表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

8

 こんな筈では無かった。


 涙を見せ、解放されたのは元主人が特別だったと、漸く理解した。


 手にした自由と引き換えに、保証を失って居た事に今ごろ気が付いた。



 こんな事なら盗みを働いて奴隷に戻れば良かった。

 いや、売られた先は同じ道かもしれない。


 嘘泣きの様な悲しい顔しか出来ない。

 そう今は、声も涙も出て来ないのだ。


 昨夜の内に、声も涙も枯れはててしまったのだから。


 気力と体力を付けなきゃ泣く事も出来ない。


 だが酒臭いオヤジが置いていったのは、はした金。


 それでも久々にまともな食事に有り付き、銭湯で風呂に入り穢れた身体から血が滲むほど洗い続けた。


 夕方には安宿に泊まり、僅かに取り戻した気力と体力で再び泣いた。泣き腫らした。

 昨晩の事を嫌悪し、穢れた身体に爪を立てて。



 だが泣いてばかりも居られない、翌朝には仕事を探し回るが、やはり雇い入れてはもらえない。


 寂しさから、心細さから、元主人の顔を思い出すも、穢れた身体を抱き締め、想いを振り払う。


 元主人に買い上げてもらう時の条件に、女性で有る事、若く有る事、幼児で無い事、そして生娘で……と。


 既に望む条件から外れてしまった、戻る事など出来はしない。

 してはいけないのだ。どれほど泣いても。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ