神官の幸福
神官長は神殿の窓から街を見つめている。別に葵たちの出発が見れる訳ではないが、要は気分である
神殿が保護しなければならない案件ではあった
葵はまだ何処にも所属していなかった
別に絶対に何処かの団体に所属しなければならないという事はないが、ここ信都は特別で街を出る時にもお金を払わなければならない
それに、できれば神殿のひも付きにしておきたかった
神殿に勧誘する
葵に身分証明書にもなるし、出入りにお金がかからないことを説明すると、制服の格好良さにもつられあっさり決定した
絶対に詐欺に引っかかるタイプですよ、と補佐官は断言した
葵は装備アイテムにあった冒険者の格好に戻り、ジョグと神官を一人護衛?としてつけてもらいラッセリア目指し出発する
しかも神殿から馬車を出した
「それで、私に後を付けろと?」
神殿にも影で働く者たちはいる。その一人に命じて葵たちの後を追わせる事にしたのだ
「絶対にばれちゃ困るよ」
「問題ありません。心配は無用です」
男らしいその声は神官長には気がかりだったが、それでも影の中では一番細身のものを選んだ
女性でも良かったのだが、いかんせん、皆筋肉質である。葵が惚れない保証は無かった
それに、葵は美しいのでこちらの人間が好きになる可能性もある
「地位が上がらない事を気にしなければ神官であっても婚姻は自由ですからね」
世襲を避ける為と言う事になっている。神に嫉妬させない為とも
「結局、理由をつけているだけで本音はリア充爆発しろ的な、ヒガミなんだけどね〜」
神官長と補佐官は苦笑いした
因みに、リア充とか言葉はないけれど、意訳するとこうなります
「結婚なんてのは、次の人生からで十分だよね」
「負け惜しみにしか聞こえないです、神官長」