桃次郎
昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯にいきました。
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきました。
ドンブラコッコ ドンブラコ
自分とおじいさんの年齢を考えてもこれがラストチャンスとは分かっていました。
(今度こそ)と期待を胸に 桃を抱えて家に持ち帰りました。
さすがに、三つ目ともなると慣れた手つきでした。
伝説のアイドルとなった一つ目の 「モモエ」
著名な漫画家となった二つ目の 「モモコ」
二人とも立派に巣立ちました。
しかし、豆も底をつき悪さばかりする鬼たちを追い払うためには、どうしても男の子の力が必要でした。
「じいさん。頼みますよ」
コクリとうなずき、じいさんは包丁を手に取り
「えい!」 さすがに三つ目ともなると慣れた手つきでした。
「おんぎゃー おんぎゃー」桃の中には 待望の男の子がいました
おじいさんとおばあさんは大喜び「桃次郎」と名付け大切に育てました。
すくすくと育った桃次郎。
ついにその日がやってきました。
「おじいさん、おばあさん、僕が鬼ヶ島へ鬼退治にいってきます。
心配しないでください。必ず無事に帰ってきます」
「モモジロウ…」おじいさんもおばあさんもそれ以上言葉が出ないほどの喜びに包まれました。
次の日の朝、おじいさんは、早くに起きて キビダンゴを作り持たせてあげ
おばあさんは、夜遅くまでかけて作った、お守りをもたせてあげました。
「鬼ヶ島へ鬼退治!」
桃次郎は一人で旅立ちました。
しばらく歩くと、お腹がへった桃次郎。
ムシャムシャとキビダンゴを食べました。
ひとつ、またひとつ…
あまりにおいしくて全部食べてしまいした。
「ふぅ… お腹いっぱい」
その場に座り休憩していると
匂いかぎつけたのか、犬がやってきました。
「どうかしたのかい?」桃次郎は犬に尋ねると
「素敵なお守りだね、ちょっと見せてよ」と犬はいいます。
「あぁいいよ」 桃次郎はお守りを渡し見せてあげました。
犬が手に取って お守りを眺めていると 強い風が吹き お守りがなびきました。
(チリーン)
お守りから音がしました。 どうやら、中に鈴が入っていたようです。
その鈴の音を聞いた犬が
「わぁ! 素敵! 音もする」というと…
「お供する? しょうがないなぁー」とニヤリと微笑んだ桃次郎
「鬼ヶ島へ鬼退治!」
犬が仲間になりました。
仲良く歩いて行く、犬と桃次郎。
しばらく歩くと、猿がいました。
「ここから先へは行かせない」と猿が言います。
困ってしまった桃次郎達でしたが、お守りを猿に見せ
「このお守りにはとても不思議な力があるんだ」と言いました。
「ん?なに? それは本当か?」興味津々の猿でした。
「あぁそうさ!ちょっと持ってみな」お守りを猿に渡しました。
「どこに不思議な力があるんだ?」猿はキョトンとしています。
「振ればわかるよ」と桃次郎は返しました。
(チリーン)
「おぉ! すごい!音もする!」猿はとびはねて喜びました。
「お供する… しょうがないなぁー」と微笑んだ桃次郎。
「鬼ヶ島へ鬼退治!」
猿も仲間になりました。
仲良く歩いて行く猿と犬と桃次郎。
しばらく歩くと、キジがいました。
「オレの羽、カッコイイだろ?」と得意げにキジは言いました。
「あぁ、カッコイイね。でもこのお守りの方がもっとカッコイイよ」と桃次郎。
「なんだって?」 ジロリと睨みつけキジは言いました。
「ちょっと持ってみな」キジにお守りを渡しました。
「どこがカッコイイんだ?」
「振ってみればわかるよ」もうすでに桃次郎は少し笑っていました。
キジはお守りえを振りました。
すると…
(チリーン)
「おぉ!すごい!音もする!」
「お供する…しょうがないなぁー」とニヤリと笑った桃次郎。
「鬼ヶ島へ鬼退治!」
キジも仲間になりました。
仲良く歩いていくキジと猿と犬と桃次郎。
野を越え、谷越え、山越えて、川を下って海にでて目指すは一つ!鬼ヶ島!
そして、桃次郎達は鬼ヶ島に到着しました。
「やいやい!出てこい憎き鬼! 僕の名前は桃次郎!日本一の桃次郎!」
それを聞いた鬼は、桃次郎達の前に現れました。
「日本一だと?」笑はせるなと言わんばかりに鬼は言いました。
「あぁ!そうさ!このお守りに誓って!」天に向けお守りを掲げた桃次郎。
「そんなお守りに誓われてもな…」あきれた表情な鬼。
「このお守りこそが日本一の証」と胸をはり桃次郎は続けました。
「なんだと?ちょっと見せてくれ」
鬼にお守りを渡す桃次郎
「へぇ これがねぇ 日本一の証かぁ」 鬼はいいました。
「見ているだけじゃわからないよ 振ってみてよ」
桃次郎に言われた通りに鬼はお守りを振りました。
(チリーン)
「おぉ!すごい!音もする!」
「お供する… しょうがないなぁー」と微笑んだ桃次郎。
「お供するって?」鬼は聞いてきました。
「簡単に言うと、今から僕達と君は友達・仲間ってことさ!」と桃次郎が言うと
「友達…仲間…」というと鬼の目から一粒の涙が落ちました。
「こんなオレでも…仲間にしてくれるのか?」鬼は言いました。
「あぁ!もちろん! 喜んで!なぁみんな」
キジも猿も犬も大きくうなづきました。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん 今までごめんなさい。さみしかったんだよーうわぁぁぁぁぁぁぁん」
鬼は泣き崩れました。
「日本一の桃次郎!」みんなで声を揃えて言いました。
おじいさんとおばあさんの待つ村へ帰ると、最初は驚かれましたが、次第に慣れていき。
みんな仲良くなり、幸せにくらしたとさ…
おしまい。