呪われ魔術師、勝負を決める。
様子をうかがう。
ボストロールは、動かない。
シリィも、動かない。
「眠っている・・・・?」
ボストロールは、眠っていた。
シリィも、眠っていた。
このまま、シリィを抱えて逃げるか、とも考えたが、僕の力で、シリィを抱えて移動できるとは、到底思えない。起こすのも、すぐには無理そうだ。
ほどなく、ボストロールは目を覚ますだろう。
そうなれば、シリィと二人、無事に逃げ切れる気がしない。
なんとか、眠っているうちにボストロールを倒せないかなぁ。
おそらく一度攻撃すれば、ボストロールは目を覚ます。やるなら、一撃で、仕留めるしかない。
僕は、ボストロールが目を覚まさない程度に、【呪いの紡錘】の先で、そっと突いてみた。
軽い手ごたえが返ってくる。
そこから、少しずつ場所を変えながら、あちこちをツンツン【呪いの紡錘】の先でボストロールを突いてみた。
どこからも、軽い手ごたえが返ってくる。
最初の【角ウサギ】との戦闘を思い起こしてみる。
【角ウサギ】を一撃で倒したあの突きには、手ごたえがほとんどなかった。
ひょっとすると、魔物の急所は、突くときに手ごたえがないんじゃないだろうか?
ならば、手ごたえのない場所を見つけて、そこを突けば、一撃でボストロールを倒すことができるかもしれない。
まぁ、危険な賭けだけどね。
ボストロールのあちこちをツンツンしていて、ついに、手ごたえのない箇所を見つけた。
「南無三!!」
迷っている時間もないように思えたので、僕は、覚悟を決め、その個所に全力で、【呪いの紡錘】を突き刺した。
”ぷしゅっ”
あの時と同じ空気が抜けるような音がして、ボストロールの姿は光と化した。
「か、勝った・・・・。」
僕は、安堵から、腰が抜けて、その場にへなへなとへたりこんでしまった。
次回、最終回です。
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