22:下僕契約とレプティリアン(後編)
カイルとフェイトの唇がキラリと光るとすぐ、カイルが指をパチンと鳴らす。
すると、2人は契約した直後の状態に戻っていた。アントニーは相変わらず呆然としていたが、徐ろに立ち上がると、フェイトがカイルを横抱きで抱えていきなり飛び出してしまった。
「……な、何?」
アントニーは呆然とその二人を見つめ、ハッとすると男性陣全員追いかける。
「ど、どこなの!?」
フェイトが辺りを見渡していると、カイル目をつぶり、彼等の場所を探る。
「……ギルドの裏だ!」
フェイトは急いで向かうと、カイルの言う通りに2人がいた。男はフェイト達をにらむと、逃げようとするレナの手首を掴んで短剣を取り出した。
「この程度の雑魚ならこの状態の俺でも食い止められる。その間に、お前は未然に防げ」
「未然にって……」
「お前だから、別に良いだろ」
カイルがそう言うと、腹に傷を負った状態で戦い始め、フェイトはその隙にレナの腕を引いてギルドの中へと連れて行った。
「な、何を」
「契約します!! 強制でも構わない!!!」
ギルド店員が呆気に取られながらも、扉を開けた。扉が締まると、フェイトは困惑するレナに申し訳なくも、コートを半脱ぎにして、背中を見せた。
「お願いします。あなたを、おとしいれるつもりは無いから!! ……会いたい男の人がいるのでしょう? 他の男の人のモノになんか、なっちゃ駄目です」
レナはうろたえていたが、外からあの男の声が聞こえて来た。
「まさかカイルさん……! 急いで!!」
フェイトの泣きそうな顔を見て、レナはためらいながらも背中に口づけをした。
扉が開かれると、フェイトは頭を下げ、「それじゃあ」とだけ言って、扉から出ると、カイルは腹を更に一突きされていたが、アントニーが仕方なさそうに横抱きで持ち上げていた。
「何が何だかよく分からないけれど、その男は俺がこらしめておいたよ」
アントニーがあごで、目を回す村人の男をさす。フェイトは村人の男に近寄り、顔を見る。見た目はそう悪くないと言うのに。なぜあそこまで彼女に固執したのだろうか。
村人の男がうっすらと目を開けると、「ひぃぃ」とアントニーを見て怯えた。
「ねぇ、確かに彼女は美人で優しそうな人だったわ。けれどね、それだからって、自分の物にして良い理由なんて無い。ましてや、性のはけ口や殺人の道具になんて。自分がされたらどうなのか。ちゃんと考えなさい」
アントニーはよく分からなそうにその言葉を聞いていた。
「……もっと自信持って下さい。いい顔してるんだから」
が、このフェイトの言葉を聞いて、アントニーが面白く無さそうに村人の男の腕を軽く蹴った後、大股でしゃがみこむ。
「もっと自信持ってくださぁい。いい顔してるんだからぁ」
アントニーはメンチを切りながらそう言って男をおどしていた。
いつもだったら止めるフェイトも、男が震えながらうなずいたのを見て、何も言わなかった。
その後は、セドナとセドナの父親が再会し、フェイト達は難なく宿屋に泊まった。
大きく変わった、世界。
多くのものが死なずに済んだことと、本来姿を現す必要の無いカイルが大怪我のせいでフェイトの部屋のベッドで眠っていることと、ついでにリグレットとの契約が帳消しになったこと。
ベッドの中で苦しそうな表情で眠るカイルの頭を撫で、フェイトは言った。
「……運命を変えてくれて有難う、カイルさん」
(22:下僕契約とレプティリアン(後編)了)




