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もう二日間、何も食べてない。
かろうじて水だけは共用の井戸で飲む事が出来た。
だが限界は近かった。
既に元主人の家まで歩くだけの体力が、そして何よりも気力が残されては居なかった。
こんな事なら、解放されない方が良かった。
もっと早くに元主人の元へ戻る決断をすれば良かった。
次から次へと後悔が襲いかかってきた。
だが、元主人の事を受け入れれば良かった、等とは思わない。
そこだけは後悔していなかった……そう此の時は。
もう辛い、死のう。
そもそもどうやって?
近くに高い崖も無ければ、刃物も持ってない。
首を吊る丈夫な紐もない。
あとは舌を噛みきる位しか方法が思い付かない。
でも、いざとなると怖い、少し舌を噛んでみたが痛い、軽く力を入れただけでこの痛さ、噛み切るなんて到底無理。
諦めの最後に、壊れた心と引き換えに、思い浮かんだのは酒臭いオヤジ。
あそこへ行けば何か食べられるかも。
思い付くと同時に自然と体が歩き出す。
通り一つ向こうへと、体を足を引き摺るかの様に。
通りで力無く立っていれば、案の定声をかけられ。
何を言われたのかも分からないままに頷き俯き、後を付いて行く。
日も暮れて大分時間も過ぎた。
開いてる店は居酒屋が数件残すのみ。