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投資らいふ、時々副業夢想  作者: とうきのかえる
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1 株を始める

「そっか。普段の生活でいいと思った商品とかお店の株を買ったり、共感する理念の会社の株を買ったり、そういうやり方もあるんだ」

 沙優はネットの無料記事を見るのが好きで、中でも節約や財テクに関するものは必ず読んでいた。節約記事なら小学生の時から新聞の日曜版に連載されていたファイナンシャルプランナーのコーナーを見てきたので、たいして新しい情報はない。しかし、今は就職前の最後の休みである。引っ越しも終わり、新しい町を探検した疲れを癒すためにゴロゴロしながら暇を潰すにはこういう記事を読むのがちょうどよかった。沙優は仕事を始めたらお金をばっちり貯めたいという希望に燃えているのだ。

 そんな中、株についての記事が目に留まったのだった。特に魅力的だったのは、急成長する分野を見つけたら株価が十倍以上になることもあるという情報で、そんな株をテンバガーと言うらしかった。沙優は最近、ITを使って認知症の高齢者の行動をデータ分析して、少人数で介護するという新しいビジネスモデルを提唱しているA社の社長インタビューを読んだばかりで、その発想に感銘を受けていた。沙優は新しい発想で社会問題を解決するという話が好きなのだ。株の記事に登場する投資家によると、新しくて比較的時価総額が小さく、継続的に売り上げと利益が20%ずつ伸びている企業は株価倍増の可能性があるらしい。少し調べてみるとA社は前年の12月に上場したばかりで新しく、他の条件も当てはまった。ここの株を買えば、社会に貢献する会社を応援しつつ、儲けることもできるだろう。

 沙優の行動は早かった。バイトで貯めたお金から引っ越し費用と給料が入るまでの当座の資金を除けば30万ある。証券口座はどこがいいだろう。これもネットを参考に決めて、次は口座開設である。手続きは全てネットでできるとはいえ、必要書類が送られてくるにはそれなりに時間がかかる。その間に株価が上がらないか気が気ではなかったが、仕事が始まってそれどころではなくなり、忘れかけた頃にようやく全てがそろった。

 さあ、買おうとなって沙優は気がついた。株は100株単位で売買されるのだ。3900円台のA社は予算オーバーになってしまう。すっかりこの株を買う気になっていたのに、がっかりである。

「欲しいのになー」

と未練がましくA社の株価を眺めてみるが、それで株が安くなるわけでもない。仕方ないので、せっかく口座を開設したしな、と売り上げや利益が伸びている企業を他に探しはじめた。近年成長している企業というと、IT企業だろうと当たりをつけて証券会社のサイト内で検索してみるが、なかなか見つからない。売り上げも利益も20%ずつ増加しているという条件はかなり厳しいことが分かった。

 ようやく条件にある程度当てはまる会社を見つけた。B社である。利益の増加率は10%ちょっとの年もあるが、散々探した気になっている彼女は妥協することにした。株価も2600円程度なので、予算内におさまる。早速、買い注文の画面を開けた。

「成行注文ってなんなんだろう」

指値と成行の選択肢がある。指値は、買い値を指定するのだと何となく分かる。成行を調べてみると、その時市場で成立する価格で取引をする方法なのだと分かった。成行はいくらになるか分からず、怖い気がしたので選ぶのは指値である。今は2613円だから、2600円くらいだろうか。よく知らないのだから、やってみるしかない。キリがいい数字まで下がらない可能性を考えて2602円で注文を出すことにした。もう取引は終わっている時間なので、明日に期待である。

 しかし翌日、仕事が終わってチェックすると、株価は少し上がっていて沙優の指値では買えていなかった。買い値をあげようか少し悩んだが、そのままで買い注文を継続する。やきもきしたが3日後には買うことができた。それから沙優は仕事が終わって家についたら、すぐに株価をチェックするようになった。株価は小幅に上がったり下がったりしたが、彼女はそのくらいでは動揺しなかった。目指すのは10倍、テンバガーなのである。

 しかし、2週間も経つと、大きな変化がないので沙優の株価チェックは1日空き、2日空きするようになっていった。沙優は飽きっぽいのだった。

小説に登場する会社、人はフィクションです。

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