剣術大会
私は夢の中で現代というか近未来的な世界にいた。
剣術大会が催されていた。
私は使い手ではあったが、全くの我流で実戦系なので、本来はそこに参加できるはずもなく、また参加する気どころか興味すらなかったが、なぜか参加することになってしまった。
しかも、私は特別枠だったので、勝ち残った上位者とと対戦するだけだった。
私はやる気が全くなく、試合も全然みてなくて、ずっと居眠りをしていた。
だから、自分の出番になったときに、係の人に起こされる始末だった 。
私は対戦相手と向き合っていた。
相手は冷たい視線で私を見つめていた。
瞳の奥に侮蔑が宿っていた。
相手がイヤがるはよくわかる。
私はよれよれのTシャツに擦り切れたジャージをはき裸足だった。
そんな出で立ちで大あくびをしながら登場したのだから。
対戦相手は、そりゃぁもうぴしーっとキメていた。
なんていうか、正統派な優等生的な雰囲気を漂わせてた。
ああ、私の事が大っ嫌いだろうなぁ。
私の相手するのもイヤだろうなぁ。
しかし、上が決めたとことだから仕方ないんだよなぁー。
そんなことを考えてたら開始の合図。
相手はまさに教科書通りの構えっぽい。
っぽいっていうのは、私は教わったことないから。
私は型とか全然知らない。
それでも、周りの雰囲気や相手の出してるオーラで、なんとなく正統派の基本の構えっぽいってのがわかった 。
相手は私の様子をうかがってる。
私は木刀をおろしたまま。
正直、構える気すらなかった。
だって、全然こわくないんだもん。
普通の人からしたら怖いんだろうけど、私からみたら、なんていうか、幼児がぷーってして構えてるっていうような気分。
だから構える気にもならなかった。
しばらく相手は間合いを取っているようだった。
私は無防備。
相手にとっては緊迫した時間が流れる。
私はだんだん飽きてきたので、またひとつあくびをした。
その瞬間、相手が動いた。
私は思いっきり相手に木刀を投げつけた。
相手がひるんだすきに足払いをかけた。
相手は地面に転がった。
私は相手の脇腹を蹴る……手前で寸止めした。
試合は私の勝ちとなった。
私は席に戻ろうとした。
ところが、相手が抗議してきた
どうやら私は禁じ手をつかったらしい。
相手はルール違反だ、というような抗議をしている。
私にはどれが禁じ手か全くわからなかった。
相手の仲間たちも抗議の声を上げた。
私は、だから嫌だったんだ、と思った。
こういうことが予想されるから、正式な試合は嫌いなんだよ。
ふぅ。
なんだか居心地が悪い。
私はルール違反で負けになるのだろうか?
ルールなんて知らないのに?
知らなくてもいいっていわれたのに?
なんか納得いかないけれど、もともと勝っても負けても私には関係ない。
そうは思っても、やっぱり、ちょっとムッとした。
だから一言だけ反論することにした。
「どーでもいいけど、気に入らねーのなら、実戦でやろうぜ」
私はニヤリと不敵に笑ったつもり。
相手はぐっと詰まった。
「実戦で使えない剣術など意味はない。お前の負けだ」壇上から偉そうなじーさまが降りてきた。
そういえば、私に試合に出るように言ったのはこのじーさまだった。
「弟子の躾が悪すぎ」
私はじーさまに、べーっと舌を出すと会場を出た。
私は会場のすぐ後ろにある大きな高層ビルに入った。
そして一番奥にあるエレベーターに乗った。
エレベーターは最上階まで直通だった。
最上階に着く。
扉が開くと、そこは薄暗い部屋だった。
ワンフロア360度ガラス張りで、そこからは周辺が、いや世界全体が見渡せるような部屋だった。
今は夜景が見渡せた。
部屋の中央にソファーがあり、そこに誰かいた。
この世界を動かしている人物。
神のような存在の人だ。
彼はこのフロアから外に出ることができない。
「ったく、つまんねー試合になんか出させるなよ」
私は彼に文句をつけた。
じーさまが私に試合に出るように言ったのは、彼の意向だということが明らかだった。
「そんなに怒るな。久しぶりにお前の勇姿をみることができた」
彼はそう言うと目を細めた。
「勇姿? あれが勇姿かよ……」
私は毒づく。
「ふふっ」
彼は楽しそうに笑った。
「ったく、お偉い人の考えることはわかんねー」
「たまには息抜きぐらいさせてくれ」
彼は少し目を伏せた。
「そうだな。こんなとこに缶詰じゃなぁ」
私は部屋の中を見回す。
彼はずっとずっと、何十年、いや、何百年もここから出ることができない。
「お前はよく飽きないよなぁ」
私は彼の環境に哀れみを感じてそう言った。
「飽きないな。お前がいれば」
ここで目が覚めた。