきて、沙優は買い値より2万円高くC社の株を売った。ちなみにD証券もネット証券なので株価が上がってもよさそうだが、全然上がらず、買った値段からほとんど変わらずに推移している。何が違うのかはよく分からない沙優だったが、儲けを出す株があるならそんな事はどうでもいいのだった。
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