やっと旅立つ男
葵はすぐには出発しなかった
キャラクターシートに書かれていないランダム能力の確認をするからだ
飛行スキルは黒い翼だった。カラスではなく九官鳥となっている
何故か鳥の翼でも空中で停止できるので、何らかの魔法で飛んでいるのだろう
「これ、黒い服着てたら夜に見つけるの無理じゃない?」
音楽家の衣装:タキシードのシャツを黒に変えると完全に真っ黒になった
長い髪を後ろで一つにまとめ背中に長し、黒い翼に服
「悪魔みたいだ!」
この世界では見たことないけどね。と、みんなで笑う
「魔族みたいなのいるみたいなんだけど、実際には未確認」
元になっている人間が基本ビビりなので、こんなに分裂して増えているのにそんなに知識は増えていない
しかし、楽器を出したのが失敗だった。そう、いつもの通り現実逃避に走ってしまったのだ
ちなみにバイオリンだった
3人で色々弾きまくってアッという間に2.3日経ってしまった
朝、冒険者ギルドの職員がやって来た
「霧のダンジョン行ってくださーい」
葵を見つからないようにしつつ了解する
「そろそろ行くねー」
目立ちにくいように、冒険者の服を着てギュレムの街の門から外に出る
街から出る時には全く注意を受けないのは不思議だなーと葵はおもいつつ街道を歩く
頭の中のマップをチェックして一時間程歩いてから脇にそれる
直ぐに木々に囲まれた感じで足場は悪くなるが、視界は開けている
すると視線を感じた
「角ウサギちゃん!」
やばいやばい、可愛い!毒々しい殺気を放っているのに可愛いなんてやばい
こんなに可愛いの絶対に殺れない。逃げるしかない
黒い翼は真っ昼間だと目立って仕方ないだろうが見てる人はいないだろうと、堂々と飛ぶことにした
高い高い所を飛んで、鳥に紛れているつもりなのであった
木も生えていない岩山のてっぺんでお昼を食べ、ちょっと休憩ちょっとお昼寝
目覚めると陽が暮れかけている
「急がないと信都にたどり着けない!」
魔法で加速しつつ飛び続ける、すっかり陽が暮れ闇に包まれる
「夜目!」
叫んでみる、発動した。昼のように何でも見えるレベルではないようだし、白黒だがわがままは言えない
あまりにも速度を上げすぎて、眼下に城門が見えた時にはすでに街の上空だった
急ブレーキなどかけるものじゃない。すさまじい重力に耐えていると下から大きな叫び声がした
「うわぁぁぁぁぁぁぁ」
びっくりして、そのまま墜落した
バシャーーン
運よく下は泉であった